3.安心でおいしい旬産旬消型農業


目指す将来像

イメージ図

【食卓が育てる低炭素農業】 スーパーやレストランで食料品を選ぶ際、健康等に関する情報に加えてCO2排出量などが表示され、国産品・輸入品を 問わず、低炭素型の農作物が人気となります。旬のものはもちろん、ハウス栽培の野菜であっても太陽熱や再生可能な生物由来の資源であるバイオマスを利用し て作られたものが選好されるため、農家も様々な工夫をこらして低炭素化に向けて努力するようになります。また、スーパーなども低炭素食料品にエコポイント をつけるなどしてこれらの努力を後押ししていくでしょう。

【生産プロセスの低炭素化】 育てた土地の恵みが詰まった旬のものを旬の時に美味しくいただく「旬産旬消」が進む一方でエネルギーを多く消費するハウス栽培は大幅に減少していきます。 ハウス栽培を実施する場合でも太陽熱やバイオマス、地域の中小水力などが積極的に利用されるようになっていきます。この結果、野菜や果物における収穫量あ たりのCO2排出量は現在の半分以下に低減する見込みです。また、農業機械の燃料としても規格外農作物や農業廃棄物起源のバイオ燃 料が利用されるようになり、農作物生産プロセスの低炭素化に貢献していくことでしょう。

【温室効果ガスを出さない田畑・牧場】 新たな農業生産手法への取り組みや技術開発、品種改良が進むことによって、田畑・牧場から排出されるN2O(亜酸化 窒素)、CH4(メタン)などの温室効果ガスの量も大幅に低減していきます。

ステップ

【実証期】 低炭素農業の認証を希望する農家を募集して、農作物が消費者に届くまでのエネルギー消費やCO2排出量を表示する農作 物ラベリングの実証試験を行います。低炭素農業の実証試験参加者と共同で更なる低炭素化に向けた手段を議論することで低炭素農業に向けた経験・知見を蓄積 すると共に、実務ベースで経験を積んだ低炭素農業アドバイザーを育成していきます。

【普及期】 農作物ラベリング制度や低炭素農業認証制度の対象区間を全国へと拡大していきます。ただし、実際に低炭素化を進めるためには高効率機器や太陽熱温水器、バ イオマスボイラなどの導入が必要な場合があるため、これらの設備に対しては自治体からの貸し出し(リース制度)や補助金制度を導入します。
また、低炭素農業による生産物が消費者に受け入れられやすいように、認証付きの農作物についてはその味や安全性なども評価し、政府広報等を通じて国内外に 積極的にアピールしていきます。
さらに農作物の主要貿易相手国とは、認証結果を相互に承認できるように制度設計を行うとともに、日本の低炭素農業の知見を広く伝えることで、低炭素社会の 実現に大きく貢献していきます。

【定着期】 消費者は低炭素農作物を選択しやすくなり、生産者は重油などのランニングコストの低減を図れるため、低炭素農業は標準的な手法となっていきます。そうなっ てきた段階で政府や自治体からの補助を徐々に減らし、自立を促していきます。


2.トップランナー機器をレンタルする暮らし


目指す将来像

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【省エネ技術・制御技術の普及】 家電製品・業務機器の省エネルギー技術競争が進んだ結果、あらゆる機器のエネルギー効率は大幅に向上し、エネルギーは無駄なく効率的に利用されるようにな ります。また、情報通信技術を活用することで、人のいないスペースや時間帯には自動的に稼動や通電が停止するようになるなど、機器が自ら稼働状況を制御す ることができるようになっていきます。

【サービスを買う暮らし】 空調機器や給湯器をリース契約とし、冷暖房やお湯の使用量に応じた課金システムにします。更に今まで消費者が支払っていた電力やガス料金をリース会社が支 払うような仕組みにすることで、リース会社は常に機器修理や部品交換、最新の高効率機器への更新などを通じて機器の高効率化を図り、エネルギー費用を削減 しようと努めていくことになるでしょう。また、使用済み機器はリース会社に集中するため、不要機器の回収が容易に行われ、資源の有効利用も一層進んでいき ます。

