#693 レビュー『ギリシア喜劇案内 ギリシア喜劇全集別巻』 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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ギリシア喜劇とは何なのかを理解するためにその案内として『ギリシア喜劇全集(別巻) ギリシア喜劇案内 [ 久保田忠利 ] 』を読みました。

ギリシア悲劇があるから喜劇がある!
長引くペロポネソス戦争もギリシア喜劇には重要な要素と分かります。

 

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  内容やレビュー

ギリシア悲劇を読むうちに、ギリシア喜劇の存在を知りました。ギリシア喜劇はギリシア悲劇の引用や作者の悲劇詩人をネタにするというそうなので、まずはギリシア悲劇を読み終えてから喜劇に挑もうとして、読んだのが『ギリシア喜劇全集(別巻) ギリシア喜劇案内 [ 久保田忠利 ] 』です。

 

本書の構成は以下の通りです。

    
  • 笑いの系譜
  • アリストパネースとその時代
  • メナンドロスとその時代
  • ギリシア悲劇のはじまり
  • ギリシア喜劇の上演形式
  • ギリシア喜劇の韻律と構造
  • 壷絵で見るギリシア喜劇
  • ギリシア喜劇とジェンダー
  • ギリシア喜劇とローマ喜劇
  • アリストパネースと喜劇と狂言
  • ギリシア喜劇年表

喜劇作品としてある程度形がしっかりとして残っているのは、アリストパネースとメナンドロスの二人だけで。アリストパネースは古喜劇の代表、メナンドロスは新喜劇の代表にあたります。

 

『対比列伝』を書いたプルタルコスによると、二人の言葉遣いの比較について

  ・アリストパネース:粗野で低俗、対照語法、同一語尾、ダジャレといった言葉遊びで無教養な大衆を喜ばせるタイプ

  ・メナンドロス  :優雅で洗練され、あらゆる感情を適合する滑らかな文体で教養人士に受け入れられるタイプ

 

と評し、メナンドロスの方を高く評価しているんだそうです。

 

本書で改めて再確認できたことは、ギリシア喜劇はギリシア悲劇を知っておかなければ楽しむことが難しいことでした。ギリシア悲劇が先行する形で、ホメロスらの英雄叙事詩→合唱抒情詩→悲劇と発展し、大ディオニューシア祭などで、コンテスト形式で上演されている中、悲劇という思い話題だけでなく、やはり笑いもということで喜劇への要望も高まり、悲劇に送れる形とはいえ、大ディオニューシア祭でコンテストで争われるようになるという、「はじめに悲劇ありき」ということが分かります。

 

アリストパネースの古喜劇、時の権力者への批判や、アイスキュロス・ソポクレス・エウリピデスのギリシア悲劇三大詩人をはじめとする悲劇詩人の作品の引用や詩人いじり、ソフィストのソクラテスをいじるなどかなり知的センスを必要としながらも、低俗卑猥で性的な表現などを用いて笑わせます。

 

また、アリストパネースの喜劇は途中で自らの考えを演者に述べさせるということも行っているのが悲劇とかなり異なるところです。自分を評価するように求めたり、先の先品で評価されなかったことについて不満を表明したりなど、悲劇とは展開が大きく異なり、なかなか珍しい演劇ではないかと思います。

 

ただ、アリストパネースは、長引き疲弊していくこととなるペロポネソス戦争下のアテナイにおいて、戦争なんてやめてしまうべきたという反戦的な立場で、時の主戦論者を喜劇のネタする劇が多いため、後世においては、特定の時代と場所でしか通用しないためにあまり顧みられなかったようです。

 

一方の新喜劇のメナンドロスは、プルタルコスも評価しているように、人生のあらゆる面でも通用する笑いとして、古代においては、エジプトのパピルス文書でも、ギリシア悲劇のエウリピデスに続いて多くの引用が見つかったり、ローマ喜劇にもつながっていくなどの任期があったそうです。

 

内容としては、韻律などはちんぷんかんぷんなので飛ばし読みですが、喜劇の成立背景、アリストパネースとメナンドロスの特徴をつかんで、これからギリシア喜劇を読み進めたいと思います。

 

『ギリシア喜劇案内 ギリシア悲劇全集別巻』

編 者:久保田忠利、中務哲郎

発 行:株式会社岩波書店

価 格:5,000円(税別)

  2008年11月26日 第1刷発行

図書館で借りてきた本のデータです。

 
 
 
 

 

 

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