ねぇ、貴方は”何”を見ているの?

そんな言葉も感情も全て脱ぎ捨てて、

本能に身体を委ねてしまおう。

2つの影はやがて1つになり、

また夜は更けていく。

「結局僕らは離れられないんだね、愛しい人」

きっとそれも嘘なんでしょう?


使い勝手のいい代用品のつもりだったのに。

与えられるたびに もっと欲しくなってしまって、

もう今のままでは満足できない。

しかし、その言葉を口にしてしまえば、

貴方はきっと消えてしまう。


貴方の唇が紡ぐありきたりで聞き慣れた言葉達。

それだけで、胸の奥が喜びに震えてしまう。

私って本当にどうしようもない女ね。

都合のいいように使われているって、

わかっているのに。


何が最善の選択だったの?

こんなに辛くて悲しくて幸せなのに。

これは間違っていたの?正解だったの?

そんなこと、誰にも分かりはしないわ。

そう、誰にも。


眠る貴方の背中にそっと爪を立ててみた。

赤い線がうかぶ。私がつけた印。

これはきっと抵抗なんでしょうね。

昔と少しも変わらない貴方への?

それとも









だから言ったのに

ねぇ 驚いたでしょう?

笑えばいいじゃない

豪勢な張りぼての虚像に追い縋っている

ちっぽけな実像

滑稽でしょう?

ほら 笑ってよ

なんで何も言わないの?

ショックだった?

幻滅した?失望した?

でもね これが私だよ

これが私なんだよ

これで分かったでしょう?

だからもう帰ってよ

そしてもう二度と近づいて来ないで

一人にしててよ お願いだから

もう嫌なのよ 嫌なの

もういいでしょう?

早く出てってよ

なんで動かないの?

出てってって言ってるの

大丈夫?なにが?

ふざけないで そんな戯言ほざく前に

私の視界から消えてよ

お願いだから 出て言って

あんたなんか 大嫌いよ







この世界はまるで彼女を排除しようとしているように見えた



繰り返される日常に
この子の心が削れていく音が響いていた
私はどうすることもできなかった
私にはまだ力がなかったから…
でも今は違う
今なら この子の願いを叶えられるかもしれない

自分ではこの子を幸せになんて出来ない

そんなこと分かっている

この不恰好で歪で醜い手では

涙を拭うことさえできなくて 

ただ傷つけてしまうだけだから

でもこの薄汚い世界は

この子を幸せは決してしないだろう

それならいっそ 

あの子の望む幸せな世界へと

作り変えてしまおう

汚く淀んだものを一掃して

明るく穏やかで綺麗な世界に

変えてしまおう

そうすればこの子はまた

笑ってくれるだろうか



ー可愛い可愛い 我が愛し子よ

   次に目が覚めたら そこは幸せな世界だから

   それまで 待っていてね



私は暫しの別れ告げ 

彼女を夢の中へと閉じ込めた





彼は後の世 魔王と呼ばれるものとなる。