彼女が語り出すその半生は、軈て壮大なるロマンスで以って、その出演作と、(取材をしている)現在を呑み込み、千代に輪廻する糸を表出させるのだ。
兎に角、その圧倒的なイマジネーションの奔流に呑まれる訳ですが、迷ったり没したり置いてけぼりにされたりしない、ある視点(つっこみ)があるのが素敵。
視座を変える事なく時空を跨ぐ表現は映画の真骨頂ですが、それをここ迄流麗に、まるで絵巻物の様にスクリーン上で紡いで行った作品を他に知らない。
あの人力車越えの自転車での、お転婆な時空跨ぎ、最高!
所々用いられた浮世絵的二次元空間の横移動での時間経過の描き方とかさ、あんなん劇場スクリーンでこその立つ鳥肌やで!
3年前ここで上映があった『パプリカ』もまた今敏監督の映画愛が迸ってたっけ。
そもそも忽然と姿を消し30年間表舞台に出ていない千代子の設定からしてアレだし(笑)、その容貌や、出演作、対峙する先輩女優や、あの監督…色々過る。
出演作を追う形で様々なスタイルの映画のオムニバス形式になってのが面白いんですが、その一本一本どれもがアレかな?と想起させるのがニクい。
でも、それらがパロディやオマージュのレベルではないガチな作りで、今さんの愛だけでない嫉妬も感じさせて胸が熱くなるんだよね。
にしても一作一作、アクション/ホラー/サスペンス/ロマンス/ドラマetc.
その細部への作り込みや、演出、画作りとどれもクオリティが高い!
特にあのホラー部分はなぁ…
溝口的?
ちょっと鳥肌立つよね。
使用されてるサントラ収録曲「Circle in Circle」も好きだ。
千代子が愛する蓮と、愛を受信するパラボラとのイメージの折り重なりが美しいなぁ。
ラストで流れる平沢進「ロタティオン(Rotation-Lotus-2)」…キメの細かい太い爆音で囲まれる感覚はフィルム上映だからこそ。
そー言えば、『インセプション』が公開された当時、『パプリカ』との相似を指摘されてたりもしてましたが、『千年女優』を改めて観ると『インターステラー』が少し過ぎりましたね。
でも、今作を特別にしているのは、あのカメラマンの存在だと思うな。
シリアス一辺倒にならぬあの視点(ツッコミ)こそこの監督の特異性だと思う。
ここでの擽るユーモアの数々は、後の『東京ゴッドファーザーズ』で花開く。
“女優”と言う逃れられぬ“呪い”の容赦なき描き方。
そして鍵の象徴するもの。
はぁ、やっぱ凄い作品、才能だ。
『PERFECT BLUE』
脱アイドル宣言をして、女優の道へと進んだ主人公が、過酷な葛藤の中で、つきまとうストーカーや、分裂する自我に悩まされ、軈てその妄想が暴走する瞬間!
90年代の日本の病みに花開いた数々のサイコ・サスペンスの中でも、その生々しい設定と、唸る構成、容赦無き描写で以って金字塔となった大傑作!
初見の興奮は未だリアルに感触残ってますが、アレから十数年を経ても此処まで興奮と恐怖で劇場で震える事になろうとは…
心底恐い。
先ず、そのサイコ・サスペンスとしての構造の巧みさに唸りっぱなし。
知っていてもこんだけ驚く訳だから、今回が初めての方なんて腰抜けたんじゃない?
珠玉なのが、劇中劇『ダブルバインド』(後に単独でラジオドラマ化!)に今作の構造を言及させるメタさと、更にはパラノイアックに反転させちゃう離れ業!
今作、当初は実写で企画進んでたそうで、何で実写で撮らなかったの?って声もチラホラ見掛けますが、しかし、矢張りコレはアニメでしか撮れなかったであろう。
細やかなディティールの積み重ねや、登場するキャラ達の生々しい存在感。は、実写を凌駕する程なんですが、後半の暴走するイマジネーションはアニメだからだ。
にしても、アイドルとそれを取り巻くスタッフやファン、そして役者へとなった主人公の環境の変化の描き方は生々し過ぎて変な汗出るな。
あの主人公の部屋とか、微に入り細に入り、いちいち腑に落ちる。
忙しくなってからの荒れ方とか!
今監督の映画好きも当然スパークしてて、あの駐車場でのカメラ/編集での恐怖の煽り方なんてホラー映画を相当に研究してるよね!
“パーフェクト・ブルー”と言いつつも、青よりも赤が鮮烈な本作。
唯上映素材のBlu-ray、若干インパクトに欠けた気もしたなぁ。
フィルムで観たい!
但し、この題材・描写の作品を今スクリーンで堪能出来るスリルを前にそれは些細な事な気もする。
特に後半のアクションの空間感覚とか劇場でこそ映える!
あと、今作鏡像の使い方も巧い。アイドル=虚像との相乗、役者=虚構の入れ子構造に、こちらすら呑まれる。
あっ、そう言えば北野誠さん出てたね(笑)。
そっか、サイキック青年団繋がりって事か。
『PERFECT BLUE』を見て以来の今敏監督のファンだったのに、結局リアルタイムでは一度も劇場で観る事はなかったもので、この3年間で塚口サンサン劇場で全劇場作品を堪能出来た事はとても大きい。
『千年女優』や『パプリカ』は思いっきり題材として取り上げられてましたが、全四作改めて観ると、今敏監督は映画を相当に愛してたんだろうなってのを全身で再認識したな。
強烈なる映画館体験を喚起する傑作ばかりだ。
3年を掛け、遂に今敏の円環が形成された。





