東京の明日はどっちだ!~蓮舫vs.小池百合子~ | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)

 ちょっと前の記事で私は,「つばさの党」逮捕を受けて次の都知事選ではヘイトスピーチが飛び交う選挙戦になるだろうと書いた。なぜなら,選挙妨害は怪しからんということで選挙の自由が絶対視されることによって,選挙ヘイトに免罪符を与えた格好になったからだ。選挙活動だからということで差別発言がこれまで以上に大目に見られ,それに乗じてヘイトスピーチが次々と繰り出される。そんな選挙戦になる。

 

 なぜ改めてそんなことを書くかというと,蓮舫の都知事選出馬表明があったからだ。数年前に蓮舫が民進党の代表になった時に「二重国籍ガー」「中国人ガー」というヘイト発言がネット上に溢れたが,おそらく似たようなことが今回の都知事選でも起こるだろう。というか,すでに起こっている。だが,上の動画で安田浩一さんが詳しく解説しているように,蓮舫の国籍に何の問題もないことは明らかである。なのに再び二重国籍に関するヘイトが巻き起こる背景には,「国籍唯一の原則」がいまだにこの国に蔓延っていることがある。国民の間に「国籍は一つであるべき」という強い観念が根付いてしまっており,それが蓮舫のような複雑な重国籍問題の理解を妨げているように思う。そのために,八幡和郎のようなネトウヨ論客のデマに煽られて「蓮舫は怪しからん」というコンセンサスが国民の間に作られる。「国籍唯一の原則」の呪縛から自由になって,「重国籍容認」というのが世界の流れであることを私たちは理解すべきであろう。

 

 前回記事で取り上げた杉田水脈は,ちょうど蓮舫の二重国籍問題があった頃に出した本で「蓮舫は働く女性の味方ではない」という一章を設けて,「二重国籍問題をどうにかしなさい!」と語気を荒げている。本当にこの人は時代錯誤が甚だしく,無知・無教養をさらけ出しているなぁと呆れる。二重国籍をどうにかする必要など全くないのである。どうも彼女は蓮舫が外国籍を持っていることが気に食わないようで,二重国籍問題を皮切りに蓮舫バッシングを全力展開している。今回の都知事選でもこういうレベルの低いバッシングやヘイトスピーチが繰り広げられるのだろう。

 

 蓮舫氏は自分では「保守」だと名乗っています。しかし本当の保守ならこれまでのような言動はありえません。本当に国益が何か,日本はどの方向に進むべきかを常に考えているのなら,まずは国籍問題をないがしろにはできません。・・・

  (中略)

 タレント時代には「私は中国人」と公言していた人間を,日本人として信用しろといっても不可能です。信頼できない政治家に,祖国を任せるほど,日本国民はおろかではありません。

 蓮舫氏はすぐに民進党代表を辞めるべきです。

(杉田水脈『なぜ私は左翼と戦うのか』p.125~p.126)

 

 重国籍の人間は信用できないと,酷いヘイト発言をしている。だが,こういう偏った考えを持っている人は保守や右派には多いのかもしれない。例えば,3選を目指して都知事選に出馬することが予想されている小池百合子もその一人だろう。彼女の上昇志向と権力への執着は人一倍強いが,政治家としての能力や資質など中身はゼロに等しい。都知事の中身がゼロなのだから,「12のゼロ」「7つのゼロ」を掲げても実現できるはずがない。

 

 彼女の中身が全くないことは,例えば弱者に対する無頓着,冷たさに表れているだろう。昨日,蓮舫は都庁の足元で行われている炊き出し(食料配布)を視察し,700を超す人数や働く世代が多いことに驚きを示した。正直いって,国会議員なのにこういう現実を知らなかったのかと唖然とする気持ちもあるが,蓮舫には少なくとも現実を見ようという誠実な姿勢があるし,生活困窮の問題を何とかしようという改革の意思が見て取れる。一方,主催者によれば,10年続くこの食料配布に小池都知事は「一度も視察に来たことがない」。それどころか,プロジェクションマッピングの機材が置かれて,食料配布に並んだ生活困窮者が「排除」されたこともあったという。

 

 

 巨額を投じて東京都庁を異様な光で照らし出すプロジェクションマッピングの陰で,食べていけなくなった労働者や年金生活者が確実に増えている。小池都政の「光と影」,というより,光も影もすべてが暗闇に通じている。絶望的な暗黒行政だ。潤沢な財政を良いことに無駄な事業に金をつぎ込み,自然を破壊する一方で,足元で庶民の生活がどうなっているのか現実を直視しようとしない。こんな都知事でよいのか!いい加減,都民は目を覚ました方がいい。

 

 もともと小池百合子には弱者や庶民に対する蔑視が根強い。生まれや育ちの影響もあるだろうが,何より知や教養の欠如が彼女から社会改良の視点や多様性を失わせ,人気取りしか頭にないポピュリスト政治家を生み出したのだろう。カイロに留学していたときも,エジプトの庶民に対して見下す態度を取っていたという。そんな態度じゃあ,アラビア語は身に付かないし,中東情勢やイスラームに対する理解が深まるわけもない。ましてカイロ大学卒業などあり得ない。何より現在起こっているパレスチナ・ガザの虐殺に何の関心も示さない小池都知事の態度は彼女の政治家としてのセンスのなさを物語っている。この点でれいわ新選組の大石あきことの落差は決定的だ。どっちが政治家として優れているか明らかだろう。

 

 

 改めて指摘するまでもないことだが,関東大震災「朝鮮人大虐殺」をなかったことにしようとする小池都知事の歴史認識も,貧困や差別といった現実に向き合おうとしない態度と通底するものである。また,2004年のイラク人質事件の時に「自己責任論」を強く訴えたのは,当時の環境大臣,小池百合子であった。さらに小池の沖縄差別だって酷いものだ。つまるところ,弱者に対する一貫した冷酷さが彼女の政治家としての本質といっていい。何度でも問いたい!こんな人物をいつまで東京都の首長にしておくんだ!

 

 趣味の悪いプロジェクションマッピングの光に幻惑されてはいけない。理性の光で小池都知事の無知・迷妄,棄民行政を照らし出せば,次の都知事に誰がふさわしいかが見えてくる…