【世界を牽引】 日本の省エネ技術や制御技術は世界でも最高水準となるまで高められ、その先進性を国を挙げて世界中にアピールしていきます。これらの技術は、世界中に輸出 されることで日本の経済の支柱となっていくと共に、世界の低炭素社会づくりにも貢献するようになります。

ステップ

【制度改正期】 自動車、電気機器、ガス・石油機器など、エネルギーを多く消費する機器のうち省エネ法で指定するもの(「特定機器」と言います)の省エネルギー基準を、各 々の機器において、基準設定時に商品化されている製品のうち最も省エネ性能が優れている機器の性能以上に設定する「トップランナー制度」はこれまでも大き な効果をあげてきました。その経験を踏まえつつ、業務部門を中心に適用範囲を拡大していきます。また、空調や照明において、自律的制御による省エネルギー 効果も適切に評価されるよう、トップランナー基準値の評価方法の見直しを進めます。トップランナー基準値についても定期的に見直しを行いながら、新たな機 器や技術の登場に応じて適用範囲を拡大する等、利用方法に応じた適切な評価方法の検討および開発を進めていきます。

【ビジネスモデル転換期】 改正されたトップランナー制度のもと、機器単体での効率向上を進めるのと同時に、機器効率や省エネルギー、CO2削減 に向けた企業ごとの貢献度を第三者的に評価する制度を業界団体と協力しながら創設し、優秀な企業に対しては毎年表彰するなどの報奨制度を導入します。ま た、自国発の技術・評価技術等が国際標準となるように働きかけていきます。
さらに、機器ごとの最低回収率を設け、その基準を段階的に強化していくことで、売り切りのスタイルからリース業へとビジネスモデルがシフトしていくのを後 押しします。さらにリースを行う企業に対しては、それらの企業が所有するトップランナー機器や太陽光発電・太陽熱温水器などの省CO2型 機器の固定資産税を減免するなど、経済的なインセンティブを与えていきます。


1.快適さを逃さない住まいとオフィス


目指す将来像

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【太陽と風を活かした建築デザイン】 太陽光や自然風などの自然のエネルギーを建築物内に取り込む「パッシブデザイン設計」など、それぞれの地域風土に合わせた建築技術やデザインが広く普及す るようになります。また、断熱技術・日射遮蔽技術・自然通風技術などの個別の技術レベルも向上することで、住宅・建築物内の快適性を維持しながらエネル ギー消費量の削減が可能となります。この結果、住宅の世帯あたりエネルギー需要は2000年と比べて2050年にはマイナス40%程度、建築物でも床面積 あたりでマイナス40%程度にまで低減する見込みです。さらにそれぞれの建築物の屋根や壁面には、太陽熱給湯器や太陽光発電が標準的に設置され、特に低層 住宅のほとんどでは、高断熱、パッシブデザイン、太陽エネルギー利用の組み合わせによって住宅の全ての使用エネルギーを賄う「ゼロカーボン住宅」となって いくことでしょう。

【家計に優しい環境性能】 新築や改築の際に、住宅のエネルギー消費量やCO2排出量などの環境性能をチェックし、その認証結果に応じた固定資 産税やローン借入金利の減免措置を一般化することで、環境性能の高い住宅建築・購入へのインセンティブとなります。
既設住宅では安価に住宅性能コンサルタントのアドバイスを受けられるようにし、環境性能向上に向けた改築の提案について助言してもらえるようになります。 さらに、コンサルタントを介することにより改築費用の割引やローン借入金利の優遇が受けられるなど、住宅の環境性能の高さを社会全体で高く評価する制度や 仕組みが整えられます。このため、住宅を購入する際には、環境意識が高くなくても環境性能の優れた住宅を選ぶようになるでしょう。

【匠の技の育成・伝承】 地域それぞれの気候を活かした建築デザインと最先端の機器を融合させることができるような設計者・建築家が日本各地で増え、そのノウハウが次世代へと引き 継がれていきます。また、200年住宅などの長寿命型建築物も広く浸透し、無駄な資源・エネルギーの消費が抑えられるようになります。

