「猫の後ろ姿」
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猫の後ろ姿 2051 岡崎武志『古本病のかかり方』

 

 

 「いかにしてわたしが古本病に感染したか、その病歴と、闘病の日々を綴ったもの」。
 古本病に感染した人間を著者は「古本者」と呼ぶ。そんな古本者への呼びかけがこの本にはあふれている。著者は大学時代を京都に過ごした
同じころぼくも京都にいた。
どこかの古本屋で僕等はすれ違っていたかもしれない。
 
 <日々古本屋の店頭に立ち尽くしていた>
 
 この一行には胸を突かれた。何かよくわからないものを求めて、日々古本屋の棚の前に立ち尽くしていた若き日の自分自身を思い出して、はるかにこっそりとガンバレよと声をかけたくなった。
 今度、京都へ行ったら、今出川通りの竹岡書店、吉岡書店の棚の前に立ちたいと思う。過ぎた時間をゆっくりと感受したい。

猫の後ろ姿 2050 水木亮 「国が人をあやめ 人が人をあやめる」

 

 

 今日、水木亮さん作・演出による構成劇「国が人をあやめ 人が人をあやめる 山梨県民の昭和20年8月」を観た。
 日本の敗戦時における、朝鮮からの帰国の辛苦を軸に、満洲の豊村民自決、大月空襲による学生の死を振り返る。昭和20年8月を山梨県民はどう生きたか。
 この芝居はまっすぐに、今この時代をどのように生きるべきかを問いかけている。
 
 終演後、水木さんの挨拶があり、自作の詩「あなたの胸に」を自ら読んだ。
水木さんのこれまでの演劇活動の根っこに、敗戦時の朝鮮からの引き揚げ体験があることをあらためて感得した。
 深い思いの籠った詩をここに書き写して、水木さんへの感謝と応援の心としたい。
 
「あなたの胸に」        水木 亮
 
地面がゆらいだ あの日
北朝鮮の 国境の町から
おさないわたしの 手をひいて
母が越えた 三八度線
白いあんずの花 小鳥の声よ
あなたがわたしを 産んだ村
ふたたびもどれぬ 夢のふるさと
 
興安丸は 希望に満ちて
目指す日本に 心が躍る
一才の私の弟は
母の乳を 乞いながら
対馬海峡で 息絶えた
水葬の船の汽笛は 高らかに
そのときあなたは 瞳をこらし
私の手をにぎり
うつむいた あなたを忘れない
波間に沈む 弟よさようなら
 
仙崎で日本の土を踏み
どさくさの汽車 夜の宿
子供をつれて 空腹で
どうやって 山梨に帰ったか
私という命を 生かすため
できない苦労を して死んだ
過労のあなたは 血を吐いて
私を日本に 届けて死んだ
 
あなたの倍の 寿命を生きて
目を閉じれば まぶたにひかる
あなたに抱かれ 産着ふわり
しろくかがやき ひるがえる午後
その胸に抱かれて いい香り
ああ こんどこそ ほんとうに
あなたの 胸に帰りたい

猫の後ろ姿 2049 国が人を殺める、人が人を殺める 山梨の昭和20年

 

 

  「戦争」。それが今、すぐそこに来ているような不安がぬぐえない。
人のためにあるべき国が人をあやめ、人が人をあやめる。「戦争」はそのような極限の事態だ。

 

 人が、前の戦争を忘れた時、次の戦争が始まる。前の戦争を忘れず、胸に刻みたい。まずはここから。

 

 8月15日、大切な芝居が甲府であります。観てほしいと心から思います。
 

 

 

 

 

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