「虐殺の否定」は虐殺を生む~小池都政の総括~ | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)

 

 前回紹介した雨宮処凛さんの動画証言で明らかになったように,小池都政とは貧困層やコロナ感染者など困っている人を問答無用で切り捨てる無慈悲な棄民行政であった。その一方で,自分が目立つことや話題になること,支持が得られそうなことには都を挙げて取り組む。昨日のTBS報道特集(↑↑)は小池都政の検証がテーマだったが,その冒頭で都庁壁面のプロジェクションマッピングと都庁足元での食料配布の様子を対照的に映し出して,見事に小池都政の二重性を印象付けた。まさにこのパラレルワールドこそ,住民切り捨て行政を隠蔽するために演出された世界であり,この異様な二重世界は超格差世界と呼び換えてもいい。

 

 雨宮さんが話していたように,水道料金滞納者を福祉につなげる委託事業を「事業効率化」を理由に廃止したことがホームレスの増加につながった。生活困窮者の命より事業効率化を優先する都行政は,まさに血も涙もない鬼畜行政であった。また,神宮外苑再開発にしても五輪施設の維持管理にしても,足元の住民の生活や生命・安全のことは眼中にない。さらに大きな視点で言えば,自然環境や生き物たちの持続可能性よりも,三井不動産や電通,明治神宮といった大資本,大企業の利益や利権を優先する,転倒した都政のあり方こそが問題なのである。

 

 こうした生き物や人間を軽視し切り捨てる都政のあり方は,まさしく小池百合子個人の差別主義的キャラクターを濃く反映しているものといえよう。まともな感覚の持ち主であれば,食料配布に列をなす生活困窮者を見て支援の必要を感じない人はいないだろうし,神宮外苑や日比谷公園の樹齢100年以上の樹木が切り倒されることに心を痛めるだろう。そうした生き物を慈しむ気持ちや困っている人への共感能力が小池百合子には欠落していて,それが彼女の差別主義的な思考や政治につながっているように思う。自らは権力や富裕層の側に属して,ほとんど思考停止状態であるから,自己責任や自助努力といった単純な論理で弱者や貧者を理解し,軽蔑し,差別し,排除する。

 

 だから,例えば沖縄の歴史や沖縄の人々の苦難に対して何のシンパシーも寄せず,それどころか時折,卑劣な差別的言動さえする。国会議員時代に沖縄選出の玉城デニー氏に「日本語読めるんですか?」と言い放ったことはよく知られているが,あまり知られていないエピソードとして,米国外交官のケビン・メア氏との次のようなやり取りがあった。とある沖縄のコンビニで,小池とメアがどちらが支払いをするかで揉めていて,最終的に小池がメアを制して代金を支払った。その時,小池はメアに対して

思いやり予算よ

と言い放ち,二人は笑いながら店を出ていったという。小池は冗談のつもりで言ったのだろうが,冗談で済まされる話ではないだろう。小池にとって,またメアにとっても,沖縄はそのような冗談で済ませられる軽い存在だったのである(参照,愛国という名の亡国(河出新書)p.141)。

 

 こういう小池都知事の差別主義が最も先鋭的に表れたのが,関東大震災「朝鮮人虐殺被害者」への「追悼文」取りやめだろう。都知事に当選した翌年の2017年から小池は追悼文を送るのをやめている。災害で亡くなった人も虐殺で亡くなった人も共に追悼しているから問題ないという詭弁を弄して,自らの対応を正当化しているが,これは一種の「上からのヘイトスピーチ」だと私は思っている。

 

 小池が追悼文の送付をやめた2017年から朝鮮人追悼碑周辺でのヘイトスピーチが激増したことは,昨日の報道特集でも指摘していた。東京都のトップが朝鮮人虐殺の事実を無かったこととし,歴史を捻じ曲げたことによって,極右団体を中心にヘイトスピーチを活性化させてしまった。都知事がいわばヘイトスピーチにお墨付きを与えたわけである。ヘイトスピーチが蔓延したことについて都知事の責任は重い。ヘイトスピーチ解消法の制定により,表立ったヘイトデモやヘイトスピーチは減ったものの,ネット上や選挙活動などでは隠れたヘイトスピーチが後を絶たない。政治家が上から引き起こしたヘイトスピーチは,やはり政治が止めるしかない。そういう差別を許さない政治家を私たちは選挙で選ばなければならない。差別の先に待っているのは虐殺だからだ。今は傍観者でいられても,次に狙われるのは自分や家族かもしれないのだ。

 

 小池自身は東京オリンピックの「レガシー」とか何とか寝ぼけたことを言っているが,はっきり言って小池都政は,「負の遺産」しか残さなかった完全な「失政」(Bad governmennt)であったと断定してよいだろう。その「失政」の根底には,現実からの逃避,事実の否定という欺瞞的な態度がある。小池都知事は一貫して,貧困や格差拡大という現実から目を逸らし,虐殺の事実を否定してきた。小池都政の最大の「負のレガシー」とはこれだろう。虐殺の事実を否定する小池都知事は,コロナ禍でもオリンピックを強行し,コロナ感染者を見殺しにする棄民政治を押し進めた。さて,その先に待っているものは何か——

 

 「虐殺の否定」はヘイトを生み,そして生きとし生けるものすべての虐殺へと向かう!これが小池都政の行く末だ。もうこんな恐ろしい都政は終わりにしよう…

 

 

☆ヘイトスピーチの代わりに民族の舞を!

 

 

☆プロジェクションマッピングの代わりにカレーライスを!

あたためなおそう 2人で食べよう

昨日の夜に 作ったカレーライス

あなたに会えて 僕は幸せ

あなたに会えて良かった Oh

 

長い冬の季節に訪れる季節

世界は新しく生まれ変わる

長い旅の果てに何があるだろう

二人で見に行こう 見届けよう

 

☆「レガシー」とか何とか言う前に,神宮外苑の緑を未来に残そう!命を守ろう!