伊集院静先生の『琥珀の夢』がとても面白かったので、引き続きで読んだ『ノボさん(上) 小説 正岡子規と夏目漱石 (講談社文庫)』のレビュー
東京で、野球に出会い、文芸に目覚め、真友の夏目漱石と出会う正岡子規の青春フルスロットル
レビュー
一番初めに伊集院静先生による正岡子規の紹介
子規は夢の中を走り続けた人である。
これほど人々に愛され、
これほど人々を愛した人は他に類を見ない
彼のこころの空はまことに気高く澄んでいた。
子規は、今も私たち日本人の青空を疾走している。
とありますが、まさにそれを実感する1冊でした。
上巻は、松山から東京に出てきた正岡子規こと、本名正岡常規、松山で将来を期待される優秀な青年が東京大学を目指して上京し、その東京でベースボールと出会って打ち込んで、年上年下関係なく「ノボさん」と呼ばれ、慕われる姿から始まります。
ノボさんこと正岡子規は、太陽のような人物なのと誰彼と分け隔てなく付き合う姿勢から多くの人をひきつけ、松山の年下のものからは憧れの存在として描かれています。そんな正岡子規も東京大学に進むからには、「末は博士か、大臣か」という意気込みでやってきて、勉強もしますが、べーすぼーるに、文芸に、美食にと多くの友人囲まれて青春を謳歌しながら、大量の血を吐いたことで自らの寿命の短さと進むべき道を決めるまでが描かれています。
真友、夏目金之助(漱石)との出会い
様々な分野の文芸をそれぞれ章立てした作品を書いているときに出会うのが、江戸っ子で英語が堪能な秀才の夏目金之助こと夏目漱石で、二人が落語で意気投合し、お互いに相手の能力を認めあう真友として付き合っていく様が、著者によって太陽の正岡子規と月の夏目漱石という姿で展開されていき、この人間関係がのちに大作家夏目漱石を生み出していくつながりになっていくと思うと、宿命の出会いなんだと思わされます。
子規=ホトトギスのネーミングについて
べーすぼーるに、文芸にと多忙な毎日を送る正岡子規、胚を患って大量に血を吐きます。これを受けて、自分は時鳥(ホトトギス)になったしまったということで、”子規(ホトトギス)”と名乗ることになります。ホトトギスはその鳴くさまを昔の人が「血を吐いて鳴く」といったそうで、血を吐いてまでも作品を作り続ける自分をホトトギスになぞらえての名乗りとのことでした。子規以外にも様々な雅号を正岡子規は使ったそうで、その中にはあの”漱石”もあったそうで、理由としては子規は自分の中に高慢なものがあり、それを戒めるための雅号だったそうです。それを夏目金之助が夏目漱石と名乗るわけですから、正岡子規との出会いあっての大小説家夏目漱石なんだなと深く納得するものがありました。
大量に血を吐き、自分の寿命は長くないと悟った正岡子規、博士・大臣・議長などではなく東大では哲学を専攻し文芸に生きてくことを決めます。
〈書籍データ〉
『ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石(上)』
著 者:伊集院静
発 行:株式会社講談社
価 格:620円(税別)
2016年1月15日 第1刷発行
講談社文庫
初めて読んだ伊集院静先生の小説『琥珀の夢』 出だしから胸熱!
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