46番目の密室 | 本棚部屋の読書きろく

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私的読書感想きろく。
再読&積読本を読み終わったら感想を書きます。


46番目の密室 (講談社文庫)/有栖川 有栖
¥620
Amazon.co.jp
2月29日~3月1日読了。
BGMはバッハの「ゴールドベルク協奏曲」で。
分かる人は分かりますね。
グールドのピアノ版も持ってたはずなのですが、見つからなかったのでチェンバロで。整頓しなければいけないのは、本棚だけではないようです……。そのうち発掘します……。

推理小説とか好きな人はすっごく好きだけど、読まない人には「ふ~ん?」という感じのニッチジャンル……と思っていたので、日曜夜10時半から連続ドラマになったり、番宣で有栖川先生のお名前を何度も拝見することになるとはまったく思っていませんでした……。
こんなこと、たぶんもうないよね。ドラマ化ありがとうございますありがとうございます!

せっかくなので、再読はここからにしようと思います。
書影は講談社文庫の旧版。とりあえず旧版も画像が表示できるようなので、読んだ方でいきたいと思います。新装版も出てるみたいですね。新装丁もデザインがいいし、手持ちの本は年月にさらされて少し変色気味なので、ちょっと欲しかったのですが、置き場所のスペース的に断念。
置き場所の節約と背表紙がちゃんと揃うのが好きなので、基本的に文庫本派です。重い本を持って読むのも苦手だし、外出時に持っていく時にも文庫本のほうがかばんに入れやすいし、余程でないと単行本は買いません。

ドラマ化した作品だけ選択して読もうかと一瞬だけ悩んだのですが、やっぱり読み直すなら第一作からかな、と。一作目だけあって、火村先生とアリスの人物像をなぞるような細かい描写や設定の説明が多いですね。二人の軽妙なやりとりも楽しいし、散りばめられたモチーフのなかにひっそり配置されているヒント。そして解決編の繊細に組み立てられたロジック。
それに犯人がアリスの友人たちの中にいる可能性が高いことへの配慮として「今回は警察より先に犯人がわかったら自首をすすめる」とか。普段の火村先生なら、衝動的ではない、明らかな計画的殺人犯に配慮するとは思えないのに。初めて殺人事件に遭遇して消耗しているアリスへの気づかいなんだろうな、と思うと友達想いだよね……。単に「犯罪者を狩る」のではなく、場合によっては大人として、社会人としての気づかいも見せてくれるところが素敵だ。ドラマ版でも社会的地位のある大人として行動する火村先生を描いてほしかった(涙)。
ネガティヴなドラマ版への感想も書いていますが、ドラマそのものは楽しんでみています。ツッコミしたい衝動に耐えられないだけで。

火村先生の初登場は「犯罪学」の講義中。
クリスマスイヴの1講目に200人定員の教室に半分入ってるとか、盛況です。私が大学生の時に受けていた「犯罪心理学」の講座で、100人強の定員の教室で7、8割の入り。年末には6,7割の入りに減っていたので、やっぱり多いほうだと思います。犯罪学関連の講座は私が大学生の当時も人気がありました。英都大学のキャパシティがどれくらいなのか情報がないので一概に比べられませんが。

それにしても講義の途中から入室するとか、アリス先生お行儀良くないよ!講義途中からの入室を禁止する先生は結構いらっしゃったように思うのですが。遅刻イコール欠席扱いでした……。厳しい……。

ロンブローゾの生来性犯罪人説とかジューク一族の調査とか、縦断研究(サンプルを複数年に渡って追跡調査するなど)と横断研究(同年に複数サンプルを採取して比較分析研究するなど)の一例として、私も習いました。もちろん結果ありきのサンプル収集の悪しき一例としても。ただ、この内容だと12月にするのは遅くないですかね?講義後の雑談だから辛うじてセーフ?かな?
アリスは講義を聴いていたのに捜査中に鵜飼警視の諸田一家の説明で現代のジューク一族はやっぱりいるじゃん!とか考えてましたが、それもたった一例のサンプルでしかないからね!

