#709 レビュー 『源氏物語あさきゆめみし 2』大和和紀 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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引き続き、紫式部の『源氏物語』のマンガ『あさきゆめみし(2)』を、今年の大河『光る君へ』に合わせて再読

政敵右大臣が入内させるつもりの娘に手を出してしまい、それが発覚し、自ら都落ちを選択するが、天皇のおかげで返り咲くという浮沈激しき第2巻


  レビュー

第2巻は、光源氏のその恋愛遍歴が生み出した浮沈激しき人生を描いたものです。

 

第2巻で登場する女性と光源氏の関係

弘徽殿の女御Z(太后):朱雀帝の母。桐壷院の正妻で桐壷の更衣、藤壺、光源氏らに敵対心を燃やす。右大臣家の娘で朧月夜(六の君)の姉

朧月夜(六の君):右大臣家の娘、弘徽殿の女御の妹。朱雀帝が入内を望むも、光源氏との恋中でなかなか本人が踏ん切りつかず、光源氏との仲を続けて・・・

六条の御息所:第1巻に続いて光源氏との仲に苦しみ、他の光源氏との恋中の者たちにも激しい嫉妬を抱き苦しむが、それゆえに娘の伊勢の斎宮に同行することを決める。

斎宮の姫君(秋好中宮):六条の御息所と前の故春宮との間の娘で、朱雀帝の斎宮として伊勢へ

葵の上:光源氏の正妻で、子を身ごもり、夕霧を生むが、生霊化した六条の御息所に憑りつかれて命を落とすことに

紫の上:1巻で光源氏に引き取られた幼女が、素晴らしく美しく育ち、ついに光源氏の妻に

藤壺の宮(女御・中宮):父の桐壷院も亡くなったので、思いを抑えきれずに光源氏が迫るが、光源氏との間の子だが、桐壷院の子としてい春宮(のちの冷泉帝)を守るために尼になる

花散里:父の桐壷帝の妃の麗景殿の女御の妹で、その素朴な分に気に心休まる尊大として光源氏が思いを寄せて恋仲に

明石の上:光源氏が都落ちして須磨流浪中に、明石の入道に献上されることとなる女性、恋仲に落ち、二人の間に娘が生まれるが、光源氏は二人を残して都に戻る。

 

第2巻について

引き続きの恋愛編劇が続きます。

 

大きな変化としては、政治の世界における浮沈と、正妻である葵の上の死と次の実質的正妻の紫の上との男女の関係が挙げられます。

 

政治の浮沈として、陰りの始まりは父の桐壷院が亡くなったことでした。次の天皇の朱雀帝は右大臣の娘の弘徽殿の女御の子なので、右大臣は外戚の立場となります。光源氏は父の後ろ盾を失います。

 

そして決定打となったのが、その政敵右大臣家の娘の六の君(朧月夜)との恋仲が、右大臣にその現場を抑えられてしまったことでした。右大臣家は朱雀帝にこの六の君を入内させようと、朱雀帝も六の君の入内を待っていました。ただ、光源氏との関係が噂になってしまったので、女御としてでなく低い位の尚侍での入内となり、不満を抱える中での不義密通現場の発見となってしまいました。

 

光源氏はこの件で官位はく奪&流罪という形で政治生命を奪われてしまう前に、自ら須磨に隠遁することを決めます。右大臣家が外戚としての地位を確立してしまった中、いつ許されるか分からない中での隠遁です。

 

こんなことを繰り広げる中、光源氏の女性関係についていろいろ変化が、一つ目は、相変わらずギクシャクしている正妻の葵の上との間に男の子(夕霧)が生まれます。ただこのときそのことを知った六条の御息所がその激しい嫉妬心から生霊化し、葵の上に死をもたらします。

 

不義の恋の藤壺とは、父の桐壷帝が亡くなったことを受けて、光源氏は抑えられない思いから、関係を迫りますが、藤壺も光源氏が好きですが、桐壷帝を裏切りたくない思いや春宮(のちの冷泉帝)を守るためと、ついに尼となります。ここで一つ関係の区切りがつきます。

 

その藤壺を重ねて育てた紫の上は、大変美しく育ち、ついに我慢できなくなった光源氏は紫の上と男女の仲となります。兄と慕っていた紫の上には大変ショックなことでしたが、二人は生涯過ごす仲となり、葵の上死後は、実質的な正妻のような立場になります。しかし、それは紫の上が、生涯を通じて光源氏の女関係に悩んでいくことになります。

 

須磨に隠遁する光源氏ですが、亡き父桐壷帝が現れ、明石に行き、そこで明石の入道の世話になり、彼から娘の明石の上が献上されることになります。字もきれいで教養もある明石の上ですが、光源氏がいつかは京に戻るから、恋中にはならないようにつとめるも、結ばれてしまい、二人の間に娘が生まれることになりますが、やはり光源氏に置いて行かれることになります。

 

隠遁している間に、右大臣が亡くなり、朱雀帝は目の病気に苦しみ、光源氏の罪をゆるして復帰します。朱雀帝は譲位してついに藤壺と光源氏との間の不義密通関係の子であった春宮が冷泉帝として即位し、光源氏は内大臣として支えることになり、見事な復活を果たします。

 

父の桐壷帝にしろ、兄弟の朱雀帝にしろ、どちらも入内してきた人を光源氏がものにしてしまったのに、その関係をわかっていながら、それを飲み込んで、桐壷帝は藤壺を、朱雀帝は六の君(朧月夜)を愛するという懐の深さと、光源氏のとにもかくにも愛に生きるためなら、周りのことは考えない生き方に驚きを感じる第2巻でした。

 

〈書籍データ〉

『あさきゆめみし ②』

著 者:大和和紀

発 行:株式会社講談社

価 格:660円+税

 2001年8月3日 第1刷発行

 2019年4月2日 第51刷発行

 講談社漫画文庫 や1-29

 
 
 
 

 

 

 

 

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