社宅の土地の測量をしていて気づいたことは、この土地は阪神大震災のときに西側に10cmほど全体がずれているということだ。なので、社宅の総面積が減少しているようであった。現地でよくよく見ると西側の道路に接している駐車場の壁がピサの斜塔のように斜めにせり出していた。
東隣の図々しい隣人(以下、五十嵐さん)が涙ながらに訴えていた道路も西側にずれて崩れたため10cm狭くなっていたことがわかった。
それで、土地家屋調査士の権(ごん)さんと相談していたのは、五十嵐さんの道路と接している傾斜地の10cm内側(社宅側)を境界として、道路が昔は4mあったことを証明すれば、五十嵐さんの家も売却できるのではないかということだった。しかし、それではただでさえ減少している社宅の土地の面積が更に減少してしまう。「それではちょっとうちに不利過ぎですね。」と話していたのを、北隣のこの馴れ馴れしい老人の谷山さんが聞いていたようだった。
谷山老人が
「さっき話してはりましたが、…うっ…、面積が減る分うちの塀の部分の土地を無償で売却しますので、どうですか?…うっ?」と相変わらず奇妙な語尾でそんな提案をするのだ。
つまり、五十嵐さんのために減少する分の土地を我々にタダでくれるということだ。
聞こえはイイが、そうすれば自分の塀の修繕はこちらサイドの負担になるので、この老人は自分の土地は減少するけど、塀の修繕はしなくていいという算段だったのだろう。
そんな勝手は許さないぞと、
「いえ、別に狭くなっても我々は構いませんよ。塀の修繕がイヤでそんなことを言うんでしょう?」と聞くと、
「実は年金生活で金がなく、ずっと修繕ができてなくて…。」
「申し訳ないけど、そういうことで、なんとか修繕をそちらでお願いできないでしょうか?…うっ?」と正直に話し始めた。あー、もう胡散臭い、最初からそう言えばイイのにと思いながらも延々とこのあと、息子がどーのこーのとか嫁がどーのこーのという話を聞かされた。
しかし、塀の修繕はその10センチ幅の土地の価格よりかなり安く可能だ。このやり方だと谷山老人の損になると思うのだが、キャッシュが今は本当にないということなんだろうか…。
我々としては、境界の塀を銀行側の土地にして、塀の修繕をこちらでやってもペイする。「そういう解決方法もありそうだな。」と権さんが言うので、「まあ、それもそうですね」と僕も同意し、境界の塀を銀行側の所有にすることで、谷山老人と確認することにした。これで三方皆上手くまとまりそうである。
胡散臭い老人と思っていたが、いいことを言うなぁと感心し、その方向でまとめることにした。
がしかし、後日、驚愕の事実が発覚するのである…。
(今日はこのまま続けます)
なんと、この老人、その後、五十嵐さん(図々しい隣人)と個別交渉し、自分の土地の傾斜他部分を10cmセットバックし、この隣人からは有償で売却していたのである。おそらく「俺が銀行に口を聞いてやったんだからお宅の前面道路が4mになったのだ。」とかなんとか言ってせしめたのであろう。銀行には全く話をせぬままである。汚い感じだ。
やっぱり思った通りの胡散臭い老人だったのだ。いい人と一瞬でも思った自分を反省した。こちらには善人ぶってイイ顔をしておいて、下げた頭で舌を出していたのだろう…。
それ以来、僕は今でも第一印象の「顔」で決めてしまう悪い癖が治らないのですが…。
と、オチがないままこの話を終わります。
(一連の話はこれでおしまい。別の話がまた続きます)
境界確認は所有地に隣接するすべての人と行うので、北隣の空き地の所有者とも会って確認をした。
来たのは、一見人の良さそうな人だが、目が狡猾な雰囲気を醸し出している老人だった。喋り方が妙に馴れ馴れしくて僕のもっとも嫌いなタイプだ。
図々しい隣人とのやりとりの途中から来てたので、一部始終がわかっていたようである。
「何か大変そうですな…」
と、いきなり他人の話からはじめる。あー、やっぱりアカンはこのタイプ。図々しい隣人のあとは馴れ馴れしい隣人だ…。
「特に問題ないですよ。」と答えると、
「いや、少し聞こえてましてね…うっ…。」と変な語尾で喋る。
