17.
持ってきたイチゴジャムを、スプーンで一杯掬って紅茶に落としたハルカは、すっかりマオに餌付けられている少女を微笑ましげに見つめた後、「ケイ様はーやーくー」とパンケーキのお代わりを強請っているアンを振り返り、「アン、お行儀良くしなくては駄目よ」と窘めた。
それに「はぁい」と不服そうに返事をしたアンは、袖と裾にフリルの付いた着物に、やはりフリル付きのエプロンといった和製メイドのような格好で、コンロの前に立つケイの隣に居る。そしてケイを挟んで隣に立つ、アンとよく似た顔をした少年ーメイが、「そうだぞ、アン。お前はいつもいつもそうやって図々しいんだ。大体…」と説教を始めてしまい、ケイはげんなりと肩を上下させて2人をソファへと追い返した。
そんな様子を、パンケーキを頬張りながら何処か遠いものを見るように見ていた少女は、「そういえば」と声を上げたハルカを見つめた。
「ケイ。貴方、この子の名前はどうするの?部屋付きにするのなら、登録する際に必要よ。…まさか、マオのように安易な名前を考えてはいないわよね?」
安易?と首を傾げたマオの名前は、ケイの故郷の言葉で「猫」を意味する。まさしく、そのままだ。
ぐっと言葉に詰まったケイは、焼き上がったパンケーキを置き去りにされていたアンの皿に乗せると、ソファに戻ってきながら少しムッとしたように口を開いた。
「安易と言うな、安易と。これでもきちんと考えたんだ。……確かに、そのものズバリの名前にはなってしまったが」
マオの名前を考えた時、他にも候補は色々とあったのだが、結局ケイが最初に冗談半分で口にした「マオ」という名前を本人が気に入ってしまい、それが良いと言うからそうなってしまったのだ。ケイは悪くない。
名前か、と呟いて、ケイは少女の隣に座る。
するとパンケーキを5枚も食べて流石にお腹が落ち着いたのか、此方を見上げてきた少女に気がつき、その目に出会ってから初めての期待が浮かんでいるように見えて、ケイは悩むように唇に指を当てた。
to be...