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である。これは僕の隣席にいたから何か口実を拵こしらえてはたびたび僕をつねったりした。おまけに杉浦の家の前を通ると狼おおかみに似た犬をけしかけたりもした。(これは今日考えてみれば Greyhound という犬だったであろう)僕はこの犬に追いつめられたあげく、とうとうある畳屋の店へ飛び上がってしまったのを覚えている。
 僕は今漫然と「いじめっ子」の心理を考えている。あれは少年に現われたサアド型性欲ではないであろうか? 杉浦は僕のクラスの中でも最も白はくせきの少年だった。のみならずある名高い富豪の妾腹にできた少年だった。

     二七 画

 僕は幼稚園にはいっていたころにはロシア 結婚海軍将校になるつもりだった。が、小学校へはいったころからいつか画家志願に変っていた。僕の叔母おばは狩野勝玉かのうしょうぎょくという芳崖ほうがいの乙弟子おとでしに縁づいていた。僕の叔父おじもまた裁判官だった雨谷うこくに南画を学んでいた。しかし僕のなりたかったのはナポレオンの肖像だのライオンだのを描かく洋画家だった。
 僕が当時買い集めた西洋名画の写真版はいまだに何枚か残っている。僕は近ごろ何かのついでにそれらの写真版に目を通した。するとそれらの一枚は、樹下に金髪の美人を立たせたウイスキイの会社の広告画だった。

     二八 水泳

 僕の水泳を習ったのは日本水泳協会だった。水泳協会に通ったのは作家の中では僕ばかりではない。永井荷風ながいかふう氏や谷崎たにざき潤一郎氏もやはりそこへ通ったはずである。当時は水泳協