ステップ

【基準策定期】 今の日本では、住宅・建築物の購入時や賃貸契約時には、一般に環境性能についての情報が示されないため、選ぶ際の重要な項目となっていないのが現状です。 また、現在でも住宅・建築物の環境性能評価を行うことは出来るものの、複雑な計算が必要な上に、評価を実施するスキルを持っている人材が不足しているため に十分に普及していません。
そこで、既存の建築評価手法(CASBEE等)や欧州等で実施されている評価方法を参考にしつつ、建築物の用途別に簡易性能評価手法の確立を進めると共 に、省エネ・省CO2性能診断に向けた診断士の養成を継続的に進めていきます。また、大学等に匠の建築技術を伝える講座を開設した り、各地域で施工者向けの研修会等を開催したりすることで省エネ建築技術・デザインを継承する下地を作っていきます。

【環境性能ラベリング導入期】 開発した評価手法を基に、住宅・建築物の環境性能を表示するラベリング制度を導入し、長期的な省エネ基準の目標値を建築物の用途別に定め、段階的に引き上 げていきます。新築住宅は購入時、既設住宅では改築時、賃貸住宅・業務建築物については定期的にラベリングの認証・登録を義務付け、最低ランクの基準を満 たさない新築住宅・賃貸住宅・業務建築物に対しては、高効率機器の導入や太陽光発電・太陽熱利用機器などの導入を通じて基準値を満たすように指導が行われ ていきます。
環境性能ラベルには、標準世帯の年間エネルギー消費量・CO2排出量に加えて年平均エネルギー費用等の経済性を表示 することで、初期投資とランニングコストを比較できるようにします。また、環境性能ラベルに応じた税制優遇や低金利融資制度を組み合わせることで、住宅・ 建築物の購入時や賃貸契約時に長期的な視野に基づいて住宅や建築物を選ぶ大きな動機付けになります。

タイムライン

2050年までの計画と目指す将来像

次世代自動車

2008年夏に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画」において前面に打ち出された言葉のひとつが「次世代自動車」だ。その定義と開発・普及状況、そ して普及に向けた取り組みを、環境省 水・大気環境局 自動車環境対策課 課長補佐 井上清登さんに聞いた。

次世代自動車とは?

「低炭素社会づくり行動計画」で定義される次世代自動車は、ハイブリッド自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、クリーン ディーゼル自動車、CNG自動車等(下表参照)。現在、国内で販売される新車に占める次世代自動車はおよそ50台に1台。同計画では2020年までにそれ を2台に1台まで高めることをめざしている。
「次世代自動車普及の目的は、いうまでもなく低炭素社会に向けた輸送部門でのCO2削減です。これらの技術は自動車メーカー各社が低公害化などの観点か ら、以前から取り組んできたものでもあります」と井上さんはいう。

現在の開発と普及度

国内での普及状況は、「プリウス」をはじめとしたハイブリッド自動車が主流。だが、将来的にどの方式が次世代自動車の主流になるかは見えていない。今年夏 には、ガソリン車同様に使える電気自動車が世界にさきがけて三菱自動車と富士重工から発売され、早ければ今年中にプラグインハイブリッド自動車もトヨタ自 動車から発売される見通しだ。また、トヨタ自動車とホンダが取り組む燃料電池自動車についても、実用化に向け、明るい兆しが見えているという。
世界的な開発動向に目を向けると、欧州メーカーはクリーンディーゼル自動車が主流で、米国メーカーは開発がほとんど進んでいないのが実情だ。
「次世代自動車技術は、国内メーカーが世界をリードしている分野。これは国際的な競争力・技術力の強化という面でも期待されています」(井上さん)。
一方、普及という観点で注目されるのは、電気自動車本体を低価格で販売し、使用するバッテリーのレンタルでビジネスを成り立たせる計画を掲げる米国・ベ タープレス社の取り組みだ。
「バッテリーが高額であることが、電気自動車が割高になる理由です。しかし普及が進めばバッテリーは確実に安くなり、100万台普及すればガソリン車より 電気自動車の方が安くなる、とも言われています。同社の取り組みは、普及促進に向けた方法論のひとつといえるでしょう」(井上さん)。

