#68 ブックレビュー:『伊勢物語』~とにかく読了”日本の古典” | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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皇位も望める可能性もたたれた高貴な男
その身分的な悲哀、悲恋、恋の駆け引きを
男の和歌や様々な和歌をもとに編集された1冊

 

 2022年の私の読書目標、とにかく読了”日本の古典”

 その中の1つ『伊勢物語』をようやく読了しました。

 

<書籍データ>

伊勢物語 上・下 2巻

著 者:阿部 俊子(1912年生まれ)

発行所:講談社

(上) 定価:1,070円(税別)

第  1刷:1979年8月10日

第46刷:2020年9月8日

 

(下) 定価:1,000円(税別)

第  1刷:1979年9月10日

第42刷:2019年1月8日

  本の構成

(上)

第1段 しのぶのみだれ ~ 第70段 あまの釣舟

 

(下)

第71段 ちはやぶる ~第125段 つひにゆく

定家本にない章段

 ・伝為氏本より

 ・伝為氏本巻末所載の小式部内侍本より

 ・谷森本より

伊勢物語所収和歌一覧表

解説

 

モデル在原業平の元服から、死期を悟るまでを、在原業平自身の和歌や、万葉集、古今集をはじめとする勅撰和歌集の和歌を用いて、その人生を表した1冊。

ただし、モデルは在原業平だが、章段の主人公的に登場する男は在原業平ではないと思われる人物のケースもある。

 

  考察や感想

 『伊勢物語』と在原業平のイメージというと、人口に膾炙しているように、平安朝のモテ貴族、和歌を駆使して流した浮名は数知れず、それを記した物語というところでした。

 

 しかし、様々な副読本を読み、在原業平のバックボーンを知って読むと、このイメージの部分もありますが、それだけじゃない部分が多いこと、そして、成立自体がいつかはっきりわからず、後世に何回も編集が加えられていて、後世の人たちの意図がかなり影響しているということです。

 

 和歌は、万葉集以降から勅撰和歌集の時代などで多くの和歌が生み出されており、当時の貴族たちにはその多くの和歌を知っていることはたしなみだったと思います。

 万葉集や古今和歌集などで様々な人によって詠まれている”恋の歌”を中心に歌を選び出し(在原業平が詠った和歌もありますが)、在原業平をモデルに据えて、和歌を味わう物語として成立すると考えて執筆されたのではないかと思います。

 

 在原業平にはモデルにふさわしい条件がそろっていました。

  ・皇位につける可能性もあったのに、臣籍降下でその機会を奪われてしまったこと

  ・臣籍降下したが時代は藤原氏の時代で貴族の中でも栄達が厳しかったこと

  ・当時の帰属の男性が求められる教養は漢詩や漢文なのに、そちらの才がないこと

  ・和歌の才は抜群にあること

  ・恋多き人物であったこと

 

 ここに注目してまず作られ、そこから後世の人たちがさらに設定を増やすことでより面白くなるのではないかと付け加えられていったようです。

※今はこんなことしたら改ざんなんて問題になりそうですが、当時で言えば著作権とかそういった観念はなかったということだと思います。

 

 全体を通して、この貴種だけど、貴種にふさわしい地位を得られない存在としての悲哀と、許されない恋(天皇に嫁がせる予定の藤原氏の娘や、斎宮との恋)への思いをベースに、当時の貴族たちが行ってたであろう女たちとの恋の駆け引きや、すれ違う思いの悲しさやが展開されていて、単なるモテ男の女性遍歴物語なんていう底の浅いものではないことがよくわかりました。

 

 今でも恋愛ドラマが、主人公の恋がつぎつぎに実って楽しんでいるものなんかよりも、すれ違い続け苦しむ姿や、実らぬ恋の未練、悲恋や、恋の駆け引きの方が多いように、『伊勢物語』にはテーマ的にその普遍性があるということが分かりました。

 

 ただ、まず初めに著作した人、その後の人たちの編集も、首尾一貫して行われたわけでなく、読んでいて、この段はなんなんだと???だらけになることもありました。もう少し理解を深めたいので、小説などをあと数冊読んでから、次の日本の古典作品を読みたいと思っています。

 

 

 

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