ペンをとり、彼と彼女の物語を紡いでいく。
あの子を生かす為、彼と彼女を殺す物語を。
彼等には罪はない。ただ、私にとって、彼等よりもあの子の方が大事だった。それだけの話。
私はあの子の為なら何だってする。それが例え自身をも殺すことになろうとも、少しも躊躇うことはない。むしろ喜んで身を捧げよう。
それくらい 、あの子が大事なんだ。
だから私は書き綴る。自らを削りながら最後の作品を。
全ての幕が降りた後の、私と彼と彼女が消えた世界で、あの子は幸せになれるだろうか。
ふと、思う。
聡いあの子の事だ。きっと生かされた事にすぐ気づくだろう。そして、見知らぬ彼と彼女の為に1人涙するだろう。
だが、あの子にはそれを乗り越えられる強さがある。
だから私は。私は。
側から見れば、何処にでもある御伽噺。きっと読み捨てられ、埃をかぶった本棚の端で忘れ去られる事だろう。
それでいいのだ。あの子の初めての願い、生きたいという願いを叶えられるのなら。
振り返ると、彼と彼女がすでに待っていた。
君達には本当に感謝してるよ。
あの子を救ってくれて、ありがとう。
我儘を聞いてくれて、ありがとう。
最期までともにいてくれて、ありがとう。
彼等は笑っていた。泣きそうなほど綺麗に笑っていた。
さあ 行こうか。
私は最後の一文を書き終え、ペンを置き、本を閉じた。