4月から始まった『3か月でマスターする世界史 - NHK』の「第3回 世界宗教 誕生の条件 - 3か月でマスターする世界史 - NHK」についてのレビュー
世界宗教となったキリスト教のその成立には、ペルシア帝国の宗教ゾロアスター教の影響が大きかったと説明する第3回
(NHKの『第3回 世界宗教 誕生の条件 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』(C)NHK)
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ゾロアスター教の影響から、世界宗教のキリスト教が誕生
第3、4回は、世界宗教をテーマにするということで、ゲストには東大で西アジア史を担当している守川知子先生です。
世界宗教「キリスト教」へつながる歴史として、アジアに焦点を当てて展開されます。ユダヤ民族を対象にしたユダヤ教から、イエス・キリストが現れて、ユダヤ民族に限らず救済を訴えるキリスト教が登場するのですが、その前段階として、今のイラン辺りを中心にメソポタミアなどを収めたペルシアの宗教”ゾロアスター教”に着目して話が進められます。
多神教のゾロアスター教ですが、至高神アフラ=マズダによりアケメネス朝ペルシアも次のササン朝ペルシアも王権が与えられます。
イラン・ケルマンシャー州のベヒストゥン(世界遺産)の碑文には、アケメネス朝ペルシアのダレイオス大王が、至高神アフラマズダより王権の象徴を手渡されている様子が彫刻されています。そこには
至高神アフラ=マズダの御意によって王となりえた
という文言が彫られています。
ゾロアスター教は、紀元前12世紀or前7世紀ころに、創始者ザラスシュトラ(ゾロアスター)が始めたもので、最高神アフラ=マズダの下、善の神群と悪の神群に分かれて戦いが行われます。
・世界の終末
・救世主
・千年王国
というキーワードが掲げられていました。
ザラスシュトラが、善行を積めば救われる。死後に天国に行くのか、地獄に落ちるのかもその善行の救い次第という倫理を説いたことが、これまでの宗教と違って画期的なことだったと評価されていました。
こういった考えが、ユダヤ教、そしてキリスト教に影響を及ぼし、世界宗教への道を切り開いていったという流れが説明されます。
(NHKの『第3回 世界宗教 誕生の条件 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』よりゾロアスター教からユダヤ教への諸概念の流入(C)NHK)
紀元前6世紀、ユダヤ人はユダヤ王国を築いていましたが、新バビロニアによりバビロン捕囚という憂き目にあいます。のちに新バビロニアを滅ぼしたアケメネス朝ペルシアのキュロス大王に解放されますが、この経験かとアケメネス朝ペルシアとの出会いから、ユダヤ教にゾロアスター教の倫理観や各種概念が入り、唯一神ヤハウェを信仰し、倫理観を大切にする宗教となったのではないかとのことです。
世界宗教の条件として、この唯一神という考え方が重要だそうで、大木や岩などの自然信仰はそのものがある場所が大事なので、場所に縛られてしまうが、唯一神の信仰はその場所のみが大事なわけではなく、どこでも信仰できることが重要だということです。
その後、イエス=キリストがユダヤ教の改革者的に活動をはじめ、ユダヤ教がユダヤ人のみを対象とした民族的宗教から、様々な人々を救いの対象とするキリスト教へと成長していき、キリスト亡きあとの使徒パウロがオリエント地域から西方に伝道を繰り返し、ヨーロッパエリアに広がっていき、4~5世紀ころには、5つの総大司教座教会が存在することになります。
(NHKの『第3回 世界宗教 誕生の条件 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』よりキリスト教の五つの総大司教座教会(C)NHK)
4~5Cのキリスト教の総大司教座教会
・ローマ
・コンスタンティノープル
・アンティオキア
・イェルサレム
・アレクサンドリア
と、ローマ以外の4つはオリエント地域で、アジアから歴史を見るというコンセプトのこの番組からすると、まさにキリスト教がアジア(オリエント)から生まれ、広がったというのを現しているものと言えます。
キリスト教が、まずは301年にアルメニアで初めて公認され、その後、ローマでも公認され広がる中、キリスト教内で教義についての正統と異端という問題が生じ、ネストリウス派のように異端とされた教えが、西から、シルクロードを通り、ササン朝ペルシアを経由して東に移動し、中国で景教(キリスト教ネストリウス派)として入るなど、ユーラシア大陸での東から西の流れから、西から東への流れが説明されます。
(NHKの『第3回 世界宗教 誕生の条件 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』より異端とされたキリスト教のアジアへの広がり(C)NHK)
当時西ヨーロッパ全域からオリエントエリアまで治めていたローマ帝国は、395年に東西に分、裂、ゲルマン人の大移動を受けて476年に西ローマ帝国が滅亡します。ローマ以外の4つの総
大主教座教会は東ローマ帝国との関係が続きますが、西のローマではその関係が消滅してしまいます。
(NHKの『第3回 世界宗教 誕生の条件 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』より東西キリスト教の教会の対立点(C)NHK)
800年にローマ教会はローマ教皇がフランク王国のカール1世(カール大帝)に冠を授けるという関係性を樹立して、東西で関係が遠くなっていく中、教えのことや主導権を巡り対立することとなり、1054年には、西ヨーロッパでローマ・カトリック教会が、東ローマ帝国エリアでは総主教を頂点とする正教会という形で分離します。
もともとの関係や発祥の地からすれば、東側こそがという感じがします。
学生時代に世界史を学んだものとしては、西ヨーロッパがスタンダードのように考えてしまいがちですが、このキリスト教の歴史からすると、むしろ西ヨーロッパの方が特殊であったと、それがいかに世界のスタンダードのようになったのかを学ぶことの必要性を垣間見たような第3回でした。
ちなみにムックも発売されています。