君は小池百合子を許せるか | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)

 

 上の動画で朝堂院大覚という人の記者会見が見たのだが,カイロ時代に小池家を世話したというこの人物もまた小池百合子はカイロ大を卒業していない,中退だったと断言している。数年前に出た学歴詐称をめぐる石井妙子さんのルポでは,カイロ時代に小池百合子と同居していた人(北原さん)の証言を元に,小池百合子の嘘と虚栄に満ちた半生が暴かれていた。朝堂院氏の会見は石井さんのルポを裏づける証言といえよう。この人しか知り得ないような話もいくつかあり,かなり信憑性が高いと思った。特に小池がカイロ大を中退したときに,岡本君という男性と空手関係の雑誌を作りたいから資金援助してくれと小池に頼まれ,朝堂院氏が400万円ほど出し,1年位その空手雑誌を作っていたという話があった。これが本当だとしたら重要な証言だと思う。その岡本さんという人が出てくればカイロ大中退は明らかになるが,その人はすでに抹殺されているか,大金をつかまされて雲隠れしているかのどっちかだろうから,もう表に出てくることはないだろう。

 

 私が上の会見で強く印象に残ったのは,「小池百合子を選んだ都民や国民がバカだ!」「小池都知事を支える都議や都議会が悪い!」といった発言だった。乱暴な言い方ではあるが,ある意味で核心を突いていると思った。石井さんの本『女帝』はベストセラーになり,あれを読んだ多くの読者は小池の学歴詐称は確信しているはずだが,なぜ小池都知事は二期目も圧倒的な得票数で再選され,今回また三選を目指して立候補ができるのか。学歴を詐称したままずっと政治家を続けてきた小池が悪いのはもちろんだが,そういう人物を選び続けてきた国民の責任もまた重いという趣旨の朝堂院氏の発言である。私たちはこのことを重く受け止める必要がある。小池批判を強めるだけでなく,国民の方の責任もしっかりと見つめ直し自覚しないと,小池百合子に足元を掬われて,再び悪魔に権力をゆだねることになりかねない。

 

 「嘘つきが政治家になれば国は亡びる!」とも朝堂院氏は言っていたが,その通りだろう。これまで何度も書いてきたように,派手なパフォーマンスや選挙目当てのバラマキに惑わされずに,小池の政治家としての本質や力量を,国民や都民が見極めていく必要がある。学歴詐称をしてまでも都知事の地位にしがみつこうとしているのだから,権力志向が強い人間であることは言うまでもない。権力を握れば,何でもできることを知っている。たぶんこの8年間の都知事としての経験が彼女の権力信仰を一層強めたに違いない。都知事の地位にあり続ければ,学歴詐称の件で検察の取り調べを受けることもない。歴史家の間で全く異論のない虐殺をなかったことにして,歴史を書き換えることもできる。再開発を名目に大資本と結託して自然を破壊し,自由に金儲けができる。

 

 そうした力への信仰,権力への執着という彼女の政治家としての本質は,同時に弱者への想像力を失わせる。食料配布に並ぶ困窮者たちへの嫌がらせ・排除や,沖縄に対する差別発言などはその表れである。

 

 在日コリアンをはじめマイノリティへの小池の差別意識が決定的な形で暴露されたのは,何といっても「朝鮮人虐殺被害者」への追悼拒否であろう。そのきっかけを与えたのは,プチ鹿島が下の記事で指摘しているように,自民党の古賀都議による質疑(朝鮮人虐殺を否定する本の紹介)であった。その本に書かれているデマを根拠に小池が追悼文を拒否した可能性は高い。同時にもう一つ指摘すべきは,小池の極右ヘイト団体との関係だろう。前回紹介したTBS「報道特集」でも少しだけ触れていたが,小池は「そよ風」という在特会系のヘイトスピーチ団体の講師に招かれ,講演をしている。彼女には歴史を批判的に検証したり,文献考証したりする能力はないから,おそらく朝鮮人虐殺を否定する極右の人たちから入れ知恵され,洗脳されたのではないかと思われる。ヘイトスピーチを鵜呑みにするほどに彼女の知性や思考力は劣化しているということである。

 

 

 最初の問いに戻るが,問題はどうしてこういう人物が支持され,権力を保持してきたのかということである。一言で言えば,朝堂院氏が言うように「都民,国民がバカだからである」。本当に日本人は権力者に甘く,権力批判は悪とする空気が強い。だから権力者の学歴詐称も歴史の捏造も不問にしてしまい,大きな政治批判や社会改革運動に発展しない。小池百合子の顔写真入りの防災ブックを送ってくれたり教育を無償化してくれたりするから小池でいいか,と簡単にポピュリストの罠にはまる。それ全部,選挙対策ですから!都民の福祉とか弱い人々の救済とかではなくて,全部自分の権力保持のためのパフォーマンス,ポピュリズムであることにそろそろ気づこう。

 

 子どもへの月5000円の給付や高校無償化を「レガシー」と詐称するところに,小池のインチキ性が潜んでいる。そんな子ども対策や給付は行政としてもっと早く,もっと手厚く実施できたはずで,そんな当たり前の行政を「レガシー」などと恰も前例のない善政であるかのように呼ぶのは「学歴詐称」政治家ならではのパフォーマンスといえよう。

 

 カイロ大中退を「首席卒業」と詐称し,朝鮮人虐殺を「さまざまな見方」と詐称し,当たり前の行政を「レガシー」と詐称し,植物皆殺しを「再開発」と詐称し,ファシスト党を「希望の党」と詐称する。もうこんな詐称政治,嘘っぱち政治は終わりにしよう。朝堂院氏が言うように,嘘つきが政治家になる国は亡びる!

 

 

 ニーメラーの警句を現代日本を背景に作り直してみた(「彼らが最初水俣病患者を差別したとき」)。

 

石原慎太郎が水俣病患者をIQが低いと差別発言をしたとき,自分は水俣病ではないので抗議の声を上げなかった。

橋下徹が公務員バッシングをしていたとき,自分は民間サラリーマンなので,抗議するどころかバッシングに加勢していた。

 

植松聖が障害者を大量虐殺したとき,自分は障害者ではないので殺されることはないだろうと自分勝手に解釈していた。
 

小池百合子が関東大震災「朝鮮人虐殺被害者」に追悼文を送らなかったとき,自分は在日ではないし,100年前のことだからと,特に抗議をしなかった。

 

ついに,自分が病気で働けなくなり,国家の役に立たないとしてガス室に連行されたとき,もう誰も闘う者はいなかった・・・