毎日のように、彼女に釈明を試みました。(悪いことはしてませんが)
Aさんとは、成り行きでデートみたいになったけど、
それぞれが欲しいスポーツ用品を買いに行っただけだと。
しかし、なかなか認めてはもらえず、
彼女のつんつんは収まりませんでした。
「好きです!付き合おう!」
…と言ってしまえば、速攻解決だったのかもしれません。
でも、若造のワシにはその勇気もなかったのでした。
しかもです。。。
鈍感なワシは、この時になってやっと気づいたのです。
彼女が、数週間前に話していた、紅葉の名所への旅行計画は、
ワシへのお誘いだったのだと。
その名所の魅力や、アクセス方法などを熱く語っていた彼女は、
ワシが『行ってみたい!』と言うのを待っていたのだと。
にもかかわらず、
真面目な彼女が男を旅行に誘うなど想像だにしなかったワシは、
肯定と共感の反応を繰り返すばかりで、
待ちこがれられていたその言葉を、
ついに発することはなかったのだと。
数日後のある雨の夜、
共通の通勤電車の中で、
ワシらは懲りもせず気まずい押し問答を繰り返していました。
降りる駅が近づいた彼女は、ドアの前に移動して外を見ていました。
置き去りにされたワシは、ベンチシートに腰掛けたまま、
彼女の横顔を切ない思いのままじっと見ていました。
電車が止まり、
ドアが開き、
彼女の姿がスローモーションのようにドアの向こうに消えていく瞬間、
ワシの中で何かが破裂しました。
胸の鼓動が高鳴り、
体が熱くなるのを感じました。
数秒後、飛び上がるように立ち上がったワシは、
締まりかけたドアをかわして、ホームに飛び出したのです。
追いついた時、彼女は駅の出口で傘を広げようとしていました。
自分の傘が開くより早く、開かれた別の傘が頭上に差し出され、
彼女はとても驚き、ぶるっとびくついてから、
大きく見開いた目をこちらに向けました。
「まだ、離れるわけにはいかない」
背後に忍び寄った男がワシだと分かった彼女は、
驚きの表情を、困惑のそれに変えながら、やっとの思いで答えました。
「何やってんの?」
「俺が好きなのは君なのに、Aさんとデートなんてするわけないじゃん!
ゆるされるなら、俺は君とデートしたいさ。
場所なんて関係ない。季節も移動手段も関係ない。
君と一緒にいたいんだ。」
両手を開きかけた傘に添えたまま、
彼女はじっとワシの顔を見ていました。
そして、その目はみるみるうちに潤み始めたのです。
「好きです。付き合ってください!」
傘から離した右手を口に押し当てて、
鳴き声があがるのを堪えていた彼女を、
ワシは傘を持っていない方の手でそっと引き寄せます。
その後彼女は、相当長い時間、
ワシの胸に頭を押し当てながら泣いていました。
そこからのことはよく覚えていませんが、
次の電車が来るまで、ホームに戻って
一番端の誰もいないベンチで話をしていたと思います。
ワシを紅葉狩りに誘っていたことは、
かたくなに認めようとしなかった彼女でしたが、
微笑みながら視線を逸らす姿が、
全てを物語っていました。
こうして、4月に出会ったばかりのワシらは、
同じ年の晩秋には交際をはじめ、
冬には婚約することになるのですが、
その話はまた別の機会に。
あぁ、今週は“できない週”なのですが、
奥様とスキンシップがしたくてたまらなくなりました。
今から行って、マッサージしながら、
あの頃の話をしてみよっと。
もしかしたら、あちらの気分も高まって…なんてこともあるかも!
いやいや、高望みはいけません。
とりあえず、今夜はここまで。
では٩( ᐛ )و