カーボンオフセットの仕組みづくり(英国/ニューカッスル・アポン・タイン)

「世界初のCO2排出ゼロ都市」を目指して

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カーボンオフセット証書

英国のニューカッスル・アポン・タイン市は、2003年から、排出される温室効果ガスを、CO2を吸収する植林 や代替エネルギー事業に投資することで相殺する「カーボンオフセット」という考え方を取り入れた、世界初のCO2排出ゼロの都市を 目指す事業を始めました。
同市は、CO2の排出量や削減方法、カーボンオフセットの方法を知ってもらうために、市民に対してそれらの情報を載せ たウェブサイトの整備を行いました。そして企業や団体に対しては、CO2排出削減対策を助言し、削減不可能なCO2排 出については、カーボンオフセットを勧めています。さらに、CO2の大量排出企業等には、専門コンサルタントを紹介する試みも導入 しました。加えて、企業に対するインセンティブとして、カーボンオフセットのための寄付には、法人税を免除するといった税金優遇制度も設けられました。
それらカーボンオフセットに向けた環境整備の結果、強制参加でないにも関わらず、カーボンオフセットを推進する事務局は開始から4年間で100企業・団体 にアドバイスを行い、専門コンサルタントは37企業を対象にエネルギー監査を実施し、年間1,000トンのCO2の排出を削減する 等、大きな実績を残しました。
カーボンオフセットに向けた更なる取り組みとして同市は、市内で開かれる会議やイベントにおいて、参加人数、参加者の車や飛行機による移動手段・移動距 離、宿泊数や電気等エネルギー使用量等から、予め排出が想定されるCO2排出量をオフセットする「カーボンニュートラル会議」の推 進も行っています。

グリーン事業への貢献と実績

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著名な元フットボール選手の協力とキャンペーン電車(写真提供 ニューカッスル市)

カーボンオフセットによって集まった資金は、カーボンニュートラル基金として積み立てられています。2004年時点での実績として、年 間5,000トン(20%は個人から、80%は企業・団体から)のオフセットが行われました。
それら基金のうち、20%のキャンペーン費用を除いた残りの80%は地域に還元され、社会的弱者のための住宅断熱・暖房工事事業や太陽光発電装置の設置、 植林事業等の環境保全や社会的利益にもつながる事業への支援に充てられています。
ニューカッスル・アポン・タイン市では、市民や企業・団体がカーボンオフセットに参加した結果、3,000戸、700企業以上がグリーンエネルギーを利用 するようになり、4,000トンのCO2が削減されました。取り組み全体としての温室効果ガス削減効果は、2003年から3年間で 約50,000トンにものぼると推定されています。
同市では、市民や企業・団体の地球環境に対する配慮に加え、もともとあった寄付の伝統等が手伝って成果を上げてきました。しかし、現在行っている取り組み だけでは、カーボンオフセットを行うことに対してのインセンティブは十分だとは言えません。今後同市は、カーボンオフセットの更なる普及・拡大に向けて、 オフセット事業に付加価値をつける工夫を行いながら、CO2排出ゼロを目指していきます。

12.低炭素社会の担い手づくり


目指す将来像

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【スペシャリストの育成】 大学・大学院および研究所に在籍する地球温暖化の研究者・専門家は、2050年には1万人程度にのぼる見込みで、温暖化問題に対する理解や対策技術の開発 も進んでいます。
また、低炭素社会作りに関する広範な知識を持ち、多角的な視点から家庭内や企業活動に伴うCO2排出量削減のアドバ イスを提供する「低炭素アドバイザー」が社会で活躍するようになり、この資格の取得者は2050年には5万人を超える見込みです。

【知識と情報の共有】 地球温暖化問題に関する基礎的な知識や様々な温暖化対策については、学校での環境教育や企業での研修などを通じてあらゆる世代の人々に浸透していきます。
また、放送や新聞など各種メディアは、環境問題に関するコンテンツを提供し、最新の研究で得られた知見など常に新しい情報を提供します。その他にも各種環 境イベントの開催や、Webを利用したエコライフ実践に関する情報交換などを通じて、低炭素型のライフスタイルやビジネススタイルを確立するための情報や 知識が共有されるようになります。

