【あの音の意味】(キュ〜ンドカ〜ン) | カリフォルニアの建築家日記

【あの音の意味】(キュ〜ンドカ〜ン)

【あの時の音】 
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キュ~ンドカ~ン。 


文字で表現するにはこんな感じだろうか。

頭の中は一瞬真っ黒、無心、何が起きたかわからない。

20年前の出来事と似ている感覚で沢山の風景が一瞬にして脳裏を駆け巡った。


はっと気がつく。 まだ何が起きたかわからない。。。


頭の中が真っ白になったと思ったら一瞬気を失っていたのか。
気がつくと胸を押さえていた。。。




【君のスマートビルディングを建てたい】

3日前
場所:ロンドン、スティーブの自宅
ある一通のメールが届く。

6年ほど前に会ったカリフォルニア州首都サクラメントに住むDevelopper Mr.J からのメールだった。

「君が言っていたSmart buildingを建てる準備ができたよ!」



翌日即 フライト。
サクラメントはA.K.A シュワちゃんことGovernor Schwarzenegger の街。
懐かしいな。 学生の時田舎のカレッジに通う頃、サクラメントは大都市に感じていた。。



カリフォルニアの建築家日記-sac


プロジェクトを開始するにあたり現在の進行状態や政治的関係、ラフなスケジュールを確認する。 

まだまだ沢山のハードルを超えなくてはならないけど
B.E.M を信仰している彼の頭には既にプロジェクトが完成しているようだ。


“So, are you hungry?”
Mr.Jはそういうと即座に机の上に広げられた資料を片付け、
待っていたようにランチに向かう。 

彼と会う時はいつも食べているような気がする。。
プロジェクトの話より食べる時間の方が遥かに長い。汗


「サイトの近くにこれまたおいし~いデリがあるんだ」

ローカルのレストラン。

60cmはあるだろうか。 ものすごい大きさのホットドック。
トロトロになるまで炒めたタマネギと自家製ソーセージといったとてもシンプルなメニューだが、とってもおいしい。

食べ物のことになると話が尽きない。 
どうやってここのオーナーと知り合いになったのか、
ソースの秘密や自家製ソーセージの秘密など。。
ホットドックもいろいろな種類があって。。

そんな中

“Hi, J,”

“hey, J..”

次々とスーツ姿の人びとが僕たちのテーブルを訪ね彼に挨拶をする。


“Here is my friend, Dais-K, and he just arrived from.................... where were you from... again? ”
「友人のDais-Kだよ。 ちょうど彼は。。 どこから来たんだっけ? 笑」



どこから来たと言えばいいのだろうか。
 
そんな会話からテーブルはビジネスマンとシャツにジーパンの僕たちでミックスする。 

でも食べているのはホットドック。。 
不思議な空間だ。

このプロジェクトが実現することができれば
カリフォルニアばかりでなくアメリカ全米でブレークする。

想像しただけでも鳥肌がたつ。 


“Let's not rush it. but give everything on what God offers us. See you in a month.” 
「ラッシュしないようにしよう。また神様からいただいたチャンスにお互いベストを尽くそう。 それじゃ一ヶ月後に。」


彼と固い握手をかわし、夜の便でロスに戻る。
久しぶりのLA. 夜景がとてもきれい。 

当時はヨーロッパからサンフラン経由で中国へ向かう予定だった。
予定を変更して一日だけLAに戻り、またサンフラン経由で中国へ行けばいい。


「明日はみんな,ビックリするだろうなぁ。」


そんなことを考えながら久しぶりに夜の街をドライブする。
ユニオンステーション付近の交差点はスピード違反を取り締まるように
カメラが仕掛けられている。 自然と慎重になる。

ユニオンステーションのライティングはとてもきれい。 
きれいだからよそ見してしまうぐらいだ。
交差点で待つ間、自分もやっぱり横を見ていた。

カリフォルニアの建築家日記-union station




キュ~ンドカ~ゥン。


まだ何が起きたのかわからない
一瞬の出来事だった。

トランクで爆弾が破裂したのか?
爆弾のような音だった。

気がつくと胸が圧縮され少し息ができない。
まだ頭では何が起きたかわからない状態のまま、
車内では自動でSOSの衛生回線がつながっている。(衝撃やマルチファンクションになった場合自動にレスキューセンターへ連絡するシステムが装備されていたらしい。)

車内のダッシュボードは赤点滅していた。


"SIR. We have received the emergency protocol from your vehicle .. According to the system, there was a large impact at your real side of the vehicle. Is this information correct, sir?"

緊急事態の指令を関知しました。 お客様の車両後方に強い衝撃とマルチファンクションの通知です。 この情報は正しいでしょうか?


“はぁ?”

