HELLO WORLD | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

『HELLO WORLD』

(2019年9月20日公開/製作:HELLO WORLD製作委員会/配給:東宝)
監督:伊藤智彦/脚本:野﨑まど
キャスト:北村匠海/松坂桃李/浜辺美波

舞台は2027年の京都。
主人公はパッとしない本好きの高校1年生男子堅書直美。
彼はある日10年後からやって来た自分と遭遇する。
その自分はこの世界はアルタラと呼ばれる歴史の保存を目的とした仮想世界であると言う。
そしてある運命を告げてくる。
それは親しくはない同級生の女子一行瑠璃と恋人となる事。そしてその恋人と死別する事。
それを回避すべく10年後の自分を“先生”とした彼の運命への抗いが始まる。

監督の伊藤智彦氏は『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(2017年)で注目を集めた才能でしたが、これは私観てなかった…
じゃー、何でこれを観に行ったのか?と言えば試写での前評判がやたら高く、しかも割と幅広い方々から絶賛されてて気になったんですよね。
そしてどハマりしました。
ちなみに今年待望の新作『クスノキの番人』が公開しました。

あと脚本の野﨑まど氏による小説版他様々なメディアミックスも展開しております。



さて、この一年程カタルシルやっててやたら登場頻度高く、その度相方の酒見くんからもまたですか…とツッコミ入るこの作品。
もう熱狂してたのも6年半程前。
ここで改めて自分の当時の感想をまとめてみようかと思いまして…

初回(2019年9月29日)
『HELLO WORLDドルビー・アトモス上映
@ アースシネマズ姫路

持ってけ!今年のナンバー1!

自分の中に立ち昇る味わった事のない感覚や複雑に絡まり新たな混線果たす感情、そしてこんなのが観たかった!なヴィジョンとそんなの聞きたい!な台詞のオンパレードに、脳の処理が追いつかず笑って・泣いて・放心してたら終わった…


はぁ…反芻中。ちょっととんでもないな、これ。ミーハーに好きな部分(舞台となる京都の情景や図書・古書フェチ)と、体験としての新しさ(SF観、ヴィジュアル)、そのバランスのある種の歪さ。完璧な映画なのではない生々しさ!

とりあえず年内にどうにかして京都で観ておかなきゃ!な気分。可能なら出町座か京都シネマで観たいよね〜(観れば納得)。最近よく出没してる三条駅周辺とか京都駅のあそことか、個人的に思い入れや思い出あるとこが沢山出て来るから現実との境界曖昧だった。他人事でない感。

本好き主人公の年間200冊読書目標!とか、図書館毎のラインナップの把握であったり、部屋の1番手の届く場所にハヤカワSFズラリだとか、あと図書委員あるあるや、古本市に至る描写等々、図書・古書フェチには堪らないものがあった。
あと狐面と闘う為の武器が本なのは、メタファーとしてニヤリとさせられるし、彼にとっての最大の武器は矢張り本なのにはグッと来た。
図書(室/館)映画って大概好きなんだけど、その図書室/館って空間とアルタラとが巧みに対比されてる上、映画製作そのものとも対比されている様にも感じ、その入れ子構造の多層を行きつ・帰りつな体験ががまた京都にハマるんだよ。

SFとしての構造はそこまで複雑でもないし、結構序盤に解説されちゃってるから難しさはないんだけど、ヴィジュアルが特異過ぎる上に後半の暴走が圧倒的なので、混乱はするよね。
『パプリカ』×『マトリックス』的な興奮。

あと個人的には歩道橋フェチには堪らない描写あって観てて思わず声出た。

2回目(2019年10月9日)
HELLO WORLD
@ イオンシネマ岡山

劇場2回目。
正直なところ歪な映画だと思うし、個人的には絵柄も好みじゃないんだけど、心底惚れてる。タイプじゃない人に惚れた時ってこんな気持ちだよねなんて思いつつの2回目は、張り巡らされた伏線を改めて確認しつも、腰砕けにメロメロになった。
構造を知った上での鑑賞は、一つ一つの台詞や、その視線であったり間合いであったりにも高密度な前情報が流れ込み堪らなくなる。
あの河原での会話の視線の先には…とかさ(泣)。そしてあの階段前でのあの台詞にはもう…どんな涙腺のダムも決壊する。

3回目(2019年11月19日)
『HELLO WORLD
@ 出町座
(写真撮ってなかった…)
スクリーン3回目。
にして遂に京都での鑑賞が実現した。京都、特に出町座か京都シネマで観たかったのよ(観た人なら納得)。

今回、もうね、先生(ナオミ)が図書室で一行さん見て涙流す辺りからずーっとこっちも泣いてたよ…いやぁー、作ってくれてありがとうだ。
壮大なSFであるのに、展開するのは極々狭い範囲の一人称なボクの恋愛の葛藤なのは、嘗てのセカイ系そのものなんだけど、それらのステレオタイプな語り・キャラ造形をぶち破る=成長譚として機能させた上での、更にもう2捻りな後半の暴走のやってやりましょう感最高。
一行さんは日本のアニメが描き続けて来た、如何にもな近寄りがたい不思議系女子文化系仕様ってのを心地好く粉砕して、そう言う消費の仕方へのアンチテーゼともなってたと思う。
(にしてもあの自分の部屋でのくつろぎ方は結構な意外性あった)

同日に『羅小黒戦記』も観てたから、直美と先生の師弟愛にシャオヘイとムゲンの姿が折り重なった。
師弟関係ってええなぁ〜

4回目(2020年2月18日)
“IWANAMI SOUND EXPO 2020”
HELLO WORLD
岩浪美和音響監督監修
《アルタラサウンド7.1ch塚口スペシャル》
@ 塚口サンサン劇場

劇場4回目にして最も泣いた!
私の2019年鑑賞映画のベスト1!
これで劇場では4回目の鑑賞にして、遂に岩浪音響監督自身による拘りの音場で体感。やってやりましょう!な限界突破の圧巻音圧えげつなし。

近未来京都を舞台に先生こと未来の自分の指導の元、彼女を作るべく奮闘する男子高生の葛藤を…とストーリーを綴っても何の意味もないか。
世界と出会う=ジュブナイルだ。
ストーリーのときめきと映像のワンダー、この世界観と映画の構造、そして全力で駆け抜ける若さよ。映画観てて流れる涙をこんなにも愛おしく感じた事はなかったかも?
はぁ…好きだ。

以上!

そっか、コロナ禍に突入する直前の世界で出会った作品だったんですね。
そろそろこの作品の正統なる評価を得た何らかの動きを期待したいですな。
とりあえずどっかまた上映して!!!