うつ病に対するファーストライン、セカンドラインの抗うつ薬の最適な使い方とは? | EBMHのブログ

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うつ病に対するファーストライン、セカンドラインの抗うつ薬の最適な使用戦略とは?

日本で行われた大規模RCTの結果

Optimising first- and second-line treatment strategies for untreated major depressive disorder — the SUN☺D study: a pragmatic, multi-centre, assessor-blinded randomised controlled trial

 2018 Jul 11;16(1):103. doi: 10.1186/s12916-018-1096-5.

https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-018-1096-5

 

 

うつ病に対する抗うつ薬(セルトラリンとミルタザピン)の最適な使い方を追求した研究、

SUN☺D臨床試験の結果が発表されました。

 

当研究室が中心となり国内48施設で2011人の患者様にご協力いただいた臨床研究です。

  • 抗うつ薬(セルトラリン)の開始時には最小用量50㎎で。
  • 3週間で十分よくならないとき(寛解しない)時には継続するよりミルタザピンへのスイッチング

が最適な使用方法であろう、という結果でした。

 

試験開始当時(2010年)日本で認可されていた中で最も効果と忍容性のバランスが取れているという2剤

(セルトラリンとミルタザピン)を使用しており、

国内の施設(病院から個人クリニックまで)という現実的なセッティングで行われました。

実際の臨床に役に立つ研究です。ご協力いただいた皆様お疲れさまでした。

 

詳細は以下のSUN☺D臨床試験のサイトにからの抜粋をご覧ください。
http://ebmh.med.kyoto-u.ac.jp/sund/index.html
 

結果

2010年12月から2015年3月にかけて、日本全国48医療機関にて合計2011人の未治療うつ病エピソードの患者さんにご参加をいただいた(平均年齢43歳、女性54%)。
ファーストライン治療では、970人がセルトラリン50mg群に、1041人がセルトラリン100mg群に割り付けられた。

治療開始から9週間後、両群の抑うつ重症度、副作用の重症度に有意差はなかった。

25週後、両群間に効果、副作用の差はなかった。


ファーストライン治療で3週間後では寛解に至らなかった1646人のうち、551人はセルトラリン継続に、537人がセルトラリンとミルタザピン併用に、558人がミルタザピンへの変薬に割り付けられた。治療開始から9週間後のPHQ9スコアで、併用群は0.99点、変薬群は1.01点、継続群よりも低くなっていた(それぞれp=0.0012)。

併用群と変薬群の間には差がなかった。反応率は継続群、併用群、変薬群で約43%、52%、50%であった。寛解率は25%、36%、32%であった。副作用の重症度に3群間の差はなかった。25週間後、3群間に効果、副作用の差はなくなった。


SUNDは、世界で3番目に大きな抗うつ剤の臨床試験である。

たに発症したうつ病エピソードに対して、初期治療薬としてセルトラリンの投与量のターゲットを100mgとすることは、

50 mgとすることに比して、何の利点もなかった。

3週間後に寛解に達しない場合は、ミルタザピンに変薬、またはセルトラリンにミルタザピンを併用することは、

9週間後の反応率も寛解率も約10%増加した。