「ホルムズ海峡の自衛隊派遣を必要ないと思っている人間が、50パーセントを越えてるらしいな」
ジョージが、健人と酒を飲みながら言った。
ジョージは仕事で日本に滞在しており、健人とは同僚だ。
「まったく、不思議な人種だ、日本人は」
「そうだな、石油不足のときはあれだけ騒いでおいて、その石油を守るために自衛隊を出すとなったら反対だなんて、矛盾してるよな」
海外で仕事することが多い健人は、日本人でありながら日本を客観的に見ている。
海外ではテロの危険性もあり、常に身辺に気を配っていなければならない。
いざとなったら、我が身は自分で守るしかないという考えが身に付いている。
だから、ジョージの言葉になんの反発も覚えず納得した。
自衛隊は派遣するな、だけど今の生活水準は守りたい。
とても矛盾しているのだが、多くの日本人は矛盾と思っていない。
「長く平和が続いたら、こうなるのか?」
「それもあるだろうけど、そうしたのはおたくの国だよ」
第二次大戦後、アメリカは日本の若者を骨抜きにするため、教育 を含めあらゆる油断を講じた。その結果が、今の日本だ。
「日本人に文句があるなら、昔の自分達の政府に言うんだな」
そう言って健人は、皮肉っぽく笑った。
ジョージはなにも返さず、ただ肩をすくめてみせた。
