筆先からポトリと溢れた落ちた雫は

コップの中にゆっくりと波紋を作る

透明な水をおかしていくひとつの雫

ゆっくりとゆっくりと混ざっていく

私はそれを待つことが出来なかった

それを我慢することが出来なかった

だから置いてあった棒でかき混ぜた

くるりくるりと混ざっていく雫と水 

そのうち水は元の色に戻っていった

飲んだとしても味は変わりなかろう

しかし見えなくともそれはあるのだ

無害ではなく有害となってしまった

花を容易く枯らす事が出来るだろう

そう違うものになってしまったのだ

そしてもう元に戻すことは出来ない

それはまっさらな紙のシワのように

それは割れたガラスの水槽のように

元に過去に戻ることは出来ないのだ




誰をも拒むいばらに囲まれた城。

その閉ざされた塔の最上階に1人の少女が住んでいた。


××が帰ってくるまで、決して扉を開けてはいけないの。」


幼い頃の約束。××と交わした唯一の約束。

彼女は守り続けていた。何年も何百年も。


そんなある日、誰も訪れないはずの城に1つの影が現れた。

ソレはいばらの垣根を超え、塔を登り扉の前にたどり着く。


「今晩は 月が綺麗ですね。」

「あなたは騙されているのですよ。真実を知りたくはないですか?」

「私はただ、あなたとお話ししたいだけです。どうか扉を開けてくれませんか?」


ソレの目的とは一体何なのだろうか。

そして少女は何故ここにいなければならないのか。


【のばらの夢】

 今年冬公開未定


「きっと明日は雨が降るでしょうね。」





ここは何処?

気がついた時、私は見知らぬ廊下を全力で走っていた。

ここは何処?

再度浮かぶ問いかけ。その答えを私は持っていなかった。

ここは、何処?

先の見えない廊下、随所に見かける絢爛な調度品の類。何処ぞのお金持ちが建てたであろう結構な広さの建物らしいと想像できる。とはいうものの電球が古いのかなんなのか辺りはとてもくらい。その為、細部はよく分からなかった。

走る。走る。走る。

そういえば、私は走っていた。

それは何故?

ただ足を動かすだけで精一杯で、考える隙はない。

それは何故?

ゴール見えぬ見知らぬ場所でただ1人走る。

立ち止まってはいけない。進まねばならない。

それは、何故?

考えてはいけない。知ってはいけない。忘れたままでいなくてはいけない。

そうでなければ、アレに捕まってしまう!


そう… 思い出してしまった。


足が止まり、火照ったはずの身体が震えだす。心臓が胸の内側を叩く。心とは裏腹に私の身体は、ゆっくりと後ろを振り返った。

そこには、闇が広がっているだけだった。

何も見えないはずなのに、何も感じないはずなのに。私には分かってしまった。

アレがいる。目の前にアレが、いる。



目を開く。そこにはいつもの景色があった。

重い体を引きずり、イスに腰掛ける。

目を開いた途端、泡のように弾けて消えたアレの存在。その恐怖感だけが生々しく私の身体を這い回っていた。

アレは何だったのだろうか。

思い出しては、いけない。