ダンテの生涯、『神曲』の構造の秘密、使われているた言葉の理由などを読む『謎と暗号で読み解く ダンテ『神曲』【電子書籍】[ 村松 真理子 ] 』について
イタリア語の父のダンテや、『神曲』の構造を知る上で重要な”3
”と”1"の意味などを知る1冊。
レビュー
ダンテ・アリギエリの『神曲』を読むための副読本2冊目です。
著者の村松真理子さんは、1963年生まれのイタリア文学者で、ボローニャ大学大学院にも行かれたイタリア文学通な方です。
地獄・煉獄・天国のそれぞれの話の解説をドレの絵などを使いながら展開され、『神曲』を理解できることに加えて印象に残ったことを3つに分けて描きたいと思います。
イタリア語を作ったダンテ⁉
本書によると、ダンテの『神曲』は、イタリアでは、中学校や高校などでは必ず読まされて習う作品なんだそうです。14世紀初めにという700年前に執筆されたものですが、その9割が今のイタリア人にも通じるんだそうです。日本だと元寇が終わった鎌倉末期の頃に書かれたものを今の人が普通に読むことなどできないので、本当に驚きです。
理由としては、ダンテが『神曲』をラテン語ではなく、当時のイタリア半島の人たちが話している言葉「俗語(のちのイタリア語)」で執筆したことで、その当時の学者ではない人たちも分かる作品であったというダンテの選択と、イタリア半島では統一国家が生まれず、その分断された状態の中で書き言葉の共通性が高められた結果、16世紀のピエトロ・ボンベが主張した古典主義により、ダンテが用いた俗語のトスカーナ語が共通語のモデルとして規定され、19世紀のイタリア半島の政治的統合によるリソルジメント運動の過程で、ダンテがイタリア語の父として扱われるようになり、イタリアの学校で学ばれるべき古典として『神曲』が位置づけられているんだそうです。
イタリアでは、『神曲』は生きた古典と言われるものであることが分かります。
三位一体 ”3” ”1”という数字
そんなダンテの『神曲』ですが、暗号と謎に満ちているそうです。キリスト教と言えば「三位一体」で、中世人にとって、”3”と”1”は意味深い数字なんだそうです。『神曲』は。全部で100篇の詩からなり、それが「地獄」「煉獄」「天国」の3つに分かれ、それぞれが33篇の歌で構成され、のこり1篇は全体のイントロダクションとしての詩で、合わせて100篇の100というのも「丸い数」として重要なんだそうです。また100篇の歌も、すべて3行ずつの脚韻で整えられ、3行ずつのまとまりで、1行が11音節でなりたつので、33音節が一塊になります。
”3”と”1”のオンパレードです。
この”3”というのが、キリスト教のイースターでキリストが死の3日後に蘇ったことに起因しているんだそうです。
最も読まれているのは地獄篇
ダンテの『神曲』の「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」でもっとも読まれているのは何か?
著者がそれぞれを特徴的に表すと
地獄篇:暗黒の深淵での酷い苦痛や恐怖がドラマチックに描かれている世界
煉獄篇:魂たちがいつか赦される希望を抱きながら薄明かりの中で苦しみ耐える世界
天国篇:しばしば神学講義の様相を呈する光り輝く世界。
で、やはり「地獄篇」なんだそうです。今でも、上野の国立西洋美術館にあるロダンの大作「地獄の門」や、永井豪先生の「魔王ダンテ」、世界的ベストセラー作家ダン・ブラウンの『インフェルノ』などに「地獄篇」の影響が表れているそうです。
夏目漱石や森鴎外も読んでいたそうで、ダンテのこの作品を日本語では『神曲』としたのは森鴎外とのことで、明治の文豪たちも『神曲』を読みインスピレーションを得ていたのではないかと思うと、改めて読んでみなければと思わせてくれる1冊でした。
〈書籍データ〉
『謎と暗号で読み解くダンテ『神曲』』
著 者:村松真理子
発 行:株式会社KADOKAWA
価 格:781円(税別)
2013年11月28日 初版発行
図書館で借りた本のデータです