「あなたには関係ないことでしょう? 境界確認をはじめるので、こちらに来てもらえますか?」と、強引に境界の方に移動することにした。
境界に塀があったのだが、一部が震災の影響で崩れたままで、放置されてる。それで侵入されやすく、投石事件に発展した可能性が大である。
この塀はこの馴れ馴れしい隣人の所有物のはずである。その辺りから確認することにした。
「この塀は、谷山さん(その馴れ馴れしい隣人)のものですよね。」
昔の物件は境界杭が打たれてないので、こうやって、ヒアリングで進めるしかない。が、銀行の物件は測量がきちんとされているので、どこが境界かはかなりわかるようになっている。なので、塀は隣人のものとわかっていた。
なのにこの馴れ馴れしい隣人は「いや、おたくのものでしょ?…うっ…?」とまた変な語尾で言い張る。
普通は土地の面積が増えるので、塀が自分のものだと喜ぶのだが、このケースでは塀を修繕しなければならないのが明らかなので、自分のものと違うと言い張っているのだろう。
しかし、残念ながらこちらは「全部お見通し」なのだ。
証拠の測量図を出して、
「ほら、ここが、玄関でこの位置が境界になってるでしょう。わかります?ここです。ね、なので明らかに塀は谷山さんのものでしょう?」と言うと、残念そうに
「あ、ホンマやな。おかしいな。ワシの記憶違いやったかな…うっぐっ…。」
あー、もう、胡散臭い。これ以上喋るの嫌と思ったが、
「ということで、ここに署名捺印をお願いできますか?」
と書類を出した。
と、その馴れ馴れしい老人は実に妙なことを言い出すのだ…。
(まだまだ、続く)
隣人の申し出はこういうことだった。
つまり、阪神大震災で前面の道が4mに満たなくなった。以前の道が4mあったことを隣人として証明してもらえないだろうか?ということだ。
見取り図はこんな感じ。
隣人の話に、僕は
「すみません、私はこの前担当になったばかりで、昔のことはわからないんですよ。こちらの倉庫の持ち主に聞いた方がいいのではないですか?」
と、反対側の倉庫の持ち主に相談するよう返事したのだが、どうもこの隣人とは上手くいってないようで言いにくいらしい。
確かに近所づきあいなんか出来そうにないもんなぁ…と思いながらも、変なことに巻き込まれたくないので、
「残念ながら、ご期待にそえないので、申し訳ないです。」と言って帰ろうとしたが、相手もなかなか引き下がらない。
「お願いです。借金が返せなくて、どうしてもこの家を売りたいんです。ど、どうか、助けてください…。騙されたんです。この家を買った時に。そんなことになってるの知らずに…。」と涙ながらに訴えてくる。知らんがな、騙されたとか、借金とか…。
「でも、出来ないものは出来ないんです。申し訳ないです。」
と、冷淡に言って、その場を去ることにした。
しかし、残念なことに、この話は終わらない。
一ヶ月後に、この社宅を売るために隣地との境界確認をせねばならず、会いたくないこの隣人に会わざるを得ない目にあうのだ。
境界確認の際には、土地家屋調査士の人と一緒に確認をしに行くのだが、この隣人はまたもや
「昔は4mあったはずなんです。証明していただけないでしょうか?」
の話を切り出すのである。
で、人のいい土地家屋調査士の権(ごん)さんは、「じゃあ、とりあえず測ってみましょう。」と、測量を始める。
道の幅は3.9mで10センチ足りない。
阪神大震災のときに、道の路肩が崩れ落ちたか何かで狭くなったのであろう。
調査士が持ってきた古い地積図を見ると確かに幅が4mとなっている。「調査しましょうか」と権さんはその隣人に気前良く言ってしまった。やめとけばイイのに…。
隣人は喜んで、「お願いします。何卒よろしくお願いします。」と頭を下げて、挙げた頭で今度は、
「つきましては、私の家の測量も同時にお願い出来ますでしょうか?」
どれだけ図々しいのだろう。
しかし、権さんは二つ返事で了解した。「こんな隣人の世話をなんでせなあかんねん」と僕は思いながら…。
結局、その後かなり複雑なことになるのでした…。
(まだ、続く)
