人生と旅・読書 村上春樹感 アメリカ放浪記 -6ページ目

人生と旅・読書 村上春樹感 アメリカ放浪記

人生と読書は切り離せない、体と心のような関係です。人生は旅であり、また、読書も旅です。徒然なるままに書いていきます。コメントお待ちしています。

 

復活とは、死んでいたも同然の状態から、生き返ることを意味する。

身近な例では、疲れていたのが、元気を取り戻すことにも用いられる。

西田俊也作のこの小説では、交通事故に遭い、20年間、14歳から眠り続けた中学生が目を覚まして、高校生になり、中学時代の恋人と再会する物語になっている。

 

タイムトラベラー的な、いや、浦島太郎というべきか、その時代的なギャップと、友達のギャップの中で、悪戦苦闘する様子が、日常の目線で描かれている。好きだった女の子との初デートの日に事故に遭い、再会したら、相手は、バツイチのおばさんになっていた。これは、主人公の心は14歳のままだから、未来へのタイムスリップであり、理解しがたく、つらく、悲しい状況である。然も、父も、認知症を発症し始めている。

 

また、高校に通うことになる主人公は、見た目はオジサンなのに、若い子たちと授業を受けるのは、なかなか勇気がいることで、もちろん、浮いている。親子ほども年齢差があり、文化が違うのである。たとえば、携帯を持ったことがない。CDを聞いたことがない。使うのは、カセットウォークマン。当時の最先端が、完全にレトロ化している。

 

そんな中で、隣のクラスの2年留年した葬儀屋の女の子と仲良くなり、自己再創造のためのアルバイトを、その子の会社で始める。

めでたし、めでたし。といいたいけれど、実は、もう一つのラブストーリーがある。20年前に、デートする予定であった彼女は、親友の妻になり、その後離婚していたが、この僕との絡みで、再び、親友の元夫に戻っていくのである。こちらもハッピーエンドになる。

 

では、いうことないじゃないとなるが、読後のモヤモヤ感が残るのはなぜであろう。読んでいると、現在の学校と、当時の学校の比較により、問題点が浮き彫りにされ、又、老人介護の問題など、日常生活の問題点が写し出されて、単なる恋愛小説ではない、様々な問題を投げかける、社会小説でもある。

 

では、作者は、なぜ、この題名である、「復活の恋人」と命名したのであろうか。主人公は、僕こと青木である。その視点から書かれているからである。とすれば、青木は確かに20年ぶりに復活したのであるが、それでは、題名と一致しない。なぜなら、恋人とは、僕の恋人、つまり、ナイトこと高見小夜子のことでなければ、おかしい。つまり、ナイトは、恋人である僕を失い、僕の親友である笠井と結婚したが、離婚して、精神的におかしくなり、20年ぶりに再会した僕により、20年前の真実を知り、復活していくのである。

 

当然、私は、僕の物語であると思って読んでいた。しかしながら、実は、この物語は、ナイトの物語であったのである。もちろん、僕が20年眠り続けることにより、浦島太郎的な存在から、社会に迎合するのは、たやすいことではない。しかし、それよりも大変なのは、好きだった恋人との不可解な別れと、そして、その恋人の離婚であり、さらに再会による精神的なリハビリテーションを、作者は書きたかったと考えた。

 

であるならば、復活の恋人は、ナイトが主人公であり、主人公と思えた僕こと青木は、そのナイトのナイト(騎士)役であったのである。これは、作者による陰謀、言いすぎならば計画であろう。それに、現実とは、メルヘンの世界とは違う。20年も待った、彼女は、親友に取られて結婚し、精神的に不安定な状態になり、離婚していると、厳しさをこの上なく突き付けてくる。そんなとき、救いの神は、2年留年し、素行不良の女子高校生だった。これが、現実である。目を覚ましたら、とんでもない世界が待っていたのである。

 

私は、この小説は、大変面白く、久しぶりに、引き込まれるものを実感した。社会の時代的な明暗もいたるところで感じられ、風刺的なスパイスも効いていた。さらには、登場人物も全員ハッピーエンドになり、優等生的な小説であった。しかしながら、読後感が、いまだに、すっきりしない。胸のモヤモヤ感が消えない。それは、私の個人的な願望とは、違う結末であろうか。言えることは、楽しみながらも、何かが違う、意識のずれを感じていた。

 

20年のその後

さて、一年が過ぎた。理想的な復活の恋人とは。主人公は、あくまでも、僕。20年後、眠りから覚めた、14歳の心のままの僕。

そして、恋人だった、小夜子ことナイトが、親友と結婚したが、離婚して、僕の前に現れる。ここで、二人は結ばれなければならない。

親友のもとに、小夜子が自分夫気持ちが幻想であったことに気付き、20年間のわだかまりをなくし、再び再婚するというのは、ベストなチョイスであるが、それこそ幻想にすぎない。

 

女の人は、そんな馬鹿は自分に許せない。前を向く生き方、それこそ女の人の特性であり、人類の歴史である。男から言い出した離婚ならともかく、女から言い出した離婚に曇りはない。この点で、この小説の読後感が、モヤモヤとしたものになるのは、避けられない。この小説が、罪を背負い生きていくとは、必ずしも周囲を幸福にするものではないことを、洞察していないで、表面的な、青春小説に成り下がっているのは、寂しい限りである。そこに踏み込んでこそ、真実の愛が見えてくるのであり、人々の共感も得られるのである。

 

冬のソナタという、韓国のドラマがあった。恋人が交通事故に遭い、記憶喪失になり、二人は離れ離れになる。20年後ではなく、その半分くらいで再会するのであるが、二人は愛し合うようになる。というよりも、その気持ちはだれにも止められない。だから、純愛物としての、ドラマが成立していく。しかし、この小説では、その設定が弱い。題名に完璧に負けている。「復活した過去の恋人」である。腰砕けの感が否めない。離婚した障害のなくなった二人に、なぜ、第二の幸せを与えないのか。大人の恋愛を書けないならば、やはり、ただ単なる、腰砕けの青春勘違い小説と言わざるを得ない。

 

 

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