甘い甘いお菓子で出来た僕と君だけのお城

その最上階のちいさな部屋には豪奢な寝台と椅子が1つ

寝台の上に君は1 死んだようにじっと横になっている

僕はいつものように椅子に腰掛ける

「目を開けて君の綺麗な瞳を見せておくれ」

ぽつりと呟いた声がしんとした部屋の中を回っていく

もちろん君は微動だにしない

君のずっと変わらず あかいままの唇に もう何度口付けたことだろう

僕はとても醜くて王子様に相応しくないから

君は今日も目覚めない

君の色が僕に移って それがとても甘くて

涙が溢れそうだ

もう あれから どれくらい経っただろう

魔女はとっくの昔に倒したというのに

呪いは何1つ解けないまま 時は過ぎていく

僕は醜いまま 君は眠りについたままで








雨が降りしきる薄暗い公園

ブランコしかない小さな公園

そこに腰掛ける女が1


彼は言ったのだ

大事な話があるから


消えかけの街頭が頼りなく照らす中

女は1 ブランコに腰掛けていた


とうの昔に過ぎてしまったことは

時計を見るまでもなく


今まで微動だにしなかった女の口が少し動いた

しかしその言葉は誰にも届くことはない


来ないことは分かっていた

最初から知っていた


雨音響く人1人いない寂れた公園

女は尚もブランコに腰掛けたまま


奇跡は起こらない

それが証明されただけ


肩を震わす女 その表情は分からない

変わらず雨は全てを濡らしていく


叶うはずのない仮初めの幸せ 

泡沫のように弾けて消える

そう 最初から知っていた なのに






大丈夫。私はちゃんと演じられる。

深呼吸を終えると同時に、インターホンが鳴る。

まるで開演のブザーのように。

そして 幕はあがる。


ドアを開くと、あなたがいた。

駆けてきたのだろう。息が乱れている。


必死な形相で詰め寄るあなた。

私は表情を変えずに、台詞を吐く。

私はただこの台本を演じるだけ。

そこに私個人なんて、いらない。


私の台詞を聞き、あなたはこぼれ落ちそうなほど目を見開く。

そう、全て 彼女の台本の通りに。


あなたはどんどん顔を歪めていく。

そして遂には、静かに涙をこぼし始めた。

今まで一度も涙なんてみせなかったのに。

だけど、これでフィナーレ。

そう、最後まで台本通りに。

あなたの涙に観客も涙し、そして幕は閉じた。


扉越しにあなたの嗚咽が聞こえる。

大丈夫。あなたは幸せになれる。

だってあなたは、主人公だもの。

幸せになる運命にあるの。

ただの脇役の私と違って。


「わたし、ちゃんと最後まで演じきれたかしら?」


その小さな呟きに対する答えは、何処からともなく響いてきた小さな拍手の音だった。


ありがとう。最後まで聞いてくれた観客の皆様。

ありがとう。わたしと演じてくれた演者の皆様。


わたしの出番はここまで。

出番が終わった演者は消える定めだもの。

そっと窓辺に腰をかける。

不思議と恐怖はなかった。


それでは皆さん、さようなら。


身体が空にとけた刹那、何故かあなたの顔が見えた気がした。