普及に向けた取り組みと支援

次世代自動車の普及に向け、自動車税、自動車取得税の軽減措置がなされているほか、平成21年度からは自動車重量税の減免も行われる。また電気自動車を購 入する地方自治体には補助金を交付する予定だ。これには、ガソリン車の3倍前後の価格になると見られる電気自動車を公的機関が積極的に買い支えることで、 将来の低価格化につなげる狙いがある。 充電インフラ整備に関しては、平成21年度から電気自動車用の急速充電設備を設置した場合、固定資産税の最初の3 年間の課税標準を2/3にする優遇措置をとることが決定している。だが「インフラ普及には、補助金や税優遇だけでは限界がある」と井上さんはいう。
「ビジネスモデルが未確立のまま補助を行っても、設置者の負担が必要になることに変わりません。電力・石油業界等とともにどのようなビジネスモデルが可能 か広く検討し、場合によっては充電スタンド設置に関する各種規制を緩和するなどしてその確立に向けた支援を続けたいと考えています」。
今後、環境省では51台の電気自動車と電動バイクを使い、実証実験を行う予定だ。
「電動自動車は自治体で公用車として、電動バイクは宅配便会社と郵便事業会社で集配用として使ってもらう予定です。それにより、従来のものと遜色なく使え ることを実証していきたいと考えています」(井上さん)。

次世代自動車の概要

方式 実用化のめど 特徴
ハイブリッド自動車 すでに実用化 エンジンのほかモーターとバッテリーを備え、ブレーキ時の回生エネルギーを再利用する
電気自動車 2009年夏 家庭用電源で充電可能な大型バッテリーを搭載し、モーターのみで走行。回生エネルギーの利用な ど、ハイブリッド自動車との共通点も多い
プラグインハイブリッド自動車 早くて2009年中 ハイブリッド自動車のバッテリー性能を強化したもの。家庭用電源で充電可能など電気自動車に近 い特徴を持つ
燃料電池自動車 未定 水素と酸素などの化学反応から電力を取り出す化学電池によりモーターを駆動する
クリーンディーゼル自動車 すでに実用化 窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの排出量を削減したディーゼルエンジンを備える。欧州を中心に乗用車でも普及が進む
CNG自動車 すでに実用化 天然ガスを燃料にした内燃機関を備える。技術的にはディーゼルエンジンを改造することで容易に 実用化可能。小型・中型トラック中心に普及が進む
水素自動車 未定 水素を燃料にした内燃機関を備える。走行中のCO2排出量はゼロだが、技術 的な困難さに加え、窒素酸化物(NOx)を排出することも課題のひとつ

国内排出量取引制度

CO2に価格をつけて取引する――排出量取引は、2007年にはEU市場を中心に、世界全体で総量 30億トンが7兆4880億円で取引され、今後の地球環境及び世界経済に大きな影響を与えるビジネスに急成長している。環境省地球環境局市場メカニズム室 室長補佐 河村玲央さんに、日本での排出量取引の試行実施の状況について聞いた。

なぜ排出量取引が必要なのか

「温室効果ガスの削減は人類の生存基盤に関わる課題」という認識のもと、削減に向けた長期的な取り組みが必要だと河村さんはいう。「息の長い取り組みを促 していくためには、通常の経済活動のなかで削減を評価し、価値づける仕組みをつくっておく必要があります。その手段のひとつが、炭素に価格をつけて取引す る国内排出量取引なのです」。

取引のメインは「キャップ&トレード」制度

EUでは2005年からすでに実施されており、米国、カナダなどでも炭素の国内排出量取引制度の導入が検討・予定されている。こうした環境問題と関連した 取引制度が本格的に実施されたのは、1990年代に米国が酸性雨の原因である硫黄酸化物の削減を目的に導入した制度とのこと。その際に取引方法として確立 されたのが、排出枠の制限(=キャップ)を達成してそれ以上に削減量を増やす企業と、自社では達成できないが排出量を他社から買う(=トレード)ことで削 減量を達成する企業による「キャップ&トレード」制度だ。設備投資などによって排出枠以上の削減に成功した企業は、余剰の削減分を他社に売ることで利益を 得ることができ、その削減分を買った企業は、自社の設備投資にかかるコストよりも安価で効率的に排出枠を達成できる。既存の物流によって生じる取引とは異 なった商談が成立するため、取引を仲介する企業の誕生など新ビジネスの可能性も大きく、また当初の目的であるCO2の総排出量は目標以上に削減される可能 性が高い。