息があまりできないままようやく自分も状況を確認した。


"Oh,,, i guess.. I guess I got the rear-ended.. Who am I speaking to?"
は はい。。後ろから突っ込まれたようで。。。どなたさまですか?


"My name is Suzanne. Are you okay sir? Is anybody riding with you?"

スザーンと申します。 体調はいかがですか? 他に誰か同乗している方はいらっしゃいますか?


突然の質問に一つ一つ答えるのが精一杯だった。 

"Is your vehicle blocking traffic, sir? do you see anybody behind ?.."

道を閉鎖していますか?  後方に誰か確認できますか?


"Sir, We have contacted the emergency unit. they are on their way. Please stay in touch.. you can keep talking to me.. "
救急車を呼びました。 大丈夫です。 話続けてください。。


後ろを振り返ると窓が割れていて後方の車が一部見えた。
ドアを開けて外に転がり出る。


"Oh... No...."
お気に入りの車もこんなざま。涙

怒りが熱湯のように頭の中で吹き上げる感じがした。
胸も痛いし。。 お腹に力を入れないと話せなかった。
小学校のころブランコで遊び、自爆して胸を強く打ち息ができない感覚だった。


後方へとゆっくり歩き始める
。。。と同時に運転手の顔が見えた。

自分は何を考えていたのか。。
突然運転手のことが心配になった。

20代の青年だった。
彼の車の前方は食べ終わったお菓子の袋のようにクシャクシャになっていた。
ゆっくり彼のところに近づく。
エアーバックがdeployed(分散?)されていたが彼は無事なようだった。


"Hey.... Are you Okay.."

「。。。。。」

彼は自分を見上げるととても悲しい表情で
"I am so sorry.. I am so so sorry... Oh, god. What have i done.. Are you OK sir?.. Oh, No.. What’ve i done...."

本当にすみませんでした。 本当に本当に。。。  なんてことを。。なんてことをしてしまったんだ。。  大丈夫ですか。。  なんてことに。。。 


両手で頭を抑え同じ言葉を言い続けていた。
なんとかドアを開け、彼を外へだす。


歩道まで連れて行くと泣きながらしゃがみこんでしまった。
"okay, I am Dais-K, you can stay here, everything will be okay.."
Dais-Kっていいます。とりあえず君はここにいていいよ。 大丈夫だから


"oh my god, I am so sorry about what i have done.."
なんてことだ。。本当にすみません。。



彼の車の周りを見てみるとブレーキの跡もなく、そのまま突っ込んだみたいだ。。


"Okay, Let’s not talk about what happened in past. We can’t change it anyway.
Everything is okay, aight?"
OK. 起きたことを話すのはもうやめよう。話したって変わなでしょう?
大丈夫だよ、オーケー?

aight = Alright のスラング, "アイッ"っと発音する. 友達同士で使い柔らかいニュアンスでも使える



話を聞いてみると携帯でテキストメッセージをチェックしていたらしい。。。 汗。
ブレーキ無しで突っ込むとは。。

自分は車に戻りSuzanneに状況を伝える。
彼も大丈夫ということ、車を移動したいが、彼の車は動かないこと。。

そんな中、背後で救急車の音が聞こえてきた。
Suzanneも救急車が到着したことを確認すると 
彼女のAssignment (使命)を終え回線を切ることを伝える。



【プロトコール】

救急隊員が来ると見事に慣れた行動でテキパキと作業をする。
状況を確認すると
“Are you in conscious ? Were you drinking tonight? Are you alone”
意識はしっかりしていますか? お酒は飲んでいますか? 一人ですか?
次々と質問をしてくる。


首の後ろが少々痛いと伝えると即座にフットボールのギブスの用な物を首に着け、
“Okay, Mr.. We are taking you to USC Emergency hospital. You have to stay calm and let us perform what we are trained to do as a part of a protocol. ”

頭の中では「はぁ~?」状態だった。。
「おい、おい、ちょっと大げさじゃない?」
っと感じるが次々と作業を続け自分の頭を固定していく。
梯子ベットに乗せられ、そのまま救急車の中へ。

サイレンを発し、同乗し隊員がまた同じ質問をする。
緊急隊員ができる法的な範囲や事故の当時者である自分が持つ権利、
また病院に着く前に保健証のタイプの確認などを説明してくれた。

もし本当に?死にそうだったらこんなこと理解できないし答えられないだろうな。。


財布とiphoneをたまたまポケットに持参していたけど。。


自分も妙に冷静だった。


病院に着くとER (Emergency Room)のスタッフもテキパキしている。
行動を止めるこことなく”R12and C2”などと、歯医者で聞くような専門用語を並べながら治療室に着く。

