#897 レビュー 『三体』劉慈欣 | えびけんの積読・乱読、できれば精読 & ウイスキー

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超話題のド級のSF小説『三体【電子書籍】[ 劉 慈欣 ]』について

いろいろ伏線をはるのと、主人公が誰なのかをいろいろ考えながら読まないといけないド級のSF小説の第1部

  レビュー

いきなり1960年代の文化大革命から始まるので、SFなのかと思いましたが、このSF作品の深みを与えるためにはどうしても必要な設定だったというのが後になって分かりました。

 

本書は、結構そういう仕掛けが多いようで、それだけに超ド級なSF小説に仕上がっているんだなということが分かりましたし、読みながら途中まで誰が主人公なんだろうか???と考えることもあり、そういった点からも途中で読むのを止めるという人が出るというのも分かるな~と思いながら第1部を読み終えました。


BSテレビ東京の『あの本、読みました?三部作の楽しみ方!『三体』&伊坂幸太郎&小川糸…』にて、翻訳された大森望さんが、この第1部を「警察ミステリ―」と評されていましたが、確かにそういう見方のできるものだと思いますし、第2部以降の侵攻してくる三体人との戦いのための壮大な導入という取り方もできると思います。

 

主人公は、ナノマテリアル開発者の汪淼ともいえるし、文化大革命のときに紅衛兵により科学者の父が見ている前でなぶり殺しにされた天文物理学者の葉文潔かなとも思えるし、警察ミステリ―と言えば、警察官で重要なところで大活躍し、地球に侵攻してくる三体人と戦おうと奮い立たせた史強かなとも思えるようで、私にはなかなか複雑でした。

 

父がなぶり殺しにされた葉文潔は、もう地球を救うには人類ではダメだという考えを抱きます。そんな彼女が、真の目的が異星人の探索と交信の「紅岸基地」で、三体人と交信ができたことから話が大きく進んでいくことになります。

 

彼女は、三体人に地球を正してもらうべく地球文明の情報を送り、のちに知り合った富豪の子で環境問題に心を痛めて同じ考えを持っていたマイク・エヴァンスと出会い、莫大な遺産を相続した彼が、「三体協会(ETO)」の設立、三体世界を体験できる同志創作ツールのVRゲーム「三体」の開発と提供、三体人との交信の継続を行って、現在に話が進んできます。

 

三体人の住む星は、三つの恒星(太陽)が不規則に回るため、比較的に安定した時期と生命が住めなくなるくらいの厳しい時期がいつ来るのか、どれくらいの長さなのかが分からない環境の厳しい星でした。葉文潔の情報提供によって、太陽が一つで安定している地球への移民を決断し、艦隊を派遣することを決めます。

 

話が現在に至り、三体人の仕掛けで科学者が謎の死を遂げるケースが相次ぎ、諸国政府がこの危機に対応を進める中、ナノマテリアル開発者の汪淼は警察官の史強により、三体人と戦うための作戦指令センターに連れられ、ETOの潜入が求められ、史強のサポートを受けながら活躍し、ついに三体人のメッセージと向き合うことになります。

 

三体人は、進行する艦隊を送るとともに、地球人の科学技術の発展を封じ込めるべく、特に基礎研究の科学者に対して、彼らが死んでしまうように、エヴァンスのETOを使って進め、地球人たちの間で科学発展を嫌うキャンペーンを実施します。本書では応用研究、基礎研究と言うのが良く出てきますが、著者は科学のブレイクスルー的な発展のためには、基礎研究が大事だということを伝えたいのかな~なんていうのを感じました。

 

三体人は、地球人の心を挫くべく、自分たちが開発した智子を使って「お前たちは虫けらだ」のメッセージを送りつけます。この智子(智恵のある粒子)を使って、地球の物質構造研究の進展を阻害し、情報収集にあたります。智子の存在をはじめとする圧倒的な科学力を前に汪淼らはそれに大いに落胆しますが、その虫を坂ってとって彼らを勇気づけたのが警察官の史強で、なかなか見どころのシーンだと思います。

 

第2部からは、三体人との心理戦的な戦いがどんな感じで行われるのかが楽しみです。しかし、結構読むの大変だな~

 

『あの本、読みました?』での『三体』が取り上げられた回

 

〈書籍データ〉

『三体』

著 者:劉慈欣(リウ・ツーシン)

訳 者:大森望 光吉さくら ワン・チャイ

発 行:株式会社早川書房

価 格:1,900円(税別)

 2019年7月15日 初版発行

 2019年7月21日 第7版発行

 図書館で借りてきた本のデータ

 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

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