元祖・ものまね四天王の自業自得
---愛人に殺害された「佐々木つとむ」の悲劇
彼は、渥美清の物真似でブレイクした。
1987年、二人の子供がいたが、夫婦仲は良好ではなかった。
それは、彼のギャンブル狂であった。しかも、彼は愛人宅に入り浸りで、家庭を放り出していた。
1987年9月4日、「佐々木つとむ」は、刺殺体で発見される。
仕事に顔を出さない彼を探して、所属事務所の社長が愛人宅を訪問して血を流して倒れている彼を発見した。
彼の身体の上に毛布が掛けられていた。その上に「メモ書き」が残されていた。
当時、ものまね芸人として、人気が陰り、彼の出番は少なくなっていた。
ギャンブルにハマるのはその頃からだった。多額の借金を作っていた。
ふと訪れたポーカー喫茶で、後に愛人となる女性と知り合った。
その女性が「中野美沙」である。
事件発覚後に、彼女は全国指名手配された。
刺殺体に残されたメモ書きは、彼女の遺書のようであった。
『わたしが、お父さんを殺すなんて--夢にも思わなかった。あの世でやり直そうね』
「佐々木つとむ」は、借金の返済に、度々彼女に頼っていたらしい。その額、なんと1000万を超えるという。
彼女は、決してあなたを憎くて殺したんじゃない。それを分かって欲しい。と訴えていたかのようであった。
捜査員は、犯人「中野美沙」には、自殺の怖れがあるとみていた。
「中野美沙」は、中学卒業後に工場勤務などを経験して、17歳で水商売の道に入った。
そして、ヤクザの愛人となって暮らしていたという。
「佐々木つとむ」からの度重なる金銭の要求に「中野美沙」は、ほとほと困り果てていた。
だが、彼を見捨てることは出来なかったのだ。
店長は、この事件は、「佐々木つとむ」による「嘱託殺人」ではなかったのだろうか、と推測している。
彼は、仕事が減って絶望していたのではないか。「中野美沙」は彼に、再三家に帰るように諭していたようだ。
だが、彼にはもう妻や子供に合わせる顔はなかった。
死ぬしかなかったのだ。