国内では今年10月から試行的実施

「環境省では、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を国内排出量取引のいわば第一歩として、2005年から30億円の予算で行っています」(河村 さん)。
参加希望企業は、提出された削減プロジェクトの成績のいい順に採択し、最大3分の1の補助金を出す方法で、第2期にあたる平成18年度は、基準年排出量か ら19%の削減を予測していたが、予測を超える25%の削減に成功している。
参加したのは、目標保有参加者(=削減に参加する企業)61社、取引参加者(=仲介企業)12社。取引件数は51件(総取引量はCO2 54,643トン)だった。このJVETSの成功は、10月からの政府の試行実施に向けていい先例となっている。
「ただし、JVETSはもとよりCO2削減に意欲的な企業によるものでしたので、上澄みを拾っている可能性があります。さまざまな企業が参加してもうまく いくかどうかを見ていくのが今後の課題です。補助のない状態でCO2 20%削減は厳しいかもしれませんが、試行実施では、環境自主行動計画に参加している場合は、自主行動計画より上の数値を目標にしてくださいというルール はあります」。
排出量取引制度の試行実施への参加には、参加企業のコスト管理や利益追求はもちろん、環境ビジネスやCSR的な観点でのメリットに対する考え方など、多様 な要素が絡んだ判断が求められる。多くの企業が慎重になっているのが現状のようだが、環境省は新たに始まる試行実施への積極参加を期待しているとのこと。
「新たにスタートする排出量取引制度の試行実施では、JVETSより大規模な実験を行うことで、排出量取引自体を検証して次のステップにいきたいと考えて います。CO2の削減を、規制によって達成していくのは厳しいので、ビジネス活動のなかで削減できる手助けをしていきたいと思います」(河村さん)。

国内排出量取引制度(環境省) http://www.env.go.jp/earth/ondanka/det/

排出量取引制度の仕組み

排出量取引制度がない場合排出量取引制度がある場合

事業者同士の排出枠の取引が認められることで、各事業者は柔軟に削減義務を遵守することができる。

1. 「いぶき」打ち上げの背景にあるものは?

2009年1月23日、世界初の温室効果ガス観測衛星「いぶき」(GOSAT)が種子島宇宙センターから打ち上げられました。二酸化炭素(CO2) とメタンの大気中濃度を宇宙から観測する衛星は、私たちになにを教えてくれるのでしょう。独立行政法人国立環境研究所においてGOSATプロジェクトを主 導する横田達也さんにうかがいました。
京都議定書発効を受け、現在、先進国を中心に、温室効果ガス削減に向けた取り組みが進められています。京都議定書に定められたいくつかの温室効果ガスのう ち、特にCO2による温室効果は全体の6割強を占めています。CO2排出削減=低炭素社会の実現が大きな意 味を持つ理由もそこにあります。
ところで地球温暖化に関心を持つ方の多くは、「気候変動予測モデル」という言葉を聞いたことがあるはずです。これはCO2排 出量と気候変動の関係の予測に使われるもので、「2050年までに50%のCO2を削減する」という2008年の洞爺湖サミットで の同意も、このようなモデルが参考にされています。
CO2濃度は、植物の光合成などにより、夏に減り、冬に増える傾向があります。より正確な気候変動予測モデルをつくる には、このような地球上におけるCO2のふるまいの原因の把握が不可欠です。
そのため現在、世界各国の研究者により「地球の呼吸」ともいえる、CO2濃度変化のメカニズムを知るための取り組みが 進められています。その成果としては、たとえば地球上を64分割し、それぞれの吸収・排出量分布が「全球CO2吸収・排出量分布」 として表現されています。
しかし「科学的に見て、その精度は決して高いわけではない」と横田さんはいいます。最大の理由は、CO2濃度を測定す る基地局の配置の偏りにあります。現在、CO2濃度を測定する基地局は全世界に184局ありますが、その大部分は、欧州・北米・日 本に偏っているのが現実なのです。
そのため全球の吸収・排出量分布を算出するには、アフリカや南米、シベリアなどのデータ空白部のCO2濃度を推測で補 うことになります。その結果、精度という点で問題が残ってしまうわけです。

2. CO2吸収・排出メカニズムの謎

図1 地球全球の月別CO2吸収・排出量分布。地球規模でのCO2の吸収・排出の仕組 みを把握する取り組みが進められているが、「いぶき」によりその精度が高まることが期待されている。

