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     一二 灸

 僕は何かいたずらをすると、必ず伯母おばにつかまっては足の小指に灸きゅうをすえられた。僕に最も怖おそろしかったのは灸の熱さそれ自身よりも灸をすえられるということである。僕は手足をばたばたさせながら「かちかち山だよう。ぼうぼう山だよう」と怒鳴ったりした。これはもちろん火がつくところから自然と連想れんそうを生じたのであろう。

     一三 剥製の雉

 僕の家うちへ来る人々の中に「お市さん」という人があった。これは代地だいちかどこかにいた柳派の「五ごりん」のお上かみさんだった。僕はこの「お市さん」にいろいろの画本えほんや玩具おもちゃなどを貰もらった。その中でも僕を喜ばせたのは大きい剥製はくせいの雉きじである。
 僕は小学校を卒業する時、その尾羽根の切れかかった雉を寄附していったように覚えている。が、それは確かではない。ただいまだにおかしいのは雉の剥製を貰った時、父が僕に言った言葉である。
「昔、うちの隣にいた××××(この名前は覚えていない)という人はちょうど元日のしらしら明けの空を白い鳳凰ほうおうがたった一羽、中洲なかずの方へ飛んで行くのを見たことがあると言っていたよ。もっともでたらめを言う人だったがね」

     一四 幽霊

 僕は小学校へはいっていたころ、どこの長唄ながうたの女師匠は亭主の怨霊おんりょうにとりつかれているとか、ここの仕事師のお婆ばあさんは嫁の幽霊に責められているとか、いろいろの怪談を聞かせら