ムービーマスターズ第1弾“スタンリー・キューブリック” | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

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2015年6月 @ 元町映画館

『バリー・リンドン』
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何度か見られる機会はあったものの、これは劇場での機会を待っておこうと保留していた作品。

故に今回が全くの初。


もうちょっと重厚な文芸大作!って乗りなのかと思いきや、そこはキューブリック。堅苦しさや退屈さとは無縁に、普遍的な成り上がりと没落の物語を、唯我独尊に語る! 


本作を語る際に外せない自然光を蝋燭を駆使した撮影は、美しさは勿論の事、独特のリアリズムを獲得してて、他の時代劇にはない生々しい日常の風景、息遣いがエロい。


キューブリック作品はどれも特殊な設定・極端な状況での物語ばかりで、だからこそ剥き出し出来る人間性を霰もなくカメラに収めてますが、今作も例外でない。 


第一部での成り上がる迄のバリーの、その情熱を脆くも奪われては、タフに、しかし人間性を確実に摩耗させて行く様は滑稽な程に哀しい。


その空虚さを埋められるであろう物は手に入れ様とすればする程に遠退き、自らの宿命に溺れ、縋る術も知らず、没落する姿の残酷さ…


第一部の牧歌的で、時空感覚麻痺する様な感覚も好きだったけど、やっぱ第二部だな。
特に二人の息子、ブリンドンとブライアンの対称が物語を歪に分裂させて行く様よ。


にしても、ブライアンが超かわいーのよ。

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バリーの溺愛っぷりも当然で、あのサラッサラの髪と、キラッキラなお目々でねだられたりしたら、そりゃね… 
お兄ちゃんの靴をカッポカポと鳴らしつつ歩く姿もキュート!

結構陰惨な第二部だけど、彼が随分救ってくれてたよね。
あんな子供が欲しい。 


でも、今作はフィルム上映でもう一度再会したいね。

キューブリックが本来狙ってた光とか、あんなもんじゃないだろ!って気もした。


『アイズ ワイド シャット』
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世代的にリアルタイムでの上映の記憶が唯一ある作品がこれ。

当時相当に騒がれてたけど、結局見たのはレンタルで。 


世紀の大カップル(当時)をまんま夫婦役として起用した、巨匠12年振りの新作が、公開を待たずに監督自身の思わぬ幕切れに拠って、奇妙な磁場生んでしまった。


先行したエロティックなイメージや、見た最初に感じたミステリアスなムード、そして狐につままれた様な後半の展開等々は、改めて観ると背景に回ったな。


まぁ、初めて見た当時から15年も経た訳で、そりゃ感触も変わるよね。
割と前半に訪れる、夫婦のリアルな衝突かれ見え隠れな男女間の深き溝が底なしで怖い。 


当時のトムとニコールって、ハリウッドど真ん中の大メジャーな作品に出捲ってるカップルだったし、そんなオーラがバリバリの前半からの落としっぷりが堪らん!

皆も結構意地悪な眼差しで見てたと思うのよ、今作への起用を。

でも、改めて観ると、流石の二人の存在感だし、したたかにキューブリックに操られている。

実際今作を経てから間もなく、トムとニコールは別々の道を歩み始め、役者としてのキャリアはそれぞれ飛躍的に拡がった。 

まぁ、ニコール・キッドマンの美貌よ!
パーティであの年配の男に詰め寄られる色香!
絵画の様な裸体!
女としての顔、母としての顔、その振り幅と説得力。 

一方でのトムの、クールに決めつつも、思わず漏れてしまう厭らしさの演じ方、その捉え方の巧さには唸る。
あの娼婦の部屋に二度目に訪ねた時の姿、サイコー! 


そして、矢張りこのタイトルだ。
この言い回しは(ネイティヴの人にはどんな風に伝わるのかな?)キューブリック作品に通底しているムードな気がする。


Baby Did A Bad Bad Thing - ChrisIsaak
もう、耳につきまとって離れないじゃん!