投石事件のあった支店長社宅のことで、警察の人と話していると、突然坂を登った東側の隣人から奇妙な申し出があった。
隣人と言っても、道路が接しているだけで、家は接していない。
見たところ、内向的な近所づきあいのなさそうな40過ぎの男が、話に割って入り、
「すみません。この家の方ですか?」と聞いてきた。
「この家の方というか、この家を管理してるものです。」
「実はお願いがあるのですが…」
と、人が警察と話をしてる最中に、礼儀も何もない人である。
「ちょっと待ってくれる。僕は警察の人と話してるねん」
と言って、気持ち悪いので、少し離れたところで警察の人と打ち合わせをすることにした。
その間、ずっと、遠目にこちらを見て立っている。気持ち悪い…。
話が終わって、その男を無視して帰ろうとしたら、やっぱり近づいてきた。
「あの…、ご相談があるのですが…。」
「何ですか?」
「あの、実は私、あそこの家のものなのですが、お願いしたいことがありまして…。」
「あ、すみません、僕は実は銀行のもので、この家は銀行の管理物件なんです。何かの依頼は僕個人じゃなくて、銀行に問い合わせてもらえますか?」と答えて帰ろうとしたのだが、
「こういうお願いが出来るかだけ聞いて欲しいんです…」
聞くと、阪神大震災で家の前の道路が崩れて、道路幅が4mに満たなくなってしまい、家を売ろうにも売れないという話である。
建築基準法で、4m以上の道路に2m以上接していないと建て替えや売買が出来ないという話は知ってたが、それと社宅との関係がわからなかった。
「それで、何をして欲しいんですか?お宅の家が売れるか売れないかは私には関係ないんですけど…。」
と答えると、その隣人はものすごく奇妙なことを言うのだ。
(続く)
阪急沿線のとある駅の近くにあった支店長社宅に入居する支店長がいなくなり、随分と長い間空き家になってたのだが、近所の人から銀行あてに「無人の社宅に誰かが石を投げて窓やドアに沢山穴があいてる」との通報があり、現地に行ってみた。
なるほど、現場は酷い状況だった。そもそも隣が空き地で、もう片方が階段になってる坂道に接していて、石を投げられやすい立地だった。
格好の石投げ遊びの標的である。
犯人は小学生と決まってるわけじゃないが、坂道を抜けたところが小学校なので、限りなく疑わしい。
ということで、近所の警察署に被害届を出しに行った。
ところが、受け付けてくれない。被害は明白なのに。
「なんで受け付けないんですか?」と聞くと、
「小学生は対応出来ないんです。」と…。
「はぁ? 何それ? じゃあ誰が対応するんですか?おかしくないですか?」と聞くと、
「小学生のいたずらは事件にならないんですよ。」との返答。
「じゃあ、小学生は取り消します。大人かもしれません。」
「家に石を投げる大人はいないでしょう?」
「はぁ? そこまでわかってるのなら取り締まってくださいよ。」
「だから、小学生は取扱えないんです。」
「……。」
「しかしねえ、実際に窓は何枚も割れてるし、玄関は凹んでるで、20万円以上はかかりますよ!これが被害でないんですか?こういうの犯罪じゃないんですか?」と訴えたが取り合ってもらえない。
もうそれ以上言い合いしても仕方がないので、一旦は引き下がった。
が、銀行の総務部というところはすごくて、警察のOBがあらゆるトラブル対応のために常勤で勤務している。兵庫県担当の某警察OBに事情を話すと3分も経たないうちに、さっきの警察署から僕宛に電話があり、「被害届を受理しますので、明日朝来てください。」とのこと。
「なんじゃそれ?」って感じ。
で、翌朝、同じ警察署に行くと全然全く昨日と対応が違う。
ものすごく丁寧で、被害届も1枚でイイと言ってるのに、ガラスとドアの2通書かされた。
念のため、現場に行くと、なんと警察官が3名も現地を警備している。
それにしても小学生は授業中である。警備するのなら登校時と下校時にしてもらいたいが、そのあたりが官僚組織なのだろうか…?
「今、警備の必要はないんじゃないですか?」とか大声で警察とやりあってると、今度はその社宅の隣人から、突然奇妙な依頼の申し出があった。その申し出とは…。
(次回に続く)
