袴田事件、検察当局が今後開かれる静岡地裁の再審公判で有罪立証を見送る方向で検討していることが関係者への取材で判明した。大きな争点がなくなることで審理が短縮され、袴田さんへの無罪判決が早まる見通し。https://t.co/XZJIS4DSjC
— 弁護士 亀石倫子 (@MichikoKameishi) March 22, 2023
先日は袴田さんの再審が確定し,本当に良かった。このブログでも10年くらい前から石川さんの狭山事件や袴田事件について多くの記事を書いてきただけに感慨もひとしおである。袴田事件の再審決定を受けて,「次こそ狭山事件の再審だ」との思いを,下の鎌田慧さんとともに一層強くする。そして,狭山事件について書き続けた作家・野間宏もそれを墓場から願っているに違いない。
袴田さんは一度だけ,2014年に狭山事件の集会(@日比谷野音)で拝見したことがある。釈放されてからまだ半年足らずの時期のことだ。壇上で袴田さんは「最高裁長官として私が死刑を廃止しまーす」というファンキーで前衛的な発言をされて,聴衆の度肝を抜いた。その時の情景を今,懐かしく思い出す。
これまで何度も書いてきたように,こういう冤罪が起こる背景には《差別と貧困》がある。被差別部落出身の石川一雄さんが警察・検察によって殺人犯にでっち上げられた狭山事件は,そうした冤罪事件の構図を典型的に示している。だから,『真空地帯』『青年の環』の著者・野間宏は,その後半生に並々ならぬエネルギーを「狭山差別裁判」の弾劾・追及に注いだ。その野間文学の影響をもろに受けた私もまた若い頃から狭山事件にこだわり,このブログでも石川さんの再審・無罪を訴え続けた。
ところで,ちょうど今週の月・火曜に,中日新聞(東京新聞)に米国での死刑制度に関する特集記事が載った。それを読むと,黒人差別が冤罪事件の温床になっていることがわかる。記事から引用する。
(死刑判決後,無実が判明した)ヒントンは「私を本当の意味で有罪にしたのは証拠ではない。差別と貧困だ」と言う。
逮捕の日,庭で芝刈りをしていたヒントンを連行した白人警官は言った。「おまえは有罪だ。理由を知りたいか」。戸惑うヒントンに構わず,警官は続けた。「おまえは黒人。そして検事と陪審員,裁判官はすべて白人だからだ」
(死刑判決後,無罪になった)スミスは言う。「人は後から間違いを正すことができる。でも,死刑はそれを許さない。墓を掘り返しても遅すぎる」(中略)米国立科学アカデミーは二〇一四年,統計学的に米国の死刑囚の4.1%に冤罪の可能性があるとする研究を発表した。全米では死刑が再開された一九七七年以降,千五百六十七人の死刑が執行されている。(前掲記事より)