【低炭素型ライフスタイル・ビジネススタイルの浸透】 地球温暖化問題に関して、科学的知見に基づいた正しい知識を持ち、その知識に基づいた低炭素型のライフスタイル・ビジネススタイルを実践することが一般の 人にとっても当たり前となります。また、低炭素社会づくりを実現するために主体的に行動する人が多くなり、自分が居住する地域の都市計画や地方行政などに 積極的に参加するようになるでしょう。

ステップ

【教育スタイル確立期】 教育年齢にあった環境教育の教材やカリキュラムを作成します。また、子どもに環境意識を浸透させることによって、親や兄弟にも環境の意識や行動が波及的に 浸透するよう、親子参加型の教育プログラムを開発し、各種教育プログラムの効果を分析して効果的な教育プログラム実施のためのノウハウを蓄積していきま す。
一方で、教職員の知識レベルの向上を図るため、教員採用試験に環境問題に関する科目を追加すると共に、教職員を対象とした環境の研修も開催します。また、 低炭素社会アドバイザーの資格制度の構築に向けて、有識者を集めての議論も始めます。さらに、一般の人に対しても適切な情報提供を行うために、NGOや企 業などと協力しながら、各地で環境イベントや講習会を開催したり、情報提供・情報交換用のWebサイトを開設したりしていきます。

【環境教育浸透期】 小学校、中学校、高等学校までの教育機関において、環境に関する授業を必修科目とし、各種教育プログラムの実施を行います。また、低炭素アドバイザーの資 格制度を導入すると共に、大学・大学院に資格取得のための専門学科を設置します。さらに、企業に対しては一定数の低炭素アドバイザー有資格者の雇用を義務 付け、社員全員が低炭素アドバイザーによる研修を定期的に受講するよう指導していきます。

【教育効果安定期】 環境問題に対する対策の必要性が市民に浸透し、新たな対策を行う際には効果的で適切な宣伝や教育が行われるようになります。教材などは新しい知見に基づい て常に改訂し続けていきます。また、市民が常に環境問題に対して深い関心を持ち続けるよう、環境教育や環境行政の在り方等について議論する場を提供し続け ていきます。

11.「見える化」で賢い選択


目指す将来像

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【省エネ効果の見える化】 住宅やオフィスには、デジタル式の電気・ガスメータ(スマートメータ)が広く普及し、個別の機器の使用に伴うエネルギー消費量やCO2排 出量を常時計測することが可能となります。
また、得られたデータを分かりやすい形で利用者に表示し、それぞれ個人の行動パターンやライフスタイルにあわせてさらなる省エネ・省CO2に 向けたアドバイスを提供したり、空調や照明などを自動制御したりするLCSナビゲーションシステムが全ての新築住宅・オフィスに普及するようになります。
これらのシステムの多くは高齢者の安全安心、家庭・オフィスのセキュリティ監視機能など、多様なサービスと併せて提供されていきます。

【製品環境情報の見える化】 商品の購入時に製品に取り付けられたタグを携帯端末で読み込むと、各製品の環境性能に関する情報(ライフサイクル環境負荷等)やそれを選択した時の多様な メリットが、消費者に理解しやすい形で示されるようになります。
また、電化製品などでは、ネットワークを介して機器の稼働状態がメーカに送られ、メーカから適切な指示(修理や買換え助言、廃棄処理方法)を受けることが できるようになっています。

ステップ

【基盤整備期】 LCSナビゲーションシステムを導入する上で、基盤となるスマートメータを普及させるため、明確な普及目標(5年以内に全ての住宅やオフィスに普及させる 等)を定め、需要家への啓発やキャンペーンやエネルギー会社への導入資金援助などを通じて導入を後押ししていきます。
また、コンビニやスーパー、生協、家電量販店などの小売店と協力し、ライフサイクル環境負荷などのデータが得やすい商品(例えば自主企画商品など)を対象 に試験的にライフサイクル環境負荷情報の表示(カーボンラベリング)を行います。同時にこれらの制度の実施に協賛するメーカを広く募集して環境情報を表示 する対象商品を徐々に拡大していき、ラベリングに必要なデータやノウハウの蓄積を進めていきます。
さらに、環境負荷の計算方法やラベリングの表示方法などの規格を定めると共に、消費者が統一した指標で商品の環境負荷を比較することができるように、第三 者機関によるカーボンラベリング認証制度を整備します。

