#683 レビュー 『第4回 イスラム拡大の秘密』-3か月でマスターする世界史 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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4月から始まった『3か月でマスターする世界史 - NHK』の「第4回 イスラム 拡大の秘密 - 3か月でマスターする世界史 - NHK」についてのレビュー

日本人にはなじみが薄いイスラム教についてその誕生と拡大の秘密をアジアの視点で考える。

(NHKの『第4回 イスラム 拡大の秘密 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』(C)NHK)

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  イスラム教の成立とその拡大の秘密を探る

第3、4回は、世界宗教をテーマにするということで、ゲストには東大で西アジア史を担当している守川知子先生です。前回は、アジア(オリエント)で発生した一神教的な雰囲気もあるゾロアスター教から、一神教の民族宗教のユダヤ教、一神教の世界宗教キリスト教への変遷を説く回でしたが、今回はその次のアジア(オリエント)で発生した一神教イスラム教についてです。

 

ナビゲーターの岡本隆司先生のよると今回のポイントは、以下の2点。

    

   ①アジアから見るイスラム教

   ②イスラム教拡大の理由

私たち日本人にとっては、非常に厳格なイメージですが、西アジア史を教える守川知子先生によると、当時の最先端であったことと、臨機応変でゆるやかであったことから広がったということで、日本で広まるイメージとは結構異なる感じです。

(NHKの『第4回 イスラム 拡大の秘密 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』の7世紀の状況(C)NHK)

7世紀に東ローマ(ビザンツ帝国)とササン朝ペルシアが戦闘状態となり、その結果陸路のシルクロードが機能しなくなり、紅海ルートやアラビア半島ルートでササン朝ペルシアをカットする形での交易形態となり、その結果とメッカが交易拠点として繁栄することになります。

 

●イスラム教の誕生

この商人たちが集まるメッカで、生まれたのがムハンマドによるイスラム教でした。

610年ごろに、メッカのヒラ―山にて、ムハンマドが天使ガブリエルから神の啓示を受け、「神の前ではすべての人間は平等である」と説き、民族や家族関係を越えたウンマ(共同体)を主張しますが、当時の人たちから迫害を受けてメディナに移ります。

 

その後、630年にメッカを占領し、神殿の偶像を破壊、アラビア半島統一を果たし、632年にムハンマドが亡くなるという流れが説明されます。

 

●イスラム教が政教一致はなのはなぜ?

イスラム教の聖典『コーラン』において、例えば「利子をとるのはよろしくないと神が言っている」と定められ、このコーランで細かくいろいろ定められていることから、法体系となっていき政教一致という形になるという説明でした。

その理由としては、ムハンマドもメッカの商人だったことが大きいようです。交易で様々な地域の人、民族と交渉を行い契約を結んで履行するには、内容をしっかり決めておく必要があります。それがこの『コーラン』の日常生活にも及ぶような細かい規定に大きな影響を与えているということになるんだと思います。

 

●ムハンマドの時代以降、イスラム教が広がった理由は?

イスラムには若い人たちも結構入信咲いたそうですが、その理由がウンマ(共同体)に入った方がメリットが大きかったからだそうです。

 

戦闘での戦利品について、5分の1はムハンマドのもの(死後は国家の者)、残りの5分の4は戦いに従事した人たちで山分け

 

というような利益が人々を惹きつける上で大きい要素とのこと

 

●ウマイヤ朝(661~750)とアッバース朝(750~1258)

イスラム教は、征服地において無理に改宗を求めることはせず、税を納めれば認める寛容な政策をとることで広がり、ついには650年にササン朝ペルシアを滅ぼしてウマイヤ朝が成立し、様々な民族を支配する巨大な国家となります。

 

ここで問題が生じることになります。

(NHKの『第4回 イスラム 拡大の秘密 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』のウマイヤ朝の問題(C)NHK)

神の前では平等なはずなのに、同じ神を信じるムスリムのアラブ人とムスリムの非アラブ人で税負担が異なるという不平等が発生します。こういった不平等によりウマイヤ朝が倒れ、アッバース朝が興ることになります。

(NHKの『第4回 イスラム 拡大の秘密 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』のアッバース朝の税(C)NHK)

 

アッバース朝は、ササン朝ペルシアやビザンツ帝国の官僚機構や統治方法をうまく取り入れ、キリスト教徒、ゾロアスター教など宗教に関係なく有能な人たちを活用し、寛容と平等を体現することで500年も続く王朝を築くことに成功すること述べられます。

 

 

歴史の見方 ディープトーク「変化するイスラム」

非常に面白かったのが、守川知子先生が、今が”イスラミック・リフォメ―ション(イスラム版の宗教改革の時代)”という主張でした。
 

ヨーロッパのようになった方がいいのか、原点に返れとするのかと、キリスト教のカトリックとプロテスタントの対立がその解消までに多くの血が流れて100年かかったように、イスラムでのこの宗教改革でも時間がかかるだろうということでした。

 

世俗化か、厳格化か、どうなっていくのかを、歴史的にもっと多きな視野で捕えなければならないんだなというのは今回の一番の学びでした。

 

 

ちなみにムックも発売されています。

 

 

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