「実はモデルによるCO2吸収・排出量分布を細かく見ていくと、『おかしい』と感じる部分も少なくないんです」とい いつつ横田さんが示したのは、国立環境研究所が作成したCO2吸収・排出量分布図です。(図1)
マップ上の青がCO2が吸収されているエリア、赤およびオレンジが排出されているエリア、緑が吸収・排出量の小さな エリアです。北半球を見ると、アジアや北米の森林地帯を中心に、冬に排出され、夏に吸収されている様子がよくわかります。
「しかし南米アマゾン川流域に目を移すと、ジャングルのはずなのに夏も冬も排出されています。ちょっと不思議ですよね」。
実は、これは研究者の間でも意見の分かれるところです。そもそも熱帯雨林は分解と吸収によるトータルとしてのCO2吸 収作用が弱いため、この推測が正しいというのが一方の意見。現在、こうした考え方が主流ですが、その一方で、推測自体が間違っているという意見も根強くあ ります。
「こうした論争は、推測に頼らざるをえない現状を反映したものです。実はモデルによるCO2吸収・排出量分布を細か く見ていくと、このような疑問点は少なくないんですよ」。
このように、わからない部分が多いCO2のふるまいに関する科学的知見を高めることが「いぶき」の第一の使命です。 また、今もなおCO2をはじめとした温室効果ガスと地球温暖化の関係について、科学者の見解は完全に一致していません。「いぶき」 の観測データにより、そうした論争に客観的な情報が加えられ、進展することも期待されています。

3. 100万分の4のオーダーで変化を観測

太陽からのエネルギーは、光として地面に到着して地表を暖めますが、その熱は赤外線として地球外に放出されます。一方、温室効果ガスには赤外線を吸収する 性質があるため、ガスが増えるほど吸収される熱も増え、地球の温度は上がっていきます。これが地球温暖化の基本的な仕組みです。
しかし温室効果ガスの濃度は、その中でもっとも濃度が高いCO2でもわずか100万分の380(380ppm)ほど と、驚くほど低いのが現実です。また年間の変動幅や地域間の差は、最大でも8~20ppmほど。たった数%程度の変動幅しかありません。これより高い精度 が実現できなくては、CO2濃度の変化は観測できないのです。
その実現が大きな課題だったと横田さんはいいます。「いぶき」に先行した、欧州の温室効果ガス観測衛星プロジェクトCARBOSATが頓挫した背景にもこ うした事情がありました。
「欧州のプロジェクトでは、1ppmという精度をめざしていました。一方、『いぶき』がめざしたのは、4ppm=1%が計測できる精度。決して満足できる ものではありませんが、それが実現できれば南北差や海陸差、あるいは季節的な変化が見えてきます。世界の温室効果ガス観測衛星計画が足踏みするなか、日本 の研究者グループは1%の精度でも第一歩として大きな意味を持つと考え、計画が始められました」。
現在、地上局では0.1~0.5ppmという精度でのCO2濃度観測が実現していますが、各局のセンサの状態により、 同じ濃度の空気を測ったときに測定値にバラツキが出ないように時間と労力をかけて目盛りあわせをする努力が常に必要です。一方、衛星による観測は、同一の センサで地球上をくまなく観測できるという特長があります。
「絶対的な数値を測る上ではたしかに地上局に劣りますが、われわれが今もっとも知りたいと思っている相対的な変化を全球レベルで見るには、衛星による観測 は大きなメリットがあるのです」。
実は「いぶき」には、姉妹機といえる衛星が存在するはずでした。それが今年2月に打ち上げに失敗した、米国の温室効果ガス観測衛星「OCO」です。 「OCO開発チームとは打ち上げ後もデータ比較などの共同作業を進める予定でした。両機のCO2濃度算出結果が合致すれば自信につ ながりますし、合わなければ計算方法等の改善もできたはずです。それだけに打ち上げ失敗はとても残念です」。

4. 温室効果ガスを観測する仕組み

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図2 「いぶき」は、CO2濃度が最も安定する13時前後に観測する軌道を一周およそ100分で周回。地球の 自転により、3日で地球上をくまなく観測する。