【システム開発・統合期】 様々な情報を統合的に整理して表示するLCSナビゲーションシステムの開発には、開発段階から利用者やシステム導入者とのニーズを十分に理解して開発する ことが重要となるため、潜在的なシステム購入者を選定してヒアリングを行い、ニーズを把握します。これらのニーズをもとに、技術者・有識者・利用者が議論 し、合議の上で決定したシステムの技術仕様をもって開発事業者を公募します。あらかじめニーズを把握し、一定数の需要を確保することで開発者にシステム開 発のインセンティブを与えつつ、利用者やシステム導入者が求める製品機能、価格、エンターテイメント性が付与されたシステムデザインの実現を追及していき ます。
さらに、家電製品やオフィス機器には、環境情報をやりとりするための情報通信機能の設置を機器メーカなどに義務付け、全ての機器の情報がLCSナビゲー ションシステムに集約されるようシステムの統合を推し進めます。

【インセンティブ導入期】 カーボンラベリング制度やLCSナビゲーションシステムを活用し、企業や政府による個人・事業者の環境負荷低減のインセンティブ制度導入を進め、個人・事 業者の環境意識向上による低炭素型ライフスタイル・ビジネススタイルを浸透させていきます。

10.次世代エネルギー供給


目指す将来像

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【低炭素型水素が主流化】 水素は工業プロセスなどから生成される副生水素に加え、CCS(二酸化炭素貯留)付きの改質プラントや洋上風力発電からの電気分解などから製造され、製造 時において温室効果ガスを排出しない製造方法が主流となります。
また、それら製造された水素は主にパイプライン等を通じて輸送され、輸送用、電力需給調整用、あるいは燃料電池の燃料として利用されます。

【安定したバイオ燃料供給】 地域に応じたバイオマス生産・利用計画が立てられ、計画にあわせて食料・木材・飼料などの生産が行われるようになると共に、地域内で発生した廃棄物系バイ オマスは最大限利用されるようになります。
日本国内で不足する分は海外から輸入されて利用されますが、国際的なバイオマス資源管理の協定を結び、生産国における生産方法やその環境負荷にも十分配慮 されようにしていきます。
輸送用燃料など、液体燃料が有利な用途にバイオマス由来の液体燃料が優先的に使われるようになります。また、熱と電力におけるバイオエネルギーの供給シェ アが高まるでしょう。

ステップ

【水素エネルギーの計画立案・実証期】 将来の水素需要を見越して、必要なインフラが最小限にとどまるように、需要密度の高い地域を中心に水素集中製造拠点の配置計画・供給計画を立案します。 また、工場の副生水素発生源等、既存の水素製造設備があって比較的水素を利用しやすい地域をまずは選定し、これらの限定的なエリア内で水素輸送、貯蔵イン フラの整備を進めて水素配給を開始します。そしてこれらの地域では水素供給先として実証的に燃料電池バスを巡回させ、同時に、水素利用技術の低コスト化・ 高効率化を進めていきます。 さらに、水素供給計画に基づいて再生可能エネルギーからの水素製造技術や、水素貯蔵、輸送技術など、長期的な観点から必要な技術開発に対して支援を行いま す。

【水素エネルギーの導入拡大期】 水素拠点配置計画に基づき、水素供給地域を増加させると共にこれらの地域が相互に接続されるよう後押ししていきます。例えば、水素製造拠 点と大消費地を結ぶ幹線水素輸送パイプラインなどについては、公的資金を投入してインフラの整備を支援します。一方で、製造された水素の排出原単位に応じ て税制を優遇するなどの経済的インセンティブを導入し、低炭素型の水素製造を主流化させていきます。

【バイオマスエネルギーの利用拡大・コスト削減期】 各地域で利用拡大が図られているものの、原料の収集や運搬・エネルギー転換にコストがかかることや、既存の規制のために、低品質の バイオエネルギー利用やバイオマスの混合処理によるエネルギー生産が進まないことによって思うように行われていないのが現状です。 そのため、まずはコスト削減と規制緩和を行うと共に、それによってライフサイクル分析等で持続可能なエネルギー供給が行われているかどうかを確認していき ます。

