国内排出量取引制度

CO2に価格をつけて取引する――排出量取引は、2007年にはEU市場を中心に、世界全体で総量 30億トンが7兆4880億円で取引され、今後の地球環境及び世界経済に大きな影響を与えるビジネスに急成長している。環境省地球環境局市場メカニズム室 室長補佐 河村玲央さんに、日本での排出量取引の試行実施の状況について聞いた。

なぜ排出量取引が必要なのか

「温室効果ガスの削減は人類の生存基盤に関わる課題」という認識のもと、削減に向けた長期的な取り組みが必要だと河村さんはいう。「息の長い取り組みを促 していくためには、通常の経済活動のなかで削減を評価し、価値づける仕組みをつくっておく必要があります。その手段のひとつが、炭素に価格をつけて取引す る国内排出量取引なのです」。

取引のメインは「キャップ&トレード」制度

EUでは2005年からすでに実施されており、米国、カナダなどでも炭素の国内排出量取引制度の導入が検討・予定されている。こうした環境問題と関連した 取引制度が本格的に実施されたのは、1990年代に米国が酸性雨の原因である硫黄酸化物の削減を目的に導入した制度とのこと。その際に取引方法として確立 されたのが、排出枠の制限(=キャップ)を達成してそれ以上に削減量を増やす企業と、自社では達成できないが排出量を他社から買う(=トレード)ことで削 減量を達成する企業による「キャップ&トレード」制度だ。設備投資などによって排出枠以上の削減に成功した企業は、余剰の削減分を他社に売ることで利益を 得ることができ、その削減分を買った企業は、自社の設備投資にかかるコストよりも安価で効率的に排出枠を達成できる。既存の物流によって生じる取引とは異 なった商談が成立するため、取引を仲介する企業の誕生など新ビジネスの可能性も大きく、また当初の目的であるCO2の総排出量は目標以上に削減される可能 性が高い。

国内では今年10月から試行的実施

「環境省では、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を国内排出量取引のいわば第一歩として、2005年から30億円の予算で行っています」(河村 さん)。
参加希望企業は、提出された削減プロジェクトの成績のいい順に採択し、最大3分の1の補助金を出す方法で、第2期にあたる平成18年度は、基準年排出量か ら19%の削減を予測していたが、予測を超える25%の削減に成功している。
参加したのは、目標保有参加者(=削減に参加する企業)61社、取引参加者(=仲介企業)12社。取引件数は51件(総取引量はCO2 54,643トン)だった。このJVETSの成功は、10月からの政府の試行実施に向けていい先例となっている。
「ただし、JVETSはもとよりCO2削減に意欲的な企業によるものでしたので、上澄みを拾っている可能性があります。さまざまな企業が参加してもうまく いくかどうかを見ていくのが今後の課題です。補助のない状態でCO2 20%削減は厳しいかもしれませんが、試行実施では、環境自主行動計画に参加している場合は、自主行動計画より上の数値を目標にしてくださいというルール はあります」。
排出量取引制度の試行実施への参加には、参加企業のコスト管理や利益追求はもちろん、環境ビジネスやCSR的な観点でのメリットに対する考え方など、多様 な要素が絡んだ判断が求められる。多くの企業が慎重になっているのが現状のようだが、環境省は新たに始まる試行実施への積極参加を期待しているとのこと。
「新たにスタートする排出量取引制度の試行実施では、JVETSより大規模な実験を行うことで、排出量取引自体を検証して次のステップにいきたいと考えて います。CO2の削減を、規制によって達成していくのは厳しいので、ビジネス活動のなかで削減できる手助けをしていきたいと思います」(河村さん)。

国内排出量取引制度(環境省) http://www.env.go.jp/earth/ondanka/det/

排出量取引制度の仕組み

排出量取引制度がない場合排出量取引制度がある場合

事業者同士の排出枠の取引が認められることで、各事業者は柔軟に削減義務を遵守することができる。