*新編日本古典文学全集

『源氏物語』を読み語りしています*

*過去の記事はテーマから遡れます。

*前のお話はこちら。

 

 

女を抱き上げた源氏は

部屋を移る時、

女の侍女に鉢合わせします

しかし源氏は

慌てるでもなくゆったりと

「朝になったら迎えにおいで」

といって障子を閉めてしまう

 

 

女はこの侍女が

自分をどう思っているかと考えたら、

汗もしとどに濡れて震えているけれど

源氏はそんな女を

気の毒にもかわいくも思って

どこから出てくるものか

ついつい感心してしまうような

やさしい、甘い言葉を

おかけになるけれど

女もあまりの仕打ちと思って

 

 

「現実とも思われません

たいした身分でもないわたくしを

お見下げあそばすお心のほどが

どうして愛情深いものと思えましょう

わたくしのような身分のものは

しょせんたまさかのなぐさみに

もてあそんでかまわないもの、

というお考えなのでございましょう」

 

 

といっては

源氏のなさることを

心底情けない仕打ちであると

思いつめている様子が

見ているこちらが

気恥ずかしくなるような態度なので

 

 

「身分がどうのなんて

そんなこともまだ考えられないほど

まだはじめての経験なのですよ

なのに

なまじの女たらしと同じように

わたしを決めつけてしまうのは

ひどいと思いますよ

 

 

わたしのことは自然ご存知にもなりましょう

浮ついた浮気心を抱いたことなんか

今まで一度もないのに

これも前世からの因縁なのでしょうか

あなたにこんなふうに

冷たくあしらわれてしまうのも

ほんとうにもっともなこと

こんなに取り乱してしまうなんて

自分でもなぜだかわからないのです」

 

 

なんてことを

真面目に女に言い聞かせているが

女の方では

源氏の君があまりにも

類まれなお美しさでいらっしゃるので

気が引けてしまい

すべてを許してしまうのは

惨めに思われて

たとえ強情で可愛げなのない女と

思われたとしても

一度きりの逢瀬で

やり逃げされるくらいなら

このまま情けの通じない

強情者の設定で押し通そう、

と覚悟して

どこまでも連れない態度で構えている

 

 

本来女は柔和でやさしいタイプなのに

無理して強情に振る舞っているから

しなやかにたわむ

なよ竹のように外圧に強く

たやすく折れそうもない

 

 

さて

この時源氏と空蝉は

えっちを終えているのでしょうか?

 

それともこれから、という時に

ガンとして

拒んでいるのでしょうか?

 

 

物語には

具体的な描写はゼロ

 

 

手がかりになるのは

動詞の表現だけです。

 

 

つづきます

 

 

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