#694 レビュー 『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝』-3か月でマスターする世界史 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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3か月でマスターする世界史 - NHK』の第5・6回は中国について

中国の各王朝とその北と西に広がる遊牧民族・遊牧国家との関係を知る第5回

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』(C)NHK)

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  多極の共存 遊牧国家と中華王朝

第5回から、中国の歴史見る回となっています。ゲストは、京大の東洋史の古松崇志教授で、タイトルにもあるとおり各年代の中華王朝とその北と西に広がる遊牧民族による国家との関係を見ていくものでした。

 

今回はモンゴル成立までの1000年間の歴史を見るものです。

 

ナビゲーターの岡本隆司先生のよると今回のポイントは、以下の2点。

    

   ①遊牧国家が中華王朝に与えた影響

   ②両者の共存は、どう実現したのか?

 

中華王朝と遊牧民との関係についての図です。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の中国と遊牧民族との関係性(C)NHK)

 

中華王朝のエリアとしては、寒冷・乾燥地帯の中原(華北)と温暖・湿潤の江南(華中・華南)の2つに分かれ、中元の北側の草原地帯に遊牧民が住み、この遊牧民が北側から中華世界に攻め寄せるという1000年間に繰り返される歴史を見ていくことになります。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の各中華王朝と遊牧民族との関係性(C)NHK)

 

●第1ラウンド 秦・漢王朝 vs 匈奴

前3世紀ごろ草原地帯に広がった遊牧民族国家匈奴、中華世界を初統一を果たした秦の始皇帝もその侵攻に手を焼いて、万里の長城を築くなどしますがその圧政で短命に終わります。

 

次の漢王朝も匈奴の馬による騎馬隊で劣勢に立たされる中、武帝は、西側のオアシス都市群のところにいる汗血馬に目をつけ、シルクとの交換にという交易で、この優秀な馬を手に入れます。これがシルクロードの始まりとなります。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の前漢とオアシス都市群とのシルクロードでの交易(C)NHK)

この馬で、優秀な騎馬隊を組織して、匈奴を圧倒することができました。

 

古松崇志先生によると、この匈奴の時点で遊牧国家としての形が出来上がっていたそうで、モンゴル国アルハンガイ県で見つかった遺跡では、定住民の生活跡が発見され、商業民もいるなど複合的な連合体の遊牧国家を形成しているとのことです。

 

●第2ラウンド 7世紀 唐王朝 VS 突厥

この第2ラウンドの前史として、中原(華北)に興った北魏王朝の説明がなされます。この王朝は遊牧民鮮卑の国家で、彼らが草原地帯から中華世界に進出したのには、ユーラシア大陸での寒冷化が影響しています(ヨーロッパ世界でゲルマン人が大移動したのと同じです)。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の唐と突厥(C)NHK)

唐王朝の創始者も北魏王朝を建てた鮮卑族出身です。そして草原地帯に現れたのが、トルコ系遊牧民族の突厥でした。

 

唐は一時期、突厥の属国になるなどしましたが、その後7世紀半ば~後半にかけて、その突厥のエリアも領土にします。

 

西方に広がった唐で、シルクロード交易を握ったのがオアシス都市群の支配者のイラン系のソグド人でした。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』のソグド人(C)NHK)

彼らは、商業民として資金を持ち、交易で各地を巡るので情報を持ち、交易隊の防衛のために軍事センスもありと、万能な民族で、唐王朝でも政権ブレインとして活動したそうです。

 

唐王朝の支配の特徴として、中原・江南の中華世界他家でなく北から西域に広がる草原地帯も領土としていたので、羈縻政策という方法で統治します。この羈縻とは、馬や牛を緩くつなぎとめることで、現地遊牧民に一定の支配権を許すという統治方法でした。

 

広大な領土を限られた人数で治める意味では有効な政策でしたが、この方法が裏目に出たのが8世紀中ごろの安禄山らによって起こされる安史の乱(755~763)で、この乱に苦しむ唐に代わって鎮圧したのが唐の北側の草原地帯に広がる遊牧国家のウイグルでした。

 

●第3ラウンド 10世紀 北宋王朝 VS 契丹(遼)

日本でも宋銭が有名ですが、貨幣経済の本格導入で経済発展著しい北宋とその北の草原地帯に広がる遊牧国家の契丹についてです。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の1004年に北宋に攻め込んだ契丹(C)NHK)

 

1004年に契丹は北宋の首都開封近くにまで攻め込みます。ここで北宋は戦うではなくて、共存するという方法をとります。

 

それが澶淵の盟という条約です。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の1004年の澶淵の盟(C)NHK)

北宋は、遊牧国家の契丹(遼)に毎年大量の銀や絹を贈ることで、お互いの国境を遵守するという内容のものです。番組では経済力による共存体制と紹介されていましたが、この見方はうーーーんです。

 

いわゆる、契丹(遼)が北宋の大量の銀や絹に対して何かを交換するわけではなく、代わりに北宋国内に攻め込まないだけというような感じに見えて、みかじめ料のようなものともみえるもので、共存と言っていいのやらというところです。

 

歴史の見方 ディープトーク「遊牧民と仏教」

仏教というと、インド→中国→朝鮮半島→日本というルートを思い浮かべますが、インドから中国に仏教をもたらしたのは、遊牧民族の鮮卑族による北魏王朝によるものだそうで、遊牧民のおかげで日本にまで仏教が伝わったという見方です。

(NHKの『第5回 多極の共存 遊牧国家と中華王朝 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の北魏による仏教の導入(C)NHK)

 

寒冷化に伴い、草原地帯から中原に進出した北魏は、西域にいた仏教教団を中原世界に移動させます。

 

この仏教の導入について、古松先生によると、仏教が、「出自、生業、性別を問わず誰もを救う」という非常にユニバーサルな性格であることが大きかったとか開設されていました。

 

ちなみにムックも発売されています。

 

 

 

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