そして火村先生もお行儀は良くない。座ったまま頬杖ついてダルそうに講義してるとか。きっと板書もしてくれないよね……。ノート取るのも大変そうです。今ならICレコーダー持ち込んで書き起こすとか対策できそうだけど、単位採るのが大変そう。ドラマ版では講義中に寝てる学生とか聞いてない学生とか多そうだったけど、あの学生たちは原作版火村先生には単位もらえそうにないですね。

アリスはダルそうなのは眠いせい、と断言していたけど、朝が弱い設定とかもあったんですね……。北軽井沢に向かう列車の中でアレコレあげつらわれてる設定だけでなく、人見知りっぽい描写も所々にあるし、歯切れのいい東京アクセントでしゃべる、とかも、先生のかたくなさや周りに流されない部分を表現してるように思います。札幌生まれのあちこち育ち、というけど、札幌は独特の言い回しの方言こそ多くないけど、東京アクセントと同じではありません。それに京都の大学に進学してから14年経っているわけで、普通はまわりの人たちがしゃべる方言とか、うつっちゃったりしますよ、ね?
先生はいつ、だれから東京アクセントな話し方がうつったのでしょう。謎。

再読してみると、14,5年前?には気にならなかった、時事ネタも多いですね。(おそらく在来線)特急あさまの車内で、北陸新幹線が完成したらこの車窓も見られなくなる、とか。完成しちゃいましたね。在来線特急あさまもなくなってしまいました。星火荘のパーティの会話でのワープロの誤変換ネタとか。まだパソコンは家庭に普及していないのですよね、この当時……。モニターも白黒だったように思いますし、インターネット機能もなかったし、Windowsもまだ3.0とかじゃないでしょうか。皇太子殿下と同い年、もここで言及されてたのですね。今じゃすっかりサザエさん時空ですが。同い年だとしたらいまごじゅ……なんでもありません!
ずっとクールでかっこよくてたまに変な火村先生と意外と辛口ですぐ拗ねたり仕草が可愛いまんまのアリス先生でいてください(切実)。

再読してみて今回初めて思ったことは、「なぜタイトルが『46番目の密室』なのか?」ということでした。
二つの密室で二つの殺人が起こるけど、真壁聖一先生が書いていた46番目の密室推理小説とは全然関係ないのに、と考えてしまいました。確かに作品中では46番目の密室のトリックを使って犯行を行ったのでは?とかトリックが盗まれたのでは?とか、モチーフとして散りばめられてはいたけど、本質的に関係ない。タイトルなら真壁先生の著作の一つ『星火荘の密室』とかでもよかったんじゃないの?モチーフに火だっていっぱい散りばめられているし、作中作のタイトルと同じではダメってこともないだろうし。

そこで思いついたのが、「『46番目の密室』とイコールで示されているものは何か?」という意味だったなら、という仮定。
作品内でも『天上の推理小説』(あとがきでは『未在』)と『地上の推理小説』(現状の職人的な推理小説のこと)について抽象的に論じられていましたが、『密室』ほど推理小説ファンを引き付けておきながら、裏切り続けてる題材も確かになかなかないですよね。有栖川先生もあとがき内で、密室ものへの愛憎について書いていらっしゃいますし、文庫版付記でも「密室はふしだらに開きっぱなし」とか「密室の息の根を止めてみせて欲しい…」と密室への愛憎が変わっていないことを再度書いていらっしゃいます。
作中では、『46番目の密室』小説は創作メモの段階で、すでに『天上』に向けて離陸していた、とありますし、『46番目』イコール『天上の推理小説』と考えると、事件の被害者は殺された二人だけでなく、もう書かれ読まれることのない『天上の推理小説』『いまだに存在しない完璧な密室もの』ということだったのでは、と考えてしまいました。
つまり「『46番目の密室』イコール『いまだに存在しない完璧な密室もの』」を『地上の推理小説』上で抹殺する、ということの暗喩になっている、というのはどうだろう。
有栖川先生ならこういうダブルミーニング的なの、きっとお好きですよね?