23.
その晩、マオのパジャマを借りてブランケットミノムシから脱却したミィファは、寝ている間に絡まないようにと、ケイに髪を三つ編みにして貰いながら、膝の上に置いたブランケットを指先で弄った。
「ミィファ」
丁寧な手付きで髪を編むケイに呼ばれて、ミィファは身じろぐ。しかし「頭は動かすな」と言われてしまい、大人しく前を向き直した。
「……俺は、ハルカが言っていたように優しくはない。言い方がキツイとよく言われるし、冷めていると自分でも思う。…女の兄弟は居ないから、年頃の女の生活というのもよく分からない。だから、不便を掛けると思うし…お前は今は喋れないから、言いたい事が言えずに鬱憤が溜まるかもしれない。その時は、そうだな、紙にでも書いて訴えてくれ。善処する」
至って真面目に言っているのだろう。なんとなく顔が見たくてミィファは振り向こうとしたのだが、「こら」と叱られて渋々前を向いた。そして、応える代わりに頷く。
それを見て、ケイがふっと息をつく。
「まあ、…なんだ。これから宜しく頼む。日中はマオと一緒に居れば問題ないからな」
そう言って締めくくると、「出来たぞ」と言ってケイがミィファの髪から手を離した。
寝所はマオと一緒らしい。
丁度お風呂から出てきて、濡れ髪を叱られているマオを見ながら、ミィファはケイが入れてくれたホットミルクをちびちびと飲んだ。
温かくて、柔らかくて、甘い。
きっと、明日からの毎日もそんな風に過ぎるだろう。
幸福の味がする、と蜂蜜の香りに頬を緩めたミィファは、「ミィが笑った!」と声を上げたマオにびっくりして、それから本当に小さく、はにかむように笑った。
fin.