【バイオマスエネルギーの導入拡大期】 地域の農林業の計画とエネルギー需給計画の関係を強化し、用途を考えたゾーニングを行うことで地域の食料・木材・エネルギーの自給 率を高め、地域の持続可能性を高める商品に付加価値をつけます。そして、国内だけでなくアジアにおけるバイオマスの利活用を視野に入れたバイオマス転換技 術の開発・コスト削減を行います。日本国内で不足するバイオエネルギーについては海外から輸入しますが、生産プロセスにおける環境負荷を適切に評価できる よう国際的な枠組み作りを支援していきます。

9.太陽と風の地産地消


目指す将来像

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【太陽が支える暮らし】 低コストの太陽電池が、全ての住宅やビルに設置されるようになります。また、住宅や建築物の美観を損なわないようにデザインにも工夫を凝らすことで、屋根 や壁面、窓など、様々な場所に設置することが可能となります。
さらに、住宅や建築物だけでなく、遊休地等を利用して売電目的で太陽電池が設置されるケースも多く見られるようになるでしょう。

【地域のシンボル風力発電】 陸上では海岸沿い、高原、農牧地などを中心に、風況のよいところでは大型風車の設置が当たり前になります。生態系などへの影響にも十分配慮した上で導入さ れ、地域によっては、風車が地域のシンボルとなるところも出てきます。
洋上には比較的大型の風車で構成される大規模な洋上ウィンドファームが設置され、そこでは水素のような蓄積や運搬が可能なエネルギーに変換されて定期回収 が行われるようになります。

【再生可能エネルギーの地産地消】 太陽光発電や風力発電などにはエネルギー貯蔵設備が併設され、安定的な電力供給が可能となります。発電電力の一部は水素製造に利用され、家庭やオフィスの 燃料電池に供給されたり、燃料電池自動車に供給されたりするようになります。
また個別のエネルギー貯蔵システムにとどまらず、太陽光、風力、バイオマス、水素、地熱、中小水力等を組み合わせて電力需給調整を行う電力供給システムを 導入している地域もでてきます。
これらの結果、再生可能エネルギーによる発電量は総電力需要量の15~20%程度を占めるようになる見込みです。

ステップ

【コスト対策期】 太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー普及にあたって、当面の最大の課題であるコスト低減に向けて、各種技術開発プログラムを強化します。
これらのコスト低減のためには、大量生産によるスケールメリットも有効であるため、電力会社による再生可能エネルギーによる発電電力(あるいは余剰電力) の買取価格の引き上げを行い、導入年における電力買取価格を一定期間(15~25年間等)保証して導入を後押していきます。電力買取価格は各種システムコ ストの低減の見込みにあわせて年々低下させていきますが、再生可能エネルギーの発電事業者が設備投資をしやすいように長期的な買取価格の変化を明示した上 で実施します。
一方で、再生可能エネルギーの大量導入に伴って系統電力の電圧や周波数などに影響がでる可能性があるため、エネルギー貯蔵装置の技術開発を促進させ、安価 で小型・高性能の電力貯蔵技術・水素製造技術の確立を促していきます。
さらに、電力会社に対しても、送配電線の増強や各種系統電力品質維持のための設備投資に対して一定の補助金を導入すると共に、電力品質を維持するために追 加的に発生した費用を電気料金などを通じて消費者に転嫁することに対して、国民に理解が得られるよう広報活動を行っていきます。

【自律システム普及期】 太陽光発電や風力発電などの新規導入にあたっては、エネルギー貯蔵システムと併せて導入することを義務づけます。
その一方で、エネルギー貯蔵システムの導入に対しては補助金制度を実施し、系統電力への影響を最小限にとどめた自律型の再生可能エネルギー発電システムの 普及を後押ししていきます。

【システム統合期】 太陽光発電や風力発電に併設された個々のエネルギー貯蔵システムでの対応に加え、地域のエネルギー需要や気象条件を踏まえて、他の分散電源や水素エネル ギーシステムとの最適な組み合わせを検討します。
さらに、地域内でのそれらの電力融通が実施できるように電力供給ネットワークの構築を支援することで、全体としてのシステムコスト低減に貢献していきま す。

