20.
マオに呼ばれて嫌そうにやってきたイヴァンは、ミィファの顔を見ると驚いたように目を瞠り、それからケイを見ると、何やら納得したように頷いてから、かなり貴重な心のからの笑顔を浮かべた。
「良かったですね」
そんな謎の一言と共に。
それからが大変だった。
このインフェルノで、下手な医者よりも治癒術に長けたイヴァンにミィファを診せるつもりだったのだが、そのミィファがそれを全力で拒否したのだ。
答えは簡単。
体を見せたくないからだ。
頭からすっぽりとブランケットに包まり、いやいやと首を横に振るばかりで、指先すら外に出そうとしない。
こうなったらまた言霊で従わせるしかないかと、ケイが最終手段のため渋々口を開こうとしたその時、唐突にマオがミィファに後ろから抱き付いた。
驚いたのはケイ達だけではなくミィファも同じで、ピタリと動きが止まる。
そんなミィファに、マオは心底不思議そうに声を掛けた。
「何で嫌なの?怪我いっぱいしてるから?汚いと思ってるの?でも、ケイはさっきそんな事ないって言ったよ。花みたいに可愛いって言ってたよ。ケイがそう言うんだから、ミィは可愛いんだよ。なのに、何で隠れるの?」
まるで純真無垢な子供のようにー実際マオの精神年齢はその位だー矢継ぎ早に尋ねられ、その上ずるりと頭に被っていたブランケットをずり降ろされたミィファは、涙をいっぱいに溜めていた瞳を見開き、真正面に居たケイを見つめた。そんなミィファの頭を、マオはいつもケイがしてくれるように、よしよしと撫でてやった。
「俺も、ミィファは可愛いと思う。さっきまではいっぱい汚れてたけど、今は良い匂いがするし、綺麗だよ。パンケーキ一生懸命食べてるのも可愛かったし。なのに、まだ汚いって思うの?それって、ケイの言葉を信じてないってこと?ケイが可愛い綺麗って言うなら、その通りなんだよ?」
ペットは飼い主に似ると言うが、この場合、ペットの方が少々過激だ。
「マオが口説いてるー」と騒ぐアンも、そんなアンを「うるさい騒ぐな!」と嗜めるメイもほんのり顔が赤いし、成り行きを見守っていたハルカも「あらまあ」と頬に手を当てている。イヴァンにいたっては、砂でも吐きそうな有様だ。
ケイも流石にそこまでストレートに言える程ではないので、「マオ、離してやれ」と言う顔は少し困り気味で、マシロだけがいつもと変わらず平然と立っていた。
to be...