私の出産後の喫茶店はというと、本当なら、主人に続けてやって欲しかったのですが、何せ、日本語がダメときているので、とりあえず代わりの人が見つかるまでの間、急遽母が他の店と掛け持ちで手伝ってくれることになりました。
となると、日本語もろくに話せず、自由に行動することの出来ないこの日本で、仕事探しをすることに不安があった主人は、再びイギリスで生活することを選択し、約一ヶ月余りを私とベビちゃんと過ごし、その後、イギリスへ住居と仕事を探しに一人旅立ったのです。
私が思うに、「カルチャーショック」、これが彼の日本を離れる大きな理由の一つではなかったでしょうか。
もともと、日本に興味があって来ているのならまだしも、結婚した相手がたまたまその国出身で、そのツレの希望で何とかなると思い、いざ付いては来たものの、これといって特別な資格もない主人にしてみれば、仕事を探すにしても八方ふさがりになってしまったという訳です。
私も、喫茶店で何とかやっていけるさー、という甘い考えで帰って来たのも悪かったのですが、不況の風が吹きまくる日本の現実は、私達に一層深い喪失感を与えただけでした。
主人のこの時の日本滞在期間は、わずか半年間という結果となりました。
一応、何年間か日本に住むつもりでビザを取って来たはずなのでが...。
まー、彼の気持ちとあの時の状況を考えてみれば、それで良かったのでしょう。
これが、いわゆる国際結婚の難しさというものでしょうか。
こうして主人は、私達を必ずイギリスに呼び戻すことを約束し、それほどいい思い出のなかった日本を後にしたのでした。