「福井型18年教育」の行方 教員採用試験との整合性  | ちゅらさんのブログ

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20数年ぶりの福井に感じた新鮮さとと戸惑いを、県外と県内の二つの視点から福井の政治を中心に綴ってみようかと。辛口気味なのはご容赦。

9月6日の福井新聞に、福井の教育に関する興味深い記事が載りました。


教員採用試験に関するもので、これまで小中高、特別支援学校を一括募集していたものを、「小学校」「中学数学」「高校理科」「中高音楽」など、25区分での募集となったようです。


なんでも教員の専門性を高めるという目的のようで、受験生にはおおむね歓迎されているようです。


記事によると、「これまで高校を第一志望に考えていても、小中の免許を持っている場合は、小中高のどこに赴任するかは採用時までわからなかった。」そうです。


今後は、例えば「高校国語」の区分で採用されると、最初から高校で教壇に立つことになり、より専門性を生かした教員人生設計が可能になるとのことでした。


福井県教育委員会では、生まれてから高校までを見通した「福井型18年教育」を掲げ、学校間のつながりを重視した、小中間・中高間での人事交流をおこなってきたようです。


それぞれの教育現場や学習内容を知ることで、より一貫性のある教育を実現するというのが主な目的のようです。


採用試験の変更は方針の転換かと思いきや、「福井型18年教育を実現させるため、校種の垣根を越えた移動はこれまで通り積極的に行い、教員の資質向上につなげる。」という、県教育委員会のコメントが掲載されていました。


ただ福井新聞は、「垣根越す移動と整合性問う声も」と見出しをつけて、福井大学の三好修一郎付属教育実践総合センター長の次のコメントを紹介していました。


「専門性を問いながら、移動は活発に行うという。県教委の真意はまだ読み切れない。」



教育については全くの素人考えで申し訳ないのですが、入り口で専門性を求め、教員人生の中でその幅を広げていくというのは、それなりに理にかなっているように思えます。


新人のうちは自分の得意分野でのびのびと仕事をしてもらい、教員業務に慣れてきたころに新たな職場環境で教員としての視野を広げるというのは、悪くない気がします。


例えば、「高校数学」で採用され、数年高校で教壇を取った方が、中学校に出向いて教育内容や習熟度を把握して高校に戻ることには、それなりに意味があろうかと思います。


逆もまたしかりで、何も免許がない人を教壇に立たせるわけではありませんし、難しいと感じる人は補助教員や副担任として配置しても良いわけで、それほど整合性がとれなくもない気がします。


むしろ、専門分野だけに従事することで教員がマンネリズムに陥る、といった事態を避けられるように思います。


偏見かもしれませんが、民間企業の専門職は日々新たな情報や技術への適応が求められるのですが、教育現場の場合は比較的そうした刺激は少ないように見受けます。


校種間の交流はそうした刺激の要素を持っており、さらに言えば、教師としてのスキルアップの要素を加味することで教員側の意欲の喚起にもつながりそうな気がします。


人材の流動化が進み、即戦力が求められる民間企業とは異なり、教員の場合は長い目で見た人材育成が可能です。


個人的には、より高い資質を持っている人材を採用し、その後様々な職場を経験したり他の教科の免許を取得したりして、スキルアップにつながるような仕組みを作ってもよい気がします。



カギを握るのは、教育委員会の人事能力でしょう。


福井型18年教育」にこだわるあまり、機械的な人事異動が行われるようでは、効果的な運用は難しいと思います。


教員の資質を見極め、本人の希望を加味したうえで、どのような人材に育成するのかまでを見越した人事が必要であろうという気がします。


ただ、福井県の教育委員会がそこまでの視点を持ったうえで採用試験を変更し、「福井型18年教育」との整合性を取っていくのかというと、疑問がないわけではありません。


気になるのは、「福井型18年教育」が、3期目となる西川知事によって掲げられたマニフェストというところです。(2013年2月9日付 福井新聞


政治家の掲げた目標との整合性を取るために、形式的に物事が行われるというのはよくあることで、このケースもその可能性がないとは言い切れないのが悲しいところです。


とりあえず、県のHPの教育委員会のページ には、「福井型18年教育」について明確に示す資料が見当たらないので、このあたりから調整してたらどうかという気がしました。



いずれにしても、教育の主役は子供達であり、そこに主眼を置いた議論がなされていることを期待したいものです。


ちょうど、長野の才教学園での教員の免許問題について取り上げたところだったので、興味深く読んだ記事でした。