#722 レビュー Eテレ『理想的本箱「人にやさしくなりたい時に読む本」』 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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理想的本箱 君だけのブックガイド - NHK』の定時放送7回目は「「人にやさしくなりたい時に読む本」 - 理想的本箱 君だけのブックガイド - NHK」です。

マイノリティーになることで分かることや、人や物に触れるってことに考えさせられる本など

 

(NHKの『「人にやさしくなりたい時に読む本」 - 理想的本箱 君だけのブックガイド - NHK』の3冊(C)NHK)

  人にやさしくなりたい時に

ブックディレクターの幅允孝さんが選書したのは、以下の3冊です。

    

1冊目:『サード・キッチン』白尾悠

2冊目:『手の論理』伊藤亜紗

3冊目:『えーえんとくちから』笹井宏之

1冊目:『サード・キッチン』白尾悠

(NHKの『「人にやさしくなりたい時に読む本』より1冊目(C)NHK)

 

幅允孝さんによると

世界のありようを

直視し考え続ける

と、この本のことを評されていました。

 

著者の白尾悠さんは、神奈川県生まれ東京育ちの小説家、アメリカに留学された経験のある方。

 

本書は、繊細な心で差別を嗅ぎ分けながら異国で大学生活を送る、心優しきマイノリ ティたちが主役の小説とのことです。

 

(NHKの『「人にやさしくなりたい時に読む本』のサード・キッチンの風景(C)NHK)

映像の帯による紹介では、留学先のアメリカの大学で、うまく英語を使えずにコミュニケーションをとれなくてマイノリティ感を味わっていた主人公が、国籍や経済状況の異なる学生たちが集うサード・キッチンで、みなと食卓を囲みながら、そこでメディアによって刷り込まれてしまった「日本の女性は男性を立てる」などのステレオタイプや、強者の先進国側が他の文化を先進国が植民地を扱うかのように、他国の文化を自分にとって都合のいいように解釈して使うといった「カルチュラル・アプロ―プリエーション(文化の盗用)」についてを考える契機を与えるような感じで紹介されていました。

 

紹介の後に、司書担当の太田緑ロランスさんも、「アンコンシャス・バイアス(無自覚の思い込み・偏見)」というのをおっしゃられていました。私も聴覚障がい者の入所施設で研修で3週間住み込んだ時に、手話がコミュニケーションの世界でそれがほとんどできない自分がマイノリティの体験をすることがありました。そこで感じたことが普段気が付かない「アンコンシャス・バイアス」について感じて考える契機があったことを思い出しました。

 

2冊目:『手の論理』伊藤亜紗

(NHKの『「人にやさしくなりたい時に読む本』より2冊目(C)NHK)

 

本書について、幅允孝さんによると

接触するときに生まれる人間関係

と評されています。

 

著者の伊藤亜紗(1979~)さんは、東京工業大学の科学技術創成研究院未来の人類研究センター長を務められ、美学者とのことです。

 

美学者、「美学」を研究対象としている学者ということなんでしょうか、私には、どんな研究をされているのかなと作品以上にそちらに興味が沸いてしまう方です。

 

本書は、人が人に「さわる」「ふれる」時、そこにはどんなコミュニケーション があるのか。そこから、やさしさについて考える論考とのことです。

(NHKの『「人にやさしくなりたい時に読む本』より英語の”touch”は、日本語では

「ふれる」と「さわる」(C)NHK)

 

映像の帯では、英単語の”touch”は、日本語では「さわる」と「ふれる」があり、「ふれる」は

相互的、「さわる」は一方的。だからといって「さわる」が冷たいものというわけではなく、医者の「蝕診」のような「さわる」もあるし、貴重な器などを愛おしむ「ふれる」ということもあると、接触することによって生じる関係性を考えさせられる1冊として紹介されていました。


 

3冊目:『えーえんとくちから』笹井宏之

(NHKの『「人にやさしくなりたい時に読む本』より3冊目(C)NHK)

 

本書について、幅允孝さんによると

口の中で転がしつづけたい

飴玉のような甘さと清らかさ

と評されています。

 

著者の笹井宏之(1982~2009)さんは、佐賀県生まれの歌人で、その将来を嘱望されるもインフルエンザによる心臓まひで逝去されてしまった方です。

 

本書は、早世した歌人が紡いだみずみずしい短歌集。不思議な甘さと、読んで いいると心静かになる清らかさがあるとのことです。

 

映像の帯では、その短歌集に収められている短歌のいくつかを映像で合わせてその世界観を見せる形で紹介されていました。

 

確かにとてもみずみずしい感じのする歌であふれていました。若さ溢れる感じのする短歌集な感想を抱きました。

 

多様性や寛容といったことを考える時に「サード・キッチン」は興味深い1冊なんではないかと思い、今回の3冊で最も印象に残りました。

 

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