「緑が綺麗ね」
公演の木々を見渡しながら、妻の詩織が言う。
日曜日の、晴れた日だ。
詩織とは、結婚して1年になる。
俺は小さな工場に勤めており、毎日油にまみれながら働いている。
詩織は、そこそこ大きな会社の社長令嬢だ。
そんな二人が結婚したきっかけは、詩織が工場視察に訪れたとき、俺が案内したことからだった。
その頃の詩織は、父親の勤める会社で働いていた。
あるプロジェクトが立ち上がり、部品発注をどこにしようか選択するために、幾つかの工場視察を行っていた。そのひとつが、俺の勤める工場だった。
規模は小さいが、ある分野においてはそれなりの技術力がある。
プロジェクトの部品発注先に、俺の勤める工場が選ばれた。
俺の態度と説明に、社長も詩織も好感を持ってくれたらしい。
いつしか二人はデートをする仲になり、そして結婚した。
詩織の父親は、反対することなく二人の結婚を認めてくれた。
「私、あなたと結婚してよかった。今、とても幸せよ」
詩織が、俺の肩に頭をもたせ かけてくる。
勤めている会社や稼ぎや家柄、そんなものに捉われず、俺という人間を見て向き合っていてくれる。俺は幸せに胸が詰まりながら、強く詩織の肩を抱いた。