『フルメタル・ジャケット』

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前半ばかり語られがちな作品だけど、後半で確りと落とし前つけている。
剥き出しになるのは戦場の狂気なんかでなく、人間そのものの姿なのだ。


前半のテンション天井知らずに上げておいてからの、後半で現実の重みで以って叩きつける。
キューブリックのその手腕とコントラストが冴え捲る。


前半/後半の神業級なコントラストは、今回のラインナップ四作どれにも見られますが、特にそれが効果的で、その落差に降り落ち剥き出しになる物へ照準が向かう。 


まぁ、しかし、伝説的な前半のテンションには未だ劇場で色んな分泌液が迸るな!
そして、そこで上がった分だけ、後半叩きつけられる強度は増す。


でも、よくまぁ、あんな脚本/演出を叩きつけられたもんだ。
尋常じゃないテンションだよね。
現場のムードとか想像するだけで震える。


前半ラストのあのショットへと至る引き金がキリキリと引かれて行く、その絶望的な言葉の数々が壮絶だよね。
そして、その見せ方。
キューブリックの鬼っぷり。


すんげぇ怖いのが、真夜中に皆が石鹸使って急襲掛けるとこ。
あそこでの主人公の葛藤➡︎吐き出しの間がリアル。


で、一転しての後半。
主人公を記者にしての絶妙な位置からの眼差しを設定しておいて、そこからズブズブと戦場の現実へと引き摺り込む!


主人公のバックボーンを背負わしておいてからの、記者ならではの距離感を持たした上で、仲間の死から彼の本性を剥き出しにするって構図に、的確に飲まれる。


あの、狙撃手に小隊がボロボロに崩れて行く辺りの高揚感がまた効果的だよね。
あそこでの空間の捉え方とか、カメラの位置とか、劇場で観るとヤバい! 

(戦場的な)ショットと(映画的な)ショットが折り重なる瞬間!

あの狙撃手との戦いでの高揚に剥き出しになった本能が、一転して急にその人間性を問われる展開へと雪崩れ込むあの瞬間、僕ら観客に照準が向けられるのだ。


そして、ラストのストーンズ! 


『時計じかけのオレンジ』
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ラインナップの他三本とは明らかに劇場の密度・熱気が違う。集まった層も若い!
流石上映回数多く組まれていた事だけあるな。 

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公開から40年を経て尚、いや経てこそ、際立つ歪みと痛みの、吐き気催す美。

容赦なきヴァイオレンスに、独特の言語感覚と音楽を伴い心地酔わす手腕の冴え渡り。


そして、そんな無敵の多幸感にズブズブに漬け込んでおいてからの、唐突の断ち切りの無慈悲さ。
そんな蒼き無軌道の暴走をこともなげに呑み込む権力の構造。


当然ながら、キューブリックの眼差しは説教臭い現代の病巣の表出なんかには向かってはいないのだろう。 


立場が変わればコロリと反転する暴力の加害/被害の構図。
治療と言う名の自らの痛み伴わぬ暴力。
あのアレックスが家族から受ける仕打ちもまた暴力だ。


溢れ出る凡ゆる暴力から、剥き出しになる人間そのものの本質をキューブリックはしたたかに捉えんとする。
当然今作に未だ高揚する我々も彼のカメラの射程圏内だ。 


勿論小難しい事考えなくっても、アレックスの面構え・悪態・ヴァイオレンスの美しい流線型、ベートーベンへの偏愛だとか、半端なくクールで陶酔出来もする。 

家具やファッション、SF的ガジェットやら、そうそう、あのミルク・バー最高!
ヘヴン17もランキングしてるレコード屋も好きだな。

あのレコード屋でナンパした女の子二人とイン・アウトしちゃってるとこの早回し堪らん!


ウォルター・カーロスの電子音も酔い!
元映的には
『Life, Laughter & Loops』 

と繋がる。

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そうそう『トレインスポッティング』からの流れもあり。

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あのバーだけでなく、全編結構オマージュされてる!