8.カーボンミニマム系統電力


目指す将来像

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【低ロスで低環境負荷】 石炭火力発電、天然ガス火力発電のいずれでも、超超臨界タービンの複合サイクルが一般的となり、発電効率は全てのプラントが55%以上を達成する見込みで す。さらに一部の大規模で先駆的なプラントでは、発電効率60%を達成します。
また、発電所には二酸化炭素隔離貯留設備(CCS)が併設され、CO2をできる限り発電所外に放出せず、かつ一次エ ネルギーを効率的に二次エネルギーに変換するシステムが広く普及するようになります。

【再生可能エネルギーを活かす連系システム】 大規模太陽光発電や風力発電には、蓄電池や水素製造設備などの出力平準化設備が併設されるため、電力系統への影響をある程度抑制し、安定した電力供給がで きるようになります。

【適切な原子力の利用】 原子力発電所については、電力需要推移や他の発電技術の開発動向を見据えた上で、政府や電力会社だけでなく、市民も巻き込んで利用の合意が図られていま す。
また、原子力発電所では、安全性確保とそのための情報開示制度の徹底を前提として、適切な廃棄物管理を行い、国際的な核拡散防止の観点も加味した上で、適 切な水準での維持・稼働が進められます。

【エネルギーをそのまま運ぶネットワーク】 管轄区域内の基幹送電網は、100万Vの超超高圧送電網が張り巡らされるようになり、電力会社をまたぐ送電路や、原子力発電所と需要地を結ぶ送電路には超 高圧直流送電が採用され、可能な限り送電損失を低減するような対策が講じられます。

ステップ

【将来像共有期】 まずは政府や電気事業者、需要家を巻き込み、中長期的な電力供給のあり方を議論して認識を共有します。ここでの議論を元に、産・学・官・民が協同して将来 像を実現するのに不可欠な各種技術(再生可能エネルギー技術、超超臨界タービン、超超高圧送電技術、低損失CCS、電力品質管理・制御技術等)の開発を強 化していきます。同時に、政策的に将来の低炭素電力供給を指針等で既定路線化して、既存電力会社以外に対しても参入や協調する動機付けを行います。
原子力発電については、安全保持機構の維持と適切な情報開示制度の下での運用スタイルをさらに強化します。それに加え、非専門家とのコミュニケーションを 通じて、適切な原子力発電の利用に対して理解を深めてもらえるように努めていきます。
また、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを導入することで発生する電力品質を維持するための費用の分担については、需要家への価格転嫁を進 めます。その一方で、電力価格上昇による低所得者層への影響が最小限になるよう配慮するなど、電力料金制度の抜本的見直しを行います。

【低炭素電力ニーズ拡大期】 個人が直接発電事業者を選択できるように規制や制度の改定を行うと共に、電力に関わる税制のグリーン化(環境配慮)を進めていきます。これによって需要家 の低炭素電力へのニーズを高め、発電事業の低炭素化、送配電ロスの低減等に対して付加価値を与えられます。
この頃までにCCS技術や超高効率発電技術、超高圧送電技術の実用化に一定の目処をつけるよう技術開発が進められます。そして、電力会社は長期的な指針に 基づき、系統インフラ設備を更新するタイミングでの低損失線路への交換、長距離直流送電線の敷設、配電系統の容量拡大等を進めることで、エネルギーロスが 少なく再生可能エネルギーを受け入れやすい電力送配電網を作り上げます。

【低炭素型電力供給期】 開発、実証してきた各種高効率化技術の普及を推し進めると共に、発電所を新設する際には、二酸化炭素削減技術の導入を徹底します。

7.歩いて暮らせる街づくり


目指す将来像

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【中心市街地をつなぐ公共交通機関】 利用頻度の高い施設は中心市街地に、利用頻度が低い施設は中心市街地からやや離れた地域に立地させ、利便性の高い都市構造が各地に形成されるようになりま す。また、各地域の中心地は、公共交通機関のネットワークで結ばれるため、公共交通機関が利用しやすくなります。

【安心して歩ける地域】 道路が終日、歩行者や自転車利用者に開放されているエリアを都市や郊外などの各地に設け、そのエリア内については通過交通となる自動車の進入を規制するこ とで、車椅子やシニアカー(福祉用電動車両)などでも、安全で安心に通行できる地域となります。

