『理想的本箱 君だけのブックガイド - NHK』の定時放送4回目は「「ひとりぼっちの孤独を感じた時に読む本」」です。
孤独を愉しむ。孤独を受け容れる。孤独や寂しさと折り合いをつけるなどを考える契機となるような本との出会い
(NHKの『「ひとりぼっちの孤独を感じた時に読む本」 - 理想的本箱 君だけのブックガイド - NHK』(C)NHK)
「ひとりぼっちの孤独を感じたときに読む本」
ブックディレクターの幅允孝さんが選書したのは、以下の3冊です。
1冊目:『ひとりたのしむ』熊谷守一
2冊目:『ここに素敵なものがある』リチャード・ブローティガン
3冊目:『Sunny』松本大洋
1冊目:『ひとりたのしむ』熊谷守一
(NHKの『ひとりぼっちの孤独を感じたときに読む本』より1冊目(C)NHK)
ひとりたのしむ―熊谷守一画文集 Amazon
幅允孝さんによると
孤独の果てに辿り着いた
画家の純潔な画と言葉
と、この本のことを評されていました。
著者の熊谷守一(1880~1977)さんは、97歳と長生きされた方で、東京美術学校(東京芸大の前身)の西洋画家専科を首席卒業された方、生涯が順風満帆とはいかず、画家として自信に納得がいかず、食えない時期が長く、60・70代でようやく評価されるようになったそうです。文化勲章の内示にも辞退するなど静かに暮らし、その風貌などからも「画壇の仙人」などと呼ばれたそうです。
映像の帯による紹介は、画文集とあるとおり、熊谷守一の画とその文章で構成されています。
”獨楽”として、孤独を愉しみ、その孤独の時間を自らが納得する絵を描くために使うこと。たとえば、蟻の絵なら蟻がどの足から一歩目を出すのかを自らの観察で知って初めて書くように、独りを楽しみ、納得する絵を描くスタイルがそういった時間の使い方、孤独の有用性を感じることができました。
2冊目:『ここに素敵なものがある』リチャード・ブローティガン
(NHKの『ひとりぼっちの孤独を感じたときに読む本』より2冊目(C)NHK)
ここに素敵なものがある Amazon
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本書について、幅允孝さんによると
ささやかに吐き出された
孤独の言葉が優しく誰かを包む
と評されています。
著者のリチャード・ブローティガン(1935~1984)さんは、父親がおらず、感情が不安定な母親のもとで貧しい家庭で育った方で、21歳でビートジェネレーション(アメリカの物資文明に反抗し、既成概念にとらわれない世代)の影響を受け、職を転々としながら、ひとり孤独に執筆活動をした作家・詩人の方です。
本書を紹介する映像の帯は、この作品からイメージするドラマで、味わう形でした。
映像との関係もあるかもしれませんが、確かに、ささやかに吐き出されるという感じで、その孤独に激しく落ち込むというような感じではなく、じわじわとその孤独を受け容れていく様のような感じがしました。
孤独をあえて味わいたいときにいいのかもしれないのではないかと思います。
3冊目:『Sunny』松本大洋
(NHKの『ひとりぼっちの孤独を感じたときに読む本』より3冊目(C)NHK)
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本書について、幅允孝さんによると
子供たちが孤独や寂しさと
折り合いをつける純真さと救いの物語
と評されています。
著者の松本大洋(1967~)さんは、映画化された卓球漫画『ピンポン』などでおなじみの漫画家、私もスピリッツで読んでいました。その松本大洋さんは児童養護施設に居たことがあるそうで、その実体験をもとに描かれたのがこの作品だそうです。
本書について、漫画家デビューした頃から書こうという構想があったそうです、しかしいざ描こうとするとなかなか描けず、20年たち、ここで描かなければとの思いで書いたと紹介されていました。
映像の帯による紹介は、舞台となる児童養護施設で暮らす子ども達の通う小学校の授業参観を児童養護施設の職員たちがそれぞれの学年の子ども達の所に回っていくのと、来てくれたことに反応する子ども達の様子が描かれていました。
児童養護施設の子ども達が、父兄参観で自分たちには誰も来てくれないという寂しい思いをさせないように職員たちが回り、そのことに興奮気味に反応する子どもという風に、子ども達には孤独や寂しさがあるとはいえ、支える職員との関係から折り合いをつけていく様子を味わっていく作品なんだろうなと思いました。
私としては、一番目の熊谷守一先生の『ひとりたのしむ』が、孤独を積極的に見つめ直すというか、自分が自分自身や描こうとするものに対して向き合うための時間として活用するところに大変興味が沸きました。