Systemic review from Cochrane database
Vaccines for preventing influenza in the elderly
Tom Jefferson, Carlo Di Pietrantonj, Lubna A Al-Ansary, Eliana Ferroni, Sarah Thorning, Roger E Thomas
(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/14651858.CD004876.pub3/full)
コクランレビューから
高齢者においてインフルエンザ予防のためのワクチン
臨床疑問
60代女性、高血圧。去年の冬にインフルエンザワクチンを受けたが、インフルエンザAを発症した。今年もインフルエンザワクチンを受けるかどうか迷っているが、ワクチン経験のある友人から「受けたら風邪症状が出た」と聞いて、効くかどうかわからない上に副作用がでるのでは意味がないのではと思い迷っている。
こういう患者さんがいた場合どうしますか?
PICO
P: 60+一般人(入院していない)
I: インフルエンザワクチン
C: ワクチンを受けない
O1: 流行期内インフルエンザ発症の減少
O2: 副作用(風邪症状を中心にみる)
<この論文の結論>
インフルエンザ症状に対して効果がみえるが、合併症については差がでなかった。ほとんどは質が悪いNon-RCTによって出した結論なので、まだ完全に決まっていない。
エビデンスの妥当性はOK?
1. RCTの系統的レビューか
評価 ( ○ )
コメント:RCTに加え、quasi-RCT, cohort, case-control study, and also surveillance studies for AEと含まれているが、今回の吟味はRCTの結果をみることにした。
2.該当する研究を検索するのに,包括的で詳細な検索を行った記載はあるか
評価 ( ○ ) コメント:CENTRAL, MEDLINE, EMBASE, Web of Scienceなどsearch methodに詳しく記載されている。
3.個々の研究の妥当性は評価されていたか
評価 ( △ ) コメント:risk of biasの評価がを行うと説明していが、解析に入れたRCTはどうかよくわからない。
【出た意見】
ROBのtableもないし、これは×ではないか
4.(平均値や標準偏差のようなサマリーデータではなく)患者個々のデータが分析で使用されていたか
評価 ( × ) コメント:レポーティングされている全体のデータだけを使ったらしい。
全体のコメント: 研究デザインごとに別に扱っているため、それぞれにおいて結論が異なる。
大部分はcohortやcase-control studyである。
治療効果は臨床的に重要?
1.結果は個々の研究間でも一致していたか
評価 ( ⚪︎〜△ ) コメント:ワクチンによってインフルエンザ罹患率が下がったという結果がみえるけど、研究の異質性が強いので。
2. 研究で見られた治療の効果
益Comparison 13. Influenza vaccines versus placebo - RCT - parenteral vaccine
ILI RR = 0.59[0.47, 0.73]
event rate in the control = 0.02; 0.10; 0.50
NNT calculator 3 (http://ebmh.med.kyoto-u.ac.jp/toolbox.html)
NNT = 122[94, 185]; 24[19, 37]; 5[4, 7]
害 Comparison 17. Influenza vaccines versus placebo - RCT - parenteral vaccine - adverse events
Adverse event Fever RR = 1.57[0.92, 2.71]
event rate in the control = 0.05; 0.10; 0.30
NNT calculator 3 (http://ebmh.med.kyoto-u.ac.jp/toolbox.html)
NNH = 35[11, ∞]; 17[6, ∞]; 6[2, ∞]
コメント:
今回の解析はEvent rate in the controlを、益の場合はワクチン受けない群のインフルエンザ発症率、害の場合は副作用の発熱の発生割合にした。発生割合は状況によって変わると考え、3つの仮定値event rate in the control = 0.02; 0.10; 0.50で計算してみた。
【出た意見】インフルエンザの罹患率Eevent rate in the controlによって益は大きく変化する。
0.02の場合はNNTは122だが、インフルエンザのアウトブレイクがあった年では(event rate in the control=0.5とかなると)NNTは5になる。流行度合いによって大きく変わる。
自分の患者への適用はOK?
1.自分の患者はRCTの患者と比較して,RCTの結果を適用できないぐらい異なっているか
コメント:RCTの患者背景が65歳以上で大部分日常生活者で一部老人介護施設などを含んでおり比率的に一般診療に合致
2.RCTの治療は自分の状況で実施可能か
コメント:可能ですが、市販のワクチンの種類と流行のインフルエンザのタイプによって違う。
3.自分の患者が治療から得られるであろう,益と害はどうなりそうか (PEERとNNT・NNH(自分の患者))
コメント:想定よりも予防効果が低く、副作用が高いように感じられる。
4.自分がこれから提供する治療の益と害の両方について,患者の価値観や期待はどうか(LHH)
コメント:一般には予防注射をするとほとんど予防可能という発想からは解離しているように感じられる。
また、患者は肺炎のハイリスクではない。有効性と副作用に関心を持ち、ある程度健康の意識が高いと推測できる。
【発表者の意見】
インフルエンザ罹患率と風邪症状の副作用の結果からみると、ワクチンを受けなくてもいいと考えられるが、インフルエンザ罹患率よりも、入院率、致死率を背景に検討をする方が現実的だと考える。
【出た意見】
インフルエンザの流行度合いevent rate in the controlによって効果は違う。流行した場合は受ける意義はあると思う。
最近の研究が含まれていない。ワクチンのねらったインフルエンザの株と実際に流行った株によって、効果は違うのではないか。
など、様々な意見がでました。