血液の成分比率を見ると、赤血球の占める割合は約44%もあり、水分を除く外の構成成分と比べて圧倒的に多く存在しています。それだけ細胞のエネルギー産生に欠かせない酸素の運搬を、赤血球はどのように行っているのでしょうか。
酸素と直接結合して運搬するのは、赤血球のなかの「ヘモグロビン」です。ヘモグロビンとは、ヘム鉄という鉄分とグロビンというタンパク質の化合物で、酸素は鉄に結合します。1個の赤血球の中には、なんと、ヘモグロビンが約2億5000万個も含まれているのですが、ヘモグロビン1個につき、4つの酸素分子と結合できるので、赤血球1個で約10億もの酸素分子を運ぶことができます。
そして、ヘモグロビンには特殊な性質があります。
それは、酸素の沢山ある環境(肺静脈の開始部分付近など)では、酸素と簡単に結合して、酸素が少なくなる(毛細血管付近など)と容易に酸素を分離するというものです。この性質により、肺でたくさん結合した酸素を末梢の毛細血管で分離し、細胞に届けることができます。
特殊な性質をもつヘモグロビンを含んでいる赤血球自体にも、不思議な性質があります。
それは、細胞であるのに、「核」を持たないことです。さらに赤血球は、幹細胞から成熟する際にミトコンドリア(細胞の中で酸素を消費してエネルギーを発生する小器官)を捨て去ります。
赤血球内の水分を除くと、実に90&以上をヘモグロビンが占めています。ミトコンドリアを持たない赤血球は、酸素の消費を最低限に抑えることに成功しました。
まさに、「赤血球は、酸素を使う細胞ではなく、運ぶことに特化した細胞である」ということがいえます。