さて、母と私があの壁にへばりついているハゲオヤジを見てから、母がそういえばこの家に住んでいた時に、こんなことがよくあったと話し出しました。
その内容はというと、夜中によく頭のハゲタオヤジが母の布団の上に乗っかって、母の顔を覗きに来ていたそうなのです。
ハゲオヤジが母を覗きに来ていたなんて、私にとってその話は初耳でした。
母は何時も夢かと思っていたそうなのですが、そのオヤジはいつも朝方の3時ごろになると消えて行ったそうです。
母は勿論いい気持ちがしなかったと言います。
そりゃー、見ず知らずのハゲオヤジに布団に乗っかられた上に、覗き見されたんじゃ、良い気はしないのも当然です。 それが例え、夢の中だったとしてもです。
しかし、あの壁のシミのハゲオヤジの存在を知ってから、母はあの出来事は夢ではなく、本当にハゲオヤジが夜な夜な壁を抜け出して、母を覗きに来ていたのを知ったのでした。ゴーストの身ではありますが...。
そして、また新たに母から知らされた事実がありました。
それは、この家を手放した夫婦の旦那さんというのが、頭のハゲた方だったというのです。
その方は、私達があの家に住んでいた頃には、既にこの世から去られていたようです。
ということは、もしかしたらあの壁にへばりついているのは、この家の前の持ち主のハゲオヤジさんだったということな訳と、母と二人で顔を見合わせてしまいました。
そうとう、以前の持ち主夫婦は、この家を気に入っていたそうなので、ハゲオヤジさんは亡くなっても、壁にへばり付いてまで、この家に住んでいたかったのでしょうか。
その後、また数年経ってからあの壁を見に行ったら、もうハゲオヤジさんのシミはなくなっていて、普通のなんでもないシミに変わっていました。