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った。が、僕の答案はあいにく先生には気に入らなかった。
「雲などはどこが美しい? 象もただ大きいばかりじゃないか?」
 先生はこうたしなめたのち、僕の答案へ×印をつけた。

     三二 加藤清正

 加藤清正かとうきよまさは相生町あいおいちょう二丁目の横町に住んでいた。と言ってももちろん鎧武者よろいむしゃではない。ごく小さい外国人 恋人桶屋おけやだった。しかし主人は標札によれば、加藤清正に違いなかった。のみならずまだ新しい紺暖簾こんのれんの紋も蛇じゃの目めだった。僕らは時々この店へ主人の清正を覗のぞきに行った。清正は短い顋髯あごひげを生はやし、金槌かなづちや鉋かんなを使っていた。けれども何か僕らには偉そうに思われてしかたがなかった。

     三三 七不思議

 そのころはどの家もランプだった。したがってどの町も薄暗かった。こういう町は明治とは言い条、まだ「本所ほんじょの七不思議」とは全然縁のないわけではなかった。現に僕は夜学の帰りに元町通りを歩きながら、お竹倉の藪やぶの向こうの莫迦囃ばかばやしを聞いたのを覚えている。それは石原か横網かにお祭りのあった囃しだったかもしれない。しかし僕は二百年来の狸たぬきの莫迦囃しではないかと思い、一刻も早く家へ帰るようにせっせと足を早めたものだった。

     三四 動員令