文化功労者とは何か | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)


「大隅氏らに文化勲章、文化功労者に杉良太郎氏ら」(読売新聞)

「本学岩井克人客員教授が2016年度文化功労者に選出されました」(国際基督教大学)

 経済学者の岩井克人さんが文化功労者に選ばれたとのニュースを聞いて,たまげるとともに「なるほどな」とも思った。岩井さんについては,このブログでも何度か批判させてもらいましたけど,こういう人が学問的な権威になってしまうところに,私は今の日本の危うさが表れているのではないかと思うわけです。詳しい批判は繰り返しませんが,彼の貨幣論は全くの誤りというか,貨幣を流通手段としてしか見ない浅はかな理論です。だから岩井さんは金融緩和やインフレターゲット政策に期待を寄せて,アベノミクスを礼賛するわけです。彼の経済学はアベノミクス御用達の学問です。

 経済を貨幣的現象としてしか見ないから,デフレやリセッションがあっても楽天的なことばかり言っているわけです。岩井さんによれば,本質的な経済危機というのは,貨幣がただの紙切れになってしまうハイパーインフレだけだそうです。こんな貨幣の物神性に囚われた学者さんが経済政策に対して発言力を持っているのですから,私たち庶民や労働者の生活が良くなるはずがありませんね。恩恵を受けるのは投資家階級や大企業経営者,富裕層だけです。さらに岩井さん,消費税は公平だから増税すべきだとずっと主張しています。その理由は社会保障の充実とか所得再分配ではなくて,法人税を減税するためと,国債の暴落や貨幣価値の下落を防ぐためだそうです。経済の見方が偏ってますね。――金融緩和,株価上昇,投機資本主義,似非ケインズ主義,財政再建,消費増税,福祉切り捨て,等々,アベノミクスの主要モメントは,岩井さんの経済学的な言説の中にすべて含まれています。

 おまけに岩井さんは改憲論者です。はっきりと9条の改正を主張しています。右翼ではありませんが,節度ある保守を自称し,安倍政権にも右翼になびかないよう提言しています。

 ここまで書けば,どうして岩井さんに文化功労者という栄誉が国から贈られたかがわかるでしょう。

 こういう国家が与える権威とか名誉とかには,時の権力の性格や時代の傾向がはっきりと反映されていて,わかりやすい。柄谷行人ではなくて岩井克人だというところに,文化勲章とか文化功労者が何なのかが示されていますね。すなわち岩井さんの事蹟には,保守反動という時代の特徴がくっきりと刻印されている。

貨幣論 (ちくま学芸文庫)/岩井 克人

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