【乗用車は電動軽量化】 乗用車は主に土地利用密度が比較的低い地区内の移動を受け持ち、公共交通機関とパークアンドライドや乗合タクシー、カーシェアリング等の手法で連携しま す。また、車両はバッテリー電気自動車あるいは燃料電池自動車等の電動自動車が一般的となるでしょう。
これらの電動自動車はエネルギー貯蔵装置(二次電池、水素貯蔵装置)の高性能化が進み、高張力材料の開発で車体も軽量化されるため、走行時のエネルギー効 率は大幅に改善されていきます。バッテリー電気自動車のバッテリーについては、利用が多く予想される家庭用の急速充電の他に、利便性を重視した充電済み電 池パック取り替えサービスも普及するようになります。

ステップ

【計画立案期】 土地の公共性について市民に十分に理解してもらい、中長期的な視野に基づく都市計画を実行するため、市民と一体となり、低炭素社会や人口減少社会に適した 集約型土地利用を明確に打ち出した土地利用・交通計画を立案します。それを都市計画マスタープランおよび総合計画に位置づけることにより、低炭素の観点も 含めた土地利用や交通整備を進めます。
また、電動自動車の普及を後押しするため、エネルギー貯蔵装置(高性能二次電池、水素貯蔵装置等)や車体軽量化等の研究開発を進めるのに加えて、公共交通 機関の効率向上に向けた研究開発も行っていきます。

【都市構造変革期】 中心市街地の土地の有効活用を図ると共に、公共交通利用に適した地域に集客施設等の立地が促進されるよう、中心市街地における税制上の特例措置等を実施し ます。また上下分離方式を導入し、多くの地方都市でLRT(軽量軌道交通) 等の事業化が進むよう経済的支援を行います。
自動車交通に対しても、環境負荷の小さい車両の普及を後押しするグリーン税制の導入や、環境負荷の小さい車両のみが通行できる優遇レーンや優先駐車場を広 く設置するなど、様々な観点から自動車の利用者に対して低炭素化へのインセンティブが与えられます。また、電動車両の大量普及に向けて、二次電池、燃料電 池およびモーターに用いるレアメタルの資源量を確保するように働きかけるのと同時に、代替材料の研究開発も行っていきます。

【浸透期】 低炭素型地域の実現可能性およびその地域の魅力が目に見えるようになり、住宅建て替えのタイミングに合わせてその地域への住み替えが進み、居住エリアが集 積的に形成されていきます。また、個人の移動手段については小型軽量化がさらに進み、電動カートや電動車椅子、電動アシスト付き自転車、i-REALのよ うな形の都市内交通手段のシェアが増大します。

6.滑らかで無駄のないロジスティクス


目指す将来像

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【SCMによる無駄の徹底排除】 原材料や部品の調達から製造、流通、販売という、生産から最終需要(消費)にいたる商品供給の流れを「供給の鎖」(サプライチェーン)と捉えて、ビジネス プロセスの全体最適化を図る「サプライチェーンマネジメント(SCM)」が普及するようになります。SCMでは、高度情報通信技術によって供給網に参加す る企業間で情報を相互に共有・管理することで、需要と供給が同期化され、在庫・仕掛品の削減が進んでいきます。その結果、不必要な生産が抑えられ、産業が 効率化されます。

【鉄道・船舶輸送インフラの充実と繋ぎ目のない流通網の実現】 主要な拠点間を結ぶ区間では船舶や鉄道による大量貨物輸送網が充分に整備され、さらに主要な荷捌き拠点にて異なる輸送手段間の貨物がスムーズに受け渡しで きるように制度やインフラが構築されます。その結果、低炭素かつ効率的な長距離輸送ネットワークが実現されていくでしょう。

【高効率自動車による域内輸送】 域内輸送はモーター駆動もしくはハイブリッド貨物自動車が中心となっています。また、情報通信技術の進展によって共同配送が進み、積載効率が大幅に向上し ていきます。大都市中心部では台車による集荷・配達も行われるようになります。

