タブーな恋、許されざる恋
人物評
在原業平の積極的だが禁断の二つの恋
『伊勢物語』では、モデルの在原業平と女の恋が展開されていますが、能動的なものもあれば、受動的なものもありました。
受動的な男女関係の代表は、友人の紀有常の娘との関係
能動的で積極的なものとしては、藤原高子と、恬子内親王との恋が挙げられます。
確かに恋多き在原業平でしたが、『伊勢物語』の中で、特に積極的に情熱的に動くも悲恋として終わるのが、恬子内親王との恋と、藤原高子との恋です。
恬子内親王は、清和帝が即位したときに斎宮として伊勢にいきました。この神に仕える斎宮と恋に落ちるのは、タブーな恋といってもいいものでした。しかもこの二人の間には子どもまで、、、
(友人の娘を妻にしておきながら、その友人の姪にもと、今で考えると修羅場間違いなしな状況)
藤原高子(二条后)との恋は、藤原北家一族にとって、天皇の外戚として力を振るうための存在として清和帝に嫁がせるところ、在原業平が手を出すという藤原氏からしたら、決して許すことのできない恋でした。
こういったところの恋が、在原業平の『日本三代実録』などので人物評につながったのではないかと考えられます。
人物評価
『日本三代実録※』によると、在原業平は
「体貌閑麗、放縦不拘、
略無才覚、善作倭歌」
イケメンで好き勝手にふるまう
漢詩や漢文の才はないけども、和歌がうまい
という評価がなされています。
※『日本三代実録』:延喜元(901)年成立、清和・陽成・光孝天皇の30年間の歴史書
藤原時平や菅原道真らにより編纂
また、『古今集』の撰者の一人、紀貫之の在原業平の和歌に対する評価は
「その心余りて、詞たらず。しぼめる花の色なくて匂ひ残れるがごとし。」
情熱をこめすぎていて言葉が足りない。しおれた花の残り香みたい
と、情熱的であることは認めていますが、かなり手厳しい評価もなされています。
『伊勢物語』『日本三代実録』の評価を合わせると
イケメンで、激しい感情のままに和歌を詠み、恋に生きた悲しき貴種
というところでしょうか。