緊急隊員とERのスタッフへバトンタッチ。

何か書類みたいな物にサインした後
ドクターが二人両側に立ち自己紹介をする。

"My name is Dr........ What is your name? "
同じ質問がまたまた。。汗

「the Prim Driver, Rear-ended, Neck pain, minor chest pain, etc... 」

彼らの後ろには医学生らしいインターンが着いていて自分のケースを使って練習しているようだった。

ドクターが一つ一つ丁寧に各行動を説明している。

心拍数などをチェクするマシーンを体につけたり、指先から血液のサンプルを取り出したり、骨盤を押したり、首の付け根をチェック。

「I am Okay. I am really OK, Doc...」
大丈夫です。本当に大丈夫です。

そう伝えると
ドクターはニコッと微笑みながら
頭をシェイクしているのできちんと検査をしたほうがいいという。


後になって後遺症などが現れた厄介なことになるし。


結果、XRay、CTスキャン等をフルメニューでチェック。

次のステップとその理由を丁寧に伝えると
ドクター達は即他の患者が待つERに移動。



一人残される。



「this is so unreal..」
どうなってるんだ。。


待っている間、いろいろなことを考えた。

なぜこんな時期にこんなタイミングでなんて。
あそこの道を曲がっておくべきだったとか、
考えても変わらないことばかり。

将来のこともどんどん頭に浮かんできた。
車のこと、 次のフライトのこと、 青年のこと、


暗い時間が流れた。
ゆっくりと流れた。



心が落ち着いてくるにつれ
どんなに自分はラッキーだったかと感謝するようになった


青年も同じことを思っているだろうか?


今回も虫の知らせもなかった。
一瞬にして時間の質が変わった。


ふと自分の世界から離れ耳を済ましてみると
沢山の悲鳴や苦痛に耐える声が聞こえた。

「そうだよな。 ここは緊急病院だもんな」

とっても恥ずかしいけど目頭が熱くなった。
凄く恥ずかしくて突然看護婦が入ってこなければいいなって思った。



カリフォルニアの建築家日記-ER



今回も虫の知らせなんてなかった。

これからもどんな事柄が自分に起きるかなんて絶対にわからない。
だから心配したってしょうがない。

将来わからないことをビクビクおびえて生きるのは嫌だ。

ああすれば良かったとか、
なぜあそこで信号街していなのかなんて考えたってわかるわけない。 

過去を見つめ後悔しながら生きるなんて嫌だ。




あの音。


既に起きたことを悩むより
自分にとってどんな意味だったのかを感じたい。



あの音。



爆弾みたいな騒音で頭をバットで殴られたような感覚だった。
でも今となって考えると、なにか違った感情が残っている。


過去の努力で作ったクレイジーなライフスタイル。
大好きな建築を好きな時間に好きな場所でデザインできるライフスタイル。
第三の人生プランを実行し充実した自由な時間を過ごすことができる真っ先のことだった。 


まだ早すぎるというのか? 

それとも間違いを犯そうとしている自分に対する警告なのか?

誰にも迷惑をかけているわけじゃない。 
一つの夢をかなえて何が悪いのかというのか?



あの音。


自分にとってどんな意味だったのだろう?

あの青年にとってとても大切な意味となったと思う。
自分にとっては掛け買いのない経験となった。




偶然だったのか?
何かのイタズラだったのか?

それとも。。


あの音は自分の第三の人生をスタートをするリセット音だったのだろう。

That was the official reboot of my life, I decided.



5時間後。。。。全て正常無事退院。。
病院からDischarged(退院)する際、新たに緊急で運ばれる患者を見た。

複雑な気持ちだった。


シートベルトの締まりからスキューバダイビングのマークのような斜線が胸に残ったり、むち打ちで筋肉痛なのですごくかっこ悪いけど。。。

一日休憩をとり中国へスケジュール通り移動することにした。 
だからご心配無用です。笑  

長~い一日だったけど。。。



生きててよかった (^ ^) ←最近学んだ記号です







追伸

この記事を書くこと、実はちょっと迷ったんだ。
日本の両親を心配させたくないし
結果大丈夫だったから大げさにしたくないし。。

みんなからも同情を求めるような記事は書きたくないし。

でもね、今回の経験はポジティブな事柄と決めたんだ。
もしこの記事を読んでくれた皆さんもポジティブな事柄とし受け入れてくれたら嬉しいな。あんな事件は好んで経験することではないけれど、その経験が与える効果というものをみんなに正確に伝えられたら。。そんな願いがあるんだ。

経験しなくても知識として受け入れることができれば、何かのヒントや日常ではできない行動の糧となると思うよ。 

今こうして自分がエネルギッシュに人生の楽しさを感じているようにね。




I thank you for everything

I thank for every morning to come.

and I thank for every breath to take





See ya,



D
Pacific Ocean,
Sept 16th 2009