時は西暦205X年。

 日本の人口は、ピーク時の半分ほどになっている。

 そのうち、60以上の割合が7割だ。

 他国も似たようなもので、外国からの労働力も見込めない。

 10年ほど前に、世界を2分する戦争が起こった。

 核こそ使わなかったが、その代わり戦闘は激烈だった。

 その時に、若者の大勢が戦死した。

 戦争に行かなかった世代だけが生き残り、生産性は極端に落ちた。

 多くの若い男が死んだので、同年代の女性が余っている。

 人類は絶滅こそしなかったものの、その余波で今危うい状況に陥っている。

 戦争の原因は、一部の独裁者の欲と保身、それに追随する各国首脳やその国に牛耳られたマスコミだった。

 マスコミがもう少し自国のことを考え正当な報道をしていたら、こんな戦争は起きなかったかもしれない。

 だが、利権にまみれた政治家や、自国を売ってまでとある国に追従しようとする政治家とタッグを組んで、本当に正しい方向に国を導こうとする政治家を叩き潰した。

 世界の主要国がそうだった。

 そのため、平和のバランスが崩れ、数ケ国のトップが自分の欲と沽券のためだけに争いを始めることになった。

 人間とは、愚かな生き物だ。

 そこの君、うじうじ悩んでないか。

 物事は悩めば悩むほど、よい方向には行かないもんだ。

 悩むより行動しろ。

 失敗してもいいじゃないか。

 悩んで行動しないより、多くのものが得られるぞ。

 人生は一度きりしかないんだ。

 悩んで時を過ごすのは、もったいないと思わないか。

 失敗の繰り返しが、自分を強くする。

 そして、勘も働くようになる。

 だからな、若いときこそ行動しろ。

 縮困って生きていたんじゃ、歳をとってから後悔するぞ。

 そう、俺みたいに。

 若い頃は、よく悩んだ。失敗するのが怖かったからだ。

 なぜかって?

 失敗したら、恥ずかしいし、怒られるだろ。

 だから、悩むばかりで、なにも行動を起こせなかった。

 それで、人生幸せなわけがない。

 それに気付いたとき、まず行動することにした。

 今では、悩むことなどなく、直感で動くようになっている。

 それでもほとんど間違いは起きないし、なにより人生が楽しい。

 俺は、天才的な科学者だ。

 不老不死を夢みて、それを実現する機械の研究に打ち込んできた。

 科学だけではなく、医学的な知識も膨大なものになる。

 そこで、AIを駆使した。

 科学力と医学の知識が世界でダントツトップクラスの俺だからこそ、AIで設計図を描けるのだ。

 そう、俺は人間の能力を遥かに超えている異能人なのだ。

 そうやって試行錯誤の末に、ついに不老不死マシンが完成した。

 ネズミで実験する。

 何ケ月も餌も水を与えなくても生きている。

 焼いても切り刻んでも溺れさせても再生する。

 まさに、俺が描いていた通りの不老不死だ。

 俺は、そのマシンで不老不死になった。

 試しに腕を銃で撃ったが、あっという間に傷口が再生した。

 次に腕を斬り落としたが、これもあっという間に再生した。

 なにも食べなくても空腹を覚えないし、なにも飲まなくても渇きを覚えない。

 ある日、世界中で核爆弾が降り注ぎ、愚かな戦争で人類は死滅してしまった。

 誰もいない荒廃した世界で、一人で生きていたって退屈なだけだ。

 だが、俺はどんなことがあっても死ねない。死にたいと思っても死ねない。

 今は実験に使ったネズミだけが友達となった。