ペンをとり、彼と彼女の物語を紡いでいく。

あの子を生かす為、彼と彼女を殺す物語を。

彼等には罪はない。ただ、私にとって、彼等よりもあの子の方が大事だった。それだけの話。


私はあの子の為なら何だってする。それが例え自身をも殺すことになろうとも、少しも躊躇うことはない。むしろ喜んで身を捧げよう。

それくらい 、あの子が大事なんだ。

だから私は書き綴る。自らを削りながら最後の作品を。


全ての幕が降りた後の、私と彼と彼女が消えた世界で、あの子は幸せになれるだろうか。

ふと、思う。

聡いあの子の事だ。きっと生かされた事にすぐ気づくだろう。そして、見知らぬ彼と彼女の為に1人涙するだろう。

だが、あの子にはそれを乗り越えられる強さがある。

だから私は。私は。


側から見れば、何処にでもある御伽噺。きっと読み捨てられ、埃をかぶった本棚の端で忘れ去られる事だろう。

それでいいのだ。あの子の初めての願い、生きたいという願いを叶えられるのなら。

振り返ると、彼と彼女がすでに待っていた。


君達には本当に感謝してるよ。

あの子を救ってくれて、ありがとう。

我儘を聞いてくれて、ありがとう。

最期までともにいてくれて、ありがとう。


彼等は笑っていた。泣きそうなほど綺麗に笑っていた。

さあ 行こうか。

私は最後の一文を書き終え、ペンを置き、本を閉じた。






生き方を教えてください。

レールの通りに進めなかった私に、どうか教えてください。

自分で考えて作ろうとした道は潰されて、暗闇の中ひとり彷徨い歩いて。

どうすればちゃんと生きてる事になりますか。

このまま歩き続けていればいいんですか。

休んでいいと言われたベンチに腰掛けると休むなと蹴られ、これを飲みなさいと渡された水筒は空っぽで、何を信じればいいですか。

人の足を引っ張ってばかりの何も出来ず自分本位の愚かな私は、ここにいてもいいんですか。

どうすればいいんですか。

出来損ないの私には無理ですか。

こんな気持ちの悪い私は邪魔ですか。

それすらも教えてくれないんですか。

調べても何も出てこないんです。

だから あなたに聞いてるのに。






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優しい人
A:
B:
(敬称略)
 
 
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A:見て。私を、見て。ちゃんと見てよ。ねぇ。

この目は、何の為についてるの?

ほら、見てよ。私のこと。

どんな私でも見てくれるって、言ってたよね。

なのに。そっか。見ないのか。

なら、その目。要らないよね。取っちゃおっか。

嫌なの?どうして?痛いから?

じゃあ、痛くないようにしてあげるよ。

それでいい?だめ?なんで?

目が無いと、生活できないから?

大丈夫。私が君の面倒、ちゃんとみてあげるから。

ずっと側に。そう、約束したもんね。

全部、嘘だったの?

そっか。そっか、そっか。

じゃあ、そうだな。舌、取っちゃおっか。

もう二度と、嘘つけないように。

嫌なの?どうして?ねぇ、どうして?

当たり前って何?私には、分からないよ。

だから、教えて?

ねぇ。教えてくれないの?

そっか。もういいよ。もう、いいよ。

全部、許してあげる。私は、”優しい人”だから。

ねぇ。何か、言いたい事ある?

それで全部?そっか。

じゃあ、死んで。


とても、残念だよ。

君は、君だけは違うって。そう、信じてたのに。



B:どうしてまた殺した?


A:嘘つきは、治らないから。

私みたいに悲しい思いをする人、増やしたく無いから。


B:本当に?


A:ごめん。でも、半分は本当。


B:分かってるよ。


A:ねぇ。


B:何?


A:今日、暇?


B:…分かった。


A:ありがとう。優しいね。


B:だから、これ以上はあげない。


A:分かってる。嘘つきは、嫌いだもんね。


B:大嫌いだよ。


A:知ってる。