ステップ

【SCM推進期】 SCMを導入して供給プロセスの全体最適化を実現するためには、関連する全ての企業が協力し必要な情報を共有することが重要です。しかし、SCMの導入コ ストが高いことや企業内情報を社外に提示することに抵抗がある企業が多いため、参加企業が限定的となり十分な効果が得られていない場合が予想されます。
そこで様々な事例に対し、SCMの投資対効果を評価して、その優良事例を紹介すると共に、SCMをネットワーク経由で共有利用するシステム等の導入を後押 しし、参加企業の投資費用の分散化・低廉化を進めることで中小企業でも参画できるようにしていきます。また、日本で開発した企業内/企業間の電子情報の規 格を国際標準化させる戦略的な取り組みを実施し、システムコストの低減とSCMの普及促進につなげていきます。

【インフラ整備期】 国際基準(海上コンテナ)と同じ寸法の鉄道用の新コンテナを開発・統一化するなど、複数の輸送機関間の障壁をなくすような制度を整備します。
同時に、貨物路線や貨車ターミナルの増設、港でのコンテナ搬送用台車や空コンテナの置場の拡充などといった必要インフラの設備に対して公的補助を行うと共 に、鉄道や船舶の固定資産税の減免制度などを導入することで、幹線貨物輸送インフラのネットワーク構築を後押ししていきます。

【低炭素ロジスティクス実現期】 トップランナー制度の対象範囲を自動車のみならず全ての輸送機関へと広げ、各貨物輸送機関の高効率化を継続的に行っていきます。
そして、輸送用エネルギーに対して炭素含有率に応じた課税を行うことで低炭素型の貨物輸送機関の競争力を高めます。加えて、各輸送機関の輸送枠の空き状況 やCO2排出量、コスト、リードタイム等がリアルタイムで閲覧できるシステムや、エコレールマークなどのラベリング制度の普及を支 援し、貨物輸送に伴う温室効果ガス排出の「見える化」を推進させ、荷主が輸送機関を選ぶための情報を容易に入手できるようにしていきます。

5.人と地球に責任を持つ産業・ビジネス


目指す将来像

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【40%以上の効率改善】 企業の絶え間ない努力とそれを支援する社会制度によって、各業種の実質生産額あたりのエネルギー消費量は2000年と比べて40%以上(各部門において年 率1%程度の削減努力に相当)削減される見込みです。

【「低炭素」価値浸透による需要喚起】 消費者が低炭素型製品・サービスを選好するようになっていくこともあり、企業の製造技術やサービスの低炭素化への開発投資は益々進展してきます。また、低 炭素化を積極的に行う企業に対する金融投融資を拡大させることで、企業活動の低炭素化は企業の競争力の観点からも重要な要素となるでしょう。その結果、水 素を還元材として用いた製鉄技術など、多くの革新的技術が実用化されるようになります。

ステップ

【制度設計期】 企業の低炭素化に向けた努力を客観的に把握するために、統一化(標準化)された書式で企業別あるいは事業所別のCO2排 出量を公開するようにしていきます。加えて、その企業の持続可能社会に向けた取り組みなども開示する制度を確立し、それらを第三者の立場から評価・認証す る公認CO2会計士制度を導入します。
一方で、金融機関に対しても環境に配慮した「社会的責任投資行動」を実施する方針を明確に打ち出し、貸し出し資産の一定比率を低炭素型ビジネスに投資して いる金融機関を公表し、その取り組みを後押していきます。さらに、これらの低炭素型投資や金融商品等に対しても減税などの様々な優遇措置を導入すること で、低炭素型の経営を行う企業にお金が集まる仕組みを構築していきます。

【導入期】 「見える化」が進んだ企業のCO2排出量データを基に、低炭素型経営を行う企業を後押しするような制度を導入します。 具体的には、企業活動におけるCO2の排出に対して炭素税を課す一方で、CO2削減目標に関して政府と合意 し、その目標を達成した企業には大幅減税措置や削減目標を実現するための技術開発補助などのインセンティブを与えます。CO2削減 目標は第三者機関が評価し、その達成難易度に応じて、受けられる減税措置や技術開発用の補助金などのインセンティブを差別化します。また、環境税の導入に 併せて規定の排出枠を超えて温室効果ガスを排出してしまった企業と、削減努力により排出枠が余った企業との間で排出枠を取引することができる「排出量取引 制度」を導入し、企業のCO2削減コストや目標未達のリスクを最小限に抑えるような制度設計を行います。炭素税の税率については徐 々に拡大していきますが、企業が将来の税率を踏まえた経営計画や技術開発投資計画を立てやすいように、将来の長期的な税率変化についても併せて公表するよ うにします。
さらに、特に先進的な取り組みを行った企業に対しては、例えば「Low Carbon of the year」などとして大々的に表彰を行います。これらにより、企業の低炭素製造技術・サービスへの転換を後押ししていきます。