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図3 「いぶき」は太陽の赤外線の地表での反射をキャッチすることで直径10kmの大気の柱=気柱中のCO2と メタンの濃度を観測する。

図4 「いぶき」に搭載されたセンサーは、酸素、CO2、メタンの吸収作用がはっきりと現れる短波長赤外線3 バンドと、熱赤外線1バントで大気の様子を観測する。各種気体により赤外線が吸収されることで、このようなギザギザが生まれる。

「いぶき」は地上666kmを飛行し、約100分で地球を一周します。周回しながら3日間で地球をくまなく観測していきますが、その測定数は5万6000 ポイントに及びます(図2・図3)。濃度を計算できるのは雲のない晴天域の観測点だけですが、それでもかなりの数になります。
よく知られるように、光はプリズムにより7色に分光されます。同様に赤外線も分光可能で、「いぶき」が搭載する温室効果ガス観測センサは、地表から反射す る赤外線を細かく分光してキャッチします(図4)。
図を見ると、特定の帯域がギザギザになっていることがわかるはずです。ギザギザの谷の部分は、温室効果ガスなどにより赤外線が吸収された証しです。「いぶ き」プロジェクトでは、この谷の形や深さをもとに温室効果ガス濃度を計算していきます。
「いぶき」プロジェクトは、環境省、国立環境研究所、JAXA(宇宙航空研究機構)の共同事業として進められていますが、国立環境研究所は、観測データか ら温室効果ガス濃度を計算するなどの定常的なデータ処理を担当しています。
精度向上と並ぶ技術上の課題のひとつが、膨大なデータを処理するシステムの構築でした。「いぶき」プロジェクトでは、国立環境研究所に設置したシステムの ほかに東京大学情報基盤センターのスーパーコンピュータを使い、その解析を行います。

5. 「いぶき」により見えてくる目標削減量

図5 今後いぶきプロジェクトでは、各種地上観測施設や航空機による測定データと照合しながらデータの校正・検証作業が続けられる。

「いぶき」は2月7日に初めて観測データを地上に送信しました。
「受信したデータは、打ち上げに先立ってわれわれがシミュレーションしたものとほぼ合致していました。この先の計画成功への第一ハードルをクリアしたと考 えていいと思います」。
今後、衛星軌道の微調整、センサ性能のチェックなどの期間を経て、4月末からは校正・検証段階が始まります。これは「いぶき」から送られるデータがどれだ け正確なものか、さらに観測データからどれだけ正確にCO2等の濃度を算出出来るかを地上局などの観測データと照合しながら検討し ていくプロセスです(図5)。作業は世界各国の研究者や研究機関と協力して行われます。校正・検証段階を終える10月からは、「いぶき」のデータをCO2吸 収・排出量分布推定に反映しようとする研究者などにデータの提供を開始し、そこで問題がないことを確認した上で、来年1月からはデータを広く一般の方々に 公開していく予定です。
では、それによりなにが見えてくるのでしょう。CO2吸収・排出量分布の精度向上につながるのはもちろんですが、「い ぶき」には、その先にもうひとつの重要な期待のもてる成果があります。
それは、「気候変動予測モデル」の精度を向上させることです。実は、「CO2排出50%削減」という洞爺湖サミットで の合意も、CO2のふるまいが完全に解明できていないため、科学的根拠が十分とは言えないのが実情なのです。
「今後、数年の間に、『いぶき』のデータを活用した研究結果が、世界のいくつかの研究機関による気候変動予測モデルに反映されることを期待しています。そ れにより、地球温暖化を防ぐために必要な削減量もより正確に見えてくるのでは」と横田さんはいいます。
「削減目標にすべきなのは50%なのか、あるいは80%なのか――。今後、人類が取り組まざるを得ないこの課題の解答に少しでも役立つような科学的裏づけ を与えることが、『いぶき』に与えられたもっとも大きな使命かもしれません」。
5/29から5/5までお休みをしますので、宜しくお願いします。

5/6からブログの更新をしていきますので、宜しくお願いします。
いろいろとやる事があり5日間も更新を忘れていまいました。

皆さんに心配をかけてすみませんでした。

忙しくなってきたらブログの更新は、毎日は出来ませんがなるべくブログの更新をしていきま

すので今後とも俺のブログをよろしくお願いします。