パティオライブ/日食なつこ | quarters

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いろんなライブの記録。二丁目の魁カミングアウト・きのホ。・ONIGAWARA・ RAG FAIR・ズボンドズボンなど。

SET LIST

スペクタクル
雨雲と太陽
11年
レッドデータクリーチャー
Red-Light Tower
深夜潜水
座礁人魚
あのデパート
神様お願い抑えきれない衝動がいつまでも抑えきれないままでありますように
水流のロック

非売品少女



18時から屋外のフリーライブということで相当に寒かった。体ずっと震えてたけど、ライブ見たら心まで震えた。オッ、うまいこと言ってしまったな!マジで。

黒いお召し物にもふもふ帽子と襟巻きの日食さん。腕を広げてお客さんを見回す。キーボードを前に着席。

1曲目からスペクタクル来てびっくりした。あたたかな黄色い照明に変わって、朝の、未来の色だと思った。夜で、人工のイルミネーションに彩られた新宿の真ん中、朝日に縁取られた新しい世界とは真逆の場所なのに『世界は更に色鮮やかで君の輪郭もにじませるほど』って声でわたしはわたしの希望が目の前にパッと浮かんだ。光の中に。大好きな人たちのこと。


「とある場所で、あなたたちのことを5時30分からずっと見てました。平日の忙しいところありがとうございます。もしかしたらよろしくない手段で来た人もいるでしょう。それでも来てくれて私はとても嬉しいです。先にプレゼントを頂いてしまいました。新宿という街に渦巻く愛憎をここに映し出していきたいと思います」みたいなご挨拶。
日食さんのライブまだ3回目なんですが、この直截的な物言いはとても信頼できるなって思う。

冬の屋外フリラは初めてだそうです。「岩手で野外でやると死んでしまうので。幸いにも新宿はそこまで寒くなく……とはいえ寒いので、今日は1時間頂いてるんですけど、用意してきた曲が終わったら終わります。 私の曲にもいくつか恋愛の曲があるので恋愛ソング特集で」クリスマスセトリだそうです!わー!雨雲と太陽から。


次、イントロであっこれは堪んないやつ、って音源ではカウントから直で歌入るけど、すぐわかった。「新宿の女の子に似合いそうな曲です。『11年』」
この曲めちゃくちゃ抉ってくるので……わたしは12年だった。すごくすごく好きな曲。日食さんが “新宿の女の子” って言ったのすごくわかるし、胸が苦しくなる。


「ここでちょっと中断させていただいて、この帽子、とあるルートで頂いたんですけどすごく邪魔で。ここで被らなかったらあとどうすればいいのか……欲しい?」もけもけの帽子脱いで、お客さんの希望を募る日食さん。
「……あとで便所来い」って呼びつけるの完全にスケバンだった(笑)

「……『11年早く生まれたかった』と潔く諦められるような恋ばかりではありません」
1音目の衝撃がすごかった。レッドデータクリーチャー。

ここまでの曲全部ライブ初聴きでした。あとはこの後の座礁人魚もだけど。うれしかった。


今夜の待ち合わせが最後になるような人がいないことを願います」Red-Light Tower。
やっぱり最初に浮かぶのは東京タワーだけど、“赤い光の鉄塔” は誰のどこにだってそれ唯一としてあるんだろうなと思った。わたしにも。


「上を見上げて、この丸が水面、その上に見えるビルの明かりが星だと思えば途端にここがどこにいるか分かるでしょう?」深夜潜水。
日食さんにはそんな風に見えていたんだ。首をもたげて見上げて初めて気づいた。ここは夜闇の潜水艦の中。囲む高い高いビルに灯る白い明かりは、本当に星のように思えた。


「私事をお話してもいいですか。実はツアーが一区切りしまして、3時まで打ち上げをしていたら風邪を引いてしまいまして。昨日まで声が出なくて、5日間くらい全く喋らず、本当にここでやっと声を出したという感じで。プロがこんなこと言っちゃ駄目なんですけど。年の瀬、年明けバタバタとして気が抜けた頃に来るので皆様お気をつけください。
そんな日ですが今までライブでやったことない曲をやります。恋愛特集なので。先ほどご紹介にあずかりましたアルバムから、まだツアーでもやったことのない曲です。『座礁人魚』」

最初のアカペラで心臓掴まれた。人魚がその身を捧げる光景を思った。音源で聴くのと全然違う。2Bの後の間奏の高音がもうめちゃくちゃなんだ。めちゃくちゃに響く。
“高熱” から “幸福” って言葉に変わる最後震えた。歌詞知ってるのに、何回も音源聴いてるのに。


「クリスマスが終わればもう一年終わります。帰れる場所、帰れる時に帰ってください。『あのデパート』」曲振りで拍手起こった。
この都会のど真ん中に集まってる人の殆どはここじゃないところにふるさとがある人たちだから、その場所はみんな違っても、同じだって思った。

途中からクリスマスソングが入って、最後は「東京は眠らない街。東京は欲しいものがなんでもある街。東京はこの国で一番大きな街。東京はみんな寂しがる不思議な街」って歌ってくれました。


「あと2曲です。今日初めて日食なつこを見たという人も、このおかしな名前を家に帰って検索してみたらきっといいことがあります。
岩手で23年、東京に出てきて3年、培った感性をぶちまけていきます。寒いから終わったら誰かとくっついて帰りなさい」

神様お願い〜。わたしの中でこの曲クリスマスのイメージだったのでドンピシャでびっくりした。歌の中、何回もまたたく “星” で、ベツレヘムの星がよぎった。日食さんの叩く鍵盤のきらきらした音が、そのまま星のまたたきの音だった。


「折角なのでみんな立ちますか。一緒に歌ってください」水流のロック!このイントロやっぱりはちゃめちゃに強い。
お客さんも今日初めて曲に合わせて手拍子。寒いけど寒くないんだこの時間。サビでパーっと開けていく感じが、この屋外の、上がまんまるに開いたパティオにぴったりだった。



アンコール。「なにが聴きたい?」日食さんの問いかけに三面鏡とかハイウェイとか色んなリクエストが寄せられます。
「お前ら統一性……(笑) 全然聴きたい曲やってなかったね。ごめん。どうしようかな……寒いので動ける曲を。『非売品少女』。これで本当に日食なつこ最後です」

思わず「ヤッター!」って声出ちゃった。超好きなの。無意識に足を肩幅に開いて立ってた。閃光のように音が来るから、ちゃんと正対して受け止められるように。

ラスサビ前のグリッサンド最っ高だった。これが “日食なつこ2017年最後の曲” ということで、ほんとに今日来て良かった。

有史、世界に数え切れないほど音楽がある中で、わたしの2017年6月はこの曲に奮い立たせてもらった。あとDig。この選曲で大体精神状態わかるってもんです。

6月の挑戦は直接的には失敗でした。でもそれが回り回って、わたしの人生はちゃんと動いた。この先、生で『非売品少女』聴くたびわたしはきっとあの初夏とこの冬を思い出す。かじかむ手の感覚と、熱。


「寒い中ありがとうございました。(お客さん)生足もいるが……。また会いましょう」

お客さんから「ぼうしー!」って声が掛かるも、両耳を塞いで聞こえない振りしながら帰る日食さんとてもかわいかった……



いやもうマジで寒かったけど、ぴったり1時間、たっぷり聴けてとても嬉しかったです。
そういえば去年のクリスマスも日食さんのライブ見てた。ハグロック。

ツアーはチケ取れなかったので見送りですが、早めにまたライブ行きます。
幸せなクリスマスをありがとうございました!