【競争力の確保】 国際競争にさらされやすい産業などでは、炭素税の導入等による国際競争力の低下を招きかねません。また、企業への過度の負担は製造業の海外流出に繋がって しまいます。そこで政府は国際交渉等を通じて特定の産業の不利益が甚大とならないよう国際的な枠組みのスキーム(セクトラルアプローチ、国境課税など)の 導入を世界各国に働きかけます。これらが不十分であり、十分なスキームが構築されていない期間中は柔軟な税制措置を行っていくものの、2020年までには このような税制の特別措置を撤廃します。

4.森林と共生できる暮らし


目指す将来像

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【木に囲まれる生活】 2階建ての低層住宅だけでなく、3・4階建ての中層住宅にも木造住宅が普及し、学校・病院・公共の建築物や低層の大型店舗・工場などにも強度や耐火性が高 い木材(大断面集成材構造など)を用いた建築が普及して建築物の木造率は70%を超えるようになります。
家具・建具についても木製率は大幅に向上し、土木・建築用基礎杭、ガードレール・遮音壁など様々な用途に木材が利用されるようになります。

【復活する林業ビジネス】 作業道ネットワークの整備や林業機械の高度利用などにより、林業の労働生産性は2000年の平均値に比べて2050年には5倍程度にのぼる見込みです。
また、木材からなる再生可能な生物由来の資源である木質バイオマスを有効活用する技術を確立し、林地残材は年間900万BDT(Bone Dry Tonne: 絶乾重)以上利用されるようになります。
丸太生産量は5000m³に拡大し、2006年には20.3%程度だった木材自給率は65%を越えて増加していきます。ただし、伐採については成長の低下 した高樹齢の林に限定し、低コストな造林技術による再造林も適切に行っていくため、持続可能な林業ビジネスが成立するようになります。

ステップ

【競争力回復期】 建材として利用できる国産材を最大限利用するために、木材製品に関する規格や規制の見直しを進めます。
今の日本の林業には、森林所有者にとって収益性の観点から間伐・皆伐を行うインセンティブが極めて乏しいのが現状です。その一因として、林業の単位が小さ く効率的な森林経営の実施が困難であるという問題が挙げられます。そこで、森林管理の集約化(事業の共同実施)と補助金等による機械化の推進によって丸太 生産の低コスト化を促進させると共に、小規模林業経営者が森林管理を適切に実施できる森林組合等の林業事業体に森林を長期管理委託あるいは売却し、これに よって森林経営の規模拡大が進むような政策を展開します。
また、高い供給コストと高含水率・不定形のために利用が進んでいない林地残材の利用を促進するため、政府によって林地残材収集システムに必要な機械の開 発、機械投資や残材搬出に対する補助を講じていきます。

【利用拡大期】 公共インフラ建設時に環境への負担が少ないものから優先的に調達する「グリーン調達」の徹底を図ると共に、木材の利用とマテリアルリサイクルに対して固定 資産税の優遇措置や環境税等を導入することで、木材の利用を促進します。
その一方で、木材需要の拡大によって利益中心の無秩序な伐採が発生することを防ぐため、林業のガイドラインを定めて、第三者機関が持続可能な森林経営や環 境に配慮した伐採を行う事業体を認証する制度を確立します。
同時に、木材の主要貿易相手国とも、その認証結果を相互に承認できるような制度にすることで、海外における違法伐採等の抑制にもつなげていきます。また、 国内では森林の高樹齢化・大型化が進んで、新たな林業機械開発が必要となっていくため、大型トラックの走行可能な作業道ネットワークを整備していきます。

【利用確立期】 スギ材の多様な利用方法が確立することで、日本国内の建築木造率・家具木製率は70%程度となっていく見込みです。それと共に環境配慮型国産木材製品の競 争力が世界水準に到達し、海外への国産木材販路が開拓されるよう木材産業を支援していきます。また、この頃にはバイオマス需要の拡大に対する林地残材の供 給は頭打ちとなるため、短伐期バイオマス生産を開始して対応していきます。