#397 本レビュー『新・平家物語(16)』吉川英治 ~とにかく読了 日本の古典~ | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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屋島の戦い後半の那須与一の海上の扇を弓で射る話から壇ノ浦の戦い寸前までを描いた『新・平家物語(十六) (新潮文庫)』について

宗盛の失策で反撃勝利を逃した平家、
その宗盛の出生の秘密が明かされる。

新・平家物語(十六) (新潮文庫)

吉川英治 新平家物語 新潮文庫 全巻セット 20巻セット

  本書について

前巻で義経の奇襲の前に兵数も分からず混乱した宗盛の指揮により屋島から海に追いやられた平家一門。しかし、義経が150騎ほどのごく少数の兵であることや、伊予国(愛媛県)の河野氏打倒に送り出していた3000騎が屋島方面に戻ってくる報をつかんだ平家は、ここで時間を稼ぐための一策を実行するのが、小舟の旗竿の先に扇を高々と掲げて、坂東武者に射てみよと挑発することでした。義経方では那須与一がこれを見事に射抜きます。

 

この話では、『平家物語』では名場面の一つとして、先頭の最中の風流ごとのように描かれていますが、吉川英治先生は平教経らが反撃をする時間稼ぎのために行った一策という扱いになっています。

 

ただこの策は、平宗盛の失策と源義経の想いから、伊予討伐から駆けつけてくる3000騎が解散してしまうことによりムダに終わってしまい、安芸国(広島県)厳島から、長門国(山口県)彦島にまで平家は落ちて、そこで最後の決戦を行う状況に追い詰められてしまいます。

その彦島で、もはや平家一門も終わりになるという予感が一門の間に広がる中、平清盛の妻の二位の尼がまさかのことを明かします。それは平重盛が死に、平清盛も死んで一門の棟梁となるも失策をやらかす平宗盛が、清盛と自分の子どもではないこと、女の子が生まれたので取り替えた男の子であることが明かされ、清盛の血、いや平家の血すら流れていないものゆえに頼りにならないというかなりかわいそうなキャラ設定とされ、この土壇場でのその秘密暴露は確かにだからと思わせるものですが、けど厳しいです。

 

屋島で勝利した義経の許に、あの軍監の梶原景時が現れ、勝利したとはいえ自分を待たずに攻撃した勝手な行動などに憎しみを募らせていくことになり、梶原景時の頼朝への讒言のネタがさらに増えていくことが描かれています。

 

『鎌倉殿の13人』でも戦いに明け暮れるような義経ですが、この屋島のあたりから、平家をとにかく打倒するんだの一心な義経から、戦いを早く終わらせて平和にしたいという義経へのキャラ変更が行われます。それが、ギリギリまで続けられる平時忠との安徳天皇・建礼門院徳子・三種の神器をめぐる秘密の和平につながっていく形で描かれており、それが壇ノ浦の時にどのように作用するのかが注目の16巻となっています。


7巻での義経が平時忠に自首して捕らえられるも、時忠がその意気に感じて解放させるというあの流れがここに生きてくることになります。

 
 
 